プレスリレーションを考える

第2回

番組の裏側「コメントが欲しい!」

株式会社エムシーストラテジー   槇 徳子

 

ニュース番組の裏で

様々な時間帯ニュース番組を月~金の帯で出役兼つくり手として経験しましたが、WBSなど有名番組以外では予算もチーム人員も限られているのでチームの一人一人が日々大変な状況でした。特に株式市場の取引終了後の時間帯で午前と午後2つの時間帯のニュース番組を担当していた時はまさに自転車操業状況でした。勿論、局・番組によって報道現場の状況は全く違いますが、生放送は待ったなしであることは同じです。

突発的な事件事故、発表などがあれば、迫りくる放送時間までにニュースの原稿、映像、だけでなく、専門家による解説、コメントまで用意したいところですが、そう簡単ではなく、ディレクター泣かせです。因みに、何一つ間に合わない突発的な重大ニュースがあった場合は突っ込み原稿を映像なしで読み上げるだけです。


報道の公平性、専門性を担保したい!

何故報道番組では「識者のコメント」を必要とするのでしょうか。それは一つの事象について偏ったり浅い報道にしないためです。黒という意見があれば白という意見も出して見方のバランスを取る、また深い知見を共有することが報道の理想ですが、すぐさまテレビ向けにコメントして下さる識者の方々は、そう簡単にはつかまりませんでした。

当時は全てがアナログ。まず自分の名刺フォルダーを当たり、今必要な特定の専門分野の方が見当たらなければ報道のチーム内外で心当たりを大声で尋ねるようなこともありました。急なお願いに応じて下さる方を短時間内で探すなど日常茶飯事でした。

「大変恐縮ですが○○について電話でご解説頂けますでしょうか?」「本日夕刻のニュース番組で、スタジオにお越し頂いてコメント頂くことは可能でしょうか?」極端な例ではありますが、大層非常識なお願いも多々あり、振り返れば反省ばかりですが、毎日のニュース番組とはこうしてつくられるもの、という認識でした。

一方、令和現在。ネット検索で、専門家とそのコメント、著作物やブログ、他社メディアでの発言、研究者の論文など何でも出てくる時代になりました。地上波の番組を見ていると「○○評論家、□□に詳しい・・・」と、実に様々な、ニッチな専門家が登場するようになりました。また事前打ち合わせも、オンライン会議システムでお手軽な時代になりました。

翻って、ネット上に自己紹介、専門や得意とする分野、著作や論考等をアップすることが個人にとっては即、プレスリレーションとなり、実際こうした状況を活かしてご活躍の方が増えたと実感しています。


一般・素人に分かりやすいかどうか

ここで共有したいプレスリレーションのポイントは「自己紹介等ネット情報が読み手フレンドリーかどうか」ということです。つまり素人でもわかりやすいかどうか。ネット上で周辺情報を見つけた番組担当者が一瞥して判断できなければ次を当たることになります。またネットできっかけを得ても、打合せの段階で難解な専門分野のお話を一般レベルにまで降りてお話し頂けそうになければ、担当者は電話取材(今ならオンライン打合せ)の段階でテレビ出演の依頼を躊躇してしまいます。

ニュース番組の裏側が、時間単位、分単位で準備に追われていることを想像して頂ければ、プレス、特にテレビのニュース番組とのコミュニケーションについてもイメージ頂けるのではないでしょうか。

さて、テレビにはもっと時間をかけて準備するニュース番組中の「特集」、或いはテレビ東京のガイアの夜明けやカンブリア宮殿に代表される企業やプロジェクトをフィーチャーした番組もあります。日々のニュースと違って、ある程度の準備期間をもっている制作現場ではどのような苦労があるか振り返りながら、プレスリレーションのヒントになればと思います。

 

プロフィール

株式会社エムシーストラテジー
代表取締役 槇 徳子

20年に渡りCBC、テレビ東京に勤務、あらゆる時間帯のニュース番組を担当。今も続くニュースモーニングサテライトの立ち上げ等、10年以上金融情報番組に携わりました。報道する側の経験を基に2008年エムシーストラテジーを起業、経営者や研究者を対象にテレビ出演はじめインタビューなどをサポート。クライアントのセミナーやオープニングパーティーなどイベントでも情報発信戦略に関わり、HP等自社メディアコンテンツからプレスリリース文言まで、あらゆる側面から情報発信アドバイザリーをしています。


2022年、2023年 日経新聞広告賞審査員

2022年~(株)ミンカブ・ジ・インフォノイド社外取締役


Webサイト:株式会社エムシーストラテジー

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