マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第49回

本シリーズの総括(前編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「そろそろ、俺の講義も終わりにしようと思う。もともと中川課長は、我が社の現場マネジメント改革に取り組むべく組織戦略室に配属されたのだからな。次は、実践してもらわないと。」

「もちろんです。もう、既に着手していますよ。」

「そうだな。現場マネジャーへの評価基準に『現場の働き手をサポートしたか?』という項目が入ったのも、中川課長の差し金なんだろう?」

「というか、それは回り回っては三上部長の差し金ですよ。私は三上部長のお話を聞いて、確かにそうだなと思って、その項目を入れたのですから。」

「なるほど。私だったら、その内容をきちんと説明するなど、もう少し丁寧に取り組んだとは思うが、まあ、中川課長としては上出来だろう。」

「久しぶりに出ましたね。三上部長の辛口評価!」


現場マネジャーの役割を明確化する

「ところで、これから本格的に現場マネジメント改革に取り組むに当たって、中川課長としてはどんなことに重点を置くつもりなんだ?」

「そうですね。三上部長のお話を聞いていて、ポイントは大きく2つあったと思うのです。それを制度として、きちんと反映していきたいと思っています。」

「なるほど。ポイントの一つ目は?」

「ポイントの一つ目は、現場マネジャーの役割を明確化することです。」

「そうだな。現場マネジャーにはどんな役割があった?」

「ちょっと待ってくださいよ。メモを見て、きちんと答えますから。そうそう。『現場パフォーマンスの向上』、『他部門との連携』、『戦略対応』、『矛盾への対応』そして『マネジメントが効果的になるような環境整備』でした。」

「おっ。きちんとまとめたな。」


マネジメントの目的

「こうやって見直してみると、ここに挙げられている項目は一つ一つ、当たり前のことなのに、現場マネジャーの役割として認識されていることは少ないですよね。なぜなんでしょう?」

「それは前にも言ったよな。今のマネジメントは『部下に、仕事を成功させパフォーマンスを上げさせる』ことを目標としていないからだ。『部下に、上司の言うことをきかせる』ことを目的としているからだ。」

「昔は社内だけのノウハウをきちんと実行すればパフォーマンスも上がったかもしれません。その時にはそれで良かったのでしょうね。しかし今では、それだけではうまくいきません。」

「その通りだよ。顧客の声も聞かなければならないし、取引先のことも考えなければならない。技術動向などについても、アンテナを立てていなければならない。」

「現場がそういう機能をきちんと果たしてもらえることを、マネジメントの目的として掲げなければならないとうことですね。」

「そうなんだ。」


マネジメントの目的に関する意識改革

「マネジメントを行う目的についてのお話を聞いていると、思い出しました。徳川家康ですね。」

「そうだ。徳川家康は幕藩体制を『他人を自分の命令に従わせる方法』として構築していった。この考え方は、残念ながら、明治以降も踏襲されたようだ。」

「なるほど。」

「一方で欧米のマネジメントの歴史を紐解くと、マネジメントは他人を服従させるために発達したのではない。パフォーマンスを上げさせるために、発達したんだ。」

「はっきり思い出しました。ドラッカーが言ったのですよね。」

「そうだな。ドラッカーはその精神を思い出させてくれたと言えるだろう。マネジメントとはそもそも、そういうものなんだ。それは、近代マネジメントの創始者と言って良いテイラーの姿勢を見れば一目瞭然だ。」

「出ました!懐かしい『近代マネジメント』という言葉。」

「茶化すなよ。」

「茶化してはいませんよ。本当に、そうだと思います。戦略企画室として、それもきちんと実現できるように、頑張りたいと思います。」


実行の方法論

「話を元に戻してみよう。現場マネジャーの役割には『現場パフォーマンスの向上』、『他部門との連携』、『戦略対応』、『矛盾への対応』そして『マネジメントが効果的になるような環境整備』がある。これを戦略企画室として、どうやって実現していくのだ?」

「それがポイントなんです。今、新任マネジャー研修、そして数年毎に行われるマネジャー能力向上研修で教えていこうと思っています。」

「なるほど。」

「ただ、そうやって教えたからといって、本当にみんな、実行してくれるのかなという疑問が残ります。セミナー室を出たら、忘れてしまうのではないかと。」

「その点、どう思う。」

「現場マネジャーへの評価報酬制度を変えるしかないのでしょうね。」

「中川課長の言う通りだと思うよ。」

「でも、現段階では、先にも言った『現場の働き手をサポートしたか?』という項目を現場マネジャーへの評価基準に入れるのが、やっとだったんです。」

「それはどうして?」

「まあ、端的に言うと、上の方の頭が固いからでしょう。」

「頭が固いと言うのは、俺も認めないわけではないが、それだけでもないような気がするな。説明が足りなかったのではないか?」

「それは、おっしゃる通りです。どうすれば良いでしょう?」

「来週、考えてみようか。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

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