マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第48回

現場マネジャーのマネジメント(総括)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーが行うマネジメントについて、アクション・コントロール、リザルト・コントロールそしてピープル・コントロールを教えてもらいました。ここで一つ、教えてもらって良いですか?」

「何だ?」

「これらのマネジメント方法は、どれか一つを選んで行うものなのですか?それとも組み合わせて使うものなのですか?」

「良い質問だな。中川課長は、どう思う?」


各コントロールを選択して使う

「アクション・コントロール、リザルト・コントロールそしてピープル・コントロールには、それぞれ長所と短所がありましたね。これから考えると、その時々の状況に応じて最も効果的・効率的なものを選択するのが良いと思います。」

「そうだな。それも一つのやり方だ。」

「例えば以前、生産ラインで日産個数でノルマを課したことがありました。でも、うまくいかなかったのです。」

「それでどうした?」

「ある課長が、熟練技術者に頼み込んでマニュアルを作ってもらいました。手早く品質の良い手順をまとめたものです。」

「それでノルマを達成したのか?」

「というより、ノルマが要らなくなったのです。当初のノルマよりはるかに良い成果をあげられるようになりましたから。」


各コントロールが得意とする効果を期待して選択

「それはつまり、各コントロールが得意とする効果をうまく選択した例と言えるだろう」

「各コントロールが得意とする効果ですか?」

「例えばアクション・コントロールは、決められた活動を実施する、もしくは禁止された活動を行わないように強く促すので、分業しながら流れ作業で高価な製品を製造していく現場には適しているかもしれない。」

「一方で創意工夫の発揮を期待する現場ではアクション・コントロールは妨げとなる可能性があるので、提案を高く評価するリザルト・コントロールの方が良い訳ですね。」

「そういうことだ。」

「わかりました。」


組織の性格や目的、経営戦略等に適ったコントロールを選択する

「いやいや、それだけで納得してもらっても困るぞ。もう少し考えてもらいたいことがある。」

「何ですか?」

「組織の性格や目的、経営戦略等に適ったコントロールを選択するということだ。」

「どういうことですか?」

「例えば同業種の企業であってもベンチャー企業では、手間や資金のかかるアクション・コントロールは難しいかもしれない。この場合は、リザルト・コントロールを用いながら現場の裁量に任すという方法の方が適当かもしれない。」

「なるほど。」


各コントロールを組み合わせて使う

「一方で、これらのコントロールを組み合わせて使うこともできるぞ。」

「えっ、そうなのですか?」


各コントロールの欠点を補う

「各コントロールには、欠点があったよな。それは、複数のコントロールを組み合わせて使うことによって、回避できる場合がある。」

「どういうことですか?」

「例えば、生産性を飛躍的に向上させたい場合に成果コントロールだけを用いると、現場の働き手は、あまりに高い目標値に恐れをなし、モチベーションが下がってしまうかもしれない。」

「そういうこと、よくあります。」

「こういう場合には、効率的な手順を開発してマニュアルとして提示するアクション・コントロールを併用できる。マニュアル通り作業を行えば高すぎると感じた目標も達成可能だと分かると、人々のモチベーションは格段に向上する可能性がある。」

「なるほど。私たちの場合は切り替えてしまいましたが、そういう使い方もあるのですね。」


矛盾する目標に立ち向かわせる

「それともう一つ、矛盾する目標に立ち向かってもらうために、複数のコントロールを使うという手があるぞ。」

「どういうことですか?」

「例えば生産部門は、生産効率の向上と品質維持という矛盾しがちな目標に取り組まなければならない。」

「そうなんです。生産個数を求めると品質にばらつきができ、高品質を維持するために慎重を期すと生産個数が落ちるという現象、まるでシーソーゲームのようです。」

「こういう複数のターゲットを達成しようとする場合には、複数のコントロールを組み合わせることで対応できるかもしれない。」

「分かったような気がします。品質維持のためにマニュアルを用意して守らせるアクション・コントロールを行う一方で、高い生産効率はノルマを課すリザルト・コントロールを併用するのですね。」

「そうなんだ。そうすることで、生産目標だけでなく品質も同時に実現するよう、現場を促すことができるかもしれない。」

「ボーナスを弾めば、創意工夫も生まれてくるかもしれませんね。」

「そういうことだ。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

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