マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第40回

現場マネジャーのマネジメント方法(アクション・コントロール)(中編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーが現場をマネジメントしようとする時、アクション・コントロールを活用できるというお話でした。」

「そうだ。働き手の行動をコントロールすること、言い換えれば、パフォーマンスの上がる方法を会社側が考案して、それを働き手に実施させることだ。」

「前回は行動責任を教えてもらいましたが、他にもあるのですか?」


行動制限

「そうだな。次に『行動制限』を挙げよう。」

「これは分かりやすそうですね。部下に、やってはいけないことをやらないように仕向けるということでしょう。」

「その通りだ。これに大きく、物理的制限と管理的制限という二つのやり方がある。」

「何ですか?その物理的制限と管理的制限とは。」


物理的制限

「物理的制限とは、やってはいけないことができないように、物理的な制限を設けることなんだ。例えば、『錠』は、それ専用の鍵を持たない人が施設を開いたり装置等を操作できないようにする物理的制限なんだ。」

「なるほど。言葉は大げさですが、昔から利用されてきた方法だということですね。」

「最近のものもあるぞ。『パスワード管理』も、パスワードを知らない人が特定のパソコンやプログラムを運用できないようにする物理的制限といえる。」

「パスワードを最近だなんて言っていると、『三上部長はどれだけ古い人なのか』と思われてしまいますよ。」

「それで結構だ。どうせ俺は古い人間だよ。」

「おっと、拗ねないでくださいよ。」


管理的制約

「では、もう一つの管理的制約とは何ですか?」

「管理的制約とは、やってはいけないことができないよう、組織管理上の制限を設けることなんだ。組織では、こちらの方が主になるな。」

「イメージが湧きません。」


事前レビュー

「幾つかの類型がある。典型的なのは事前レビューだ。」

「事前レビューですって?何ですか、それは。」

「みんながいつもやっていることだよ。例えば設備投資をする、人を採用する、新製品開発に乗り出すなどを決めようとする時、ちょっとした話し合いで始めることはないよな。きちんと書類を作成して、上司や責任者、時にはトップの判断を仰ぐことになる。」

「そうですね。起案書を作成し、時にはプレゼンテーションも行います。」

「それは意思決定する前に、決定内容を事前に精査(レビュー)していることになるんだ。」

「なるほど。事前レビューがあるぞ、そのためにしっかりとした書類を作り、説明をするようにと求めることで、部下が暴走しないようにコントロールしているのですね。」


能力制限

「次に挙げられるのが能力制限だ。」

「能力制限ですって?それも、難しい表現ですね。」

「こちらも、職場では良く見かける管理方法だ。例えば、一定金額の支出には上位者の承認を必要とするという制限を設けることで、支出してはならない用途にお金が使われるのを防ぐことができる。」

「なるほど。」


職務分離

「職務分離という方法もある。」

「これも難しいですね。何ですか?」

「例えば不正な支出を防止しようとする場合、支出を決定する係とお金を金庫から出す係を分けることによって、不正な行動を防止することができる。」

「金庫係が勝手にお金を持ち出そうとしても、自分が書いた支出伝票を持たずに出金しようとした場合には支出係がチェックする訳ですね。」

「そうだ。そうすれば、不正な出金が阻止できるだろう。」

「なるほど。」


冗長性

「これらを推し進めた概念として冗長性がある。」

「何ですか?その冗長性とは?」

「つまり、必要最低限ではなく余裕のある措置をとろうということだよ。例えば、生産工場に必要不可欠なのは部材の加工等を行う作業員だよな。検査要員は存在しなくても製品製造は行える。ここで敢えて検査要員を置いて厳格な検査を行えば、作業員は適切な作業を行うよう強く動機付けられるだろう。」


アクションコントロールの穴を塞いでいく

「こうやってみると、アクションコントロールは、言葉はおどろおどろしかったですが、当たり前の事ばかりでしたね。」

「そうなんだ。」

「それに考えてみると、組織の管理は、今まで見えなかったアクションコントロールの穴を塞いでいくという形で改善されてきた面が多いとも感じました。」

「まさにそうなんだ。不良品でクレームが出たら検査を強める。不正支出があれば出金プロセスを見直す。設備投資で失敗したら次は失敗しないように事前レビューしてより慎重に検討する。こうやってアクション・コントロールを改善していく訳だ。」

「よく分かりました。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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