第1回
広報で克つ!
広告とは違う広報(PR)の魅力
広報は、企業にとって重要な情報発信のやり方のひとつです。広報(PR)のことを広告と一緒だと誤解していたり、セールスプロモーションのことだと勘違いしている経営者の方がまだまだ多いと感じます。広報はパブリックリレーションズの和訳で、PRと略されます。PRだから、プロモーションと同じと思われる場合もあり、それだけまだ広報=PRのことは世間では知られていないのでしょう。
日本語の広報という言葉は誤解しやすいのですが、パブリックリレーションズという言葉をひもとけばわかりやすくなります。パブリックリレーションズとはパブリックとの関係(リレーション)を築くということになります。実は企業経営者は、常にそのことを考えているといえないでしょうか。いかに自社の製品やサービスがお客様や株主、地域社会を喜ばせることができるかといつもお考えだと思います。広報部門は、この目的のために情報を発信していくことが業務のひとつになります。
もしかするとすでに、経営と広報の発想はイコールだとお気づきになった方もいらっしゃるかもしれません。特に中小企業においては広報を有効に実践するかどうかで、少なからず経営に影響することは間違いないと感じています。
さて、広告と広報は具体的にどのように違うでしょうか。次の3つのポイントで整理してみます。
- 時間
- 費用(コスト)
- 信頼度
各ポイントを以下のとおり解説します。
(1)広告は時間がかかりません。広告を掲載したい媒体(メディア)の場所さえ空いていれば広告を打つことができるからです。しかし、広報は取材してもらい記事を書いてもらうことが前提になりますので時間を選んで確定することができません。取材されても記事にならない場合もあります。
(2)費用があればテレビにも巨大な新聞広告も有名なビジネス誌にも広告を打つことができます。しかし、広報はお金を払っても記事として書いていただくことはできません。記事になるには、その情報にニュース性や社会性、読者への有益性などが必要になります。
(3)広告では好きなことを語ることができますので、一人称で自分のことを相手にアピールすることができます。しかし広報では取材してくれた相手が理解した内容が記事になりますので、好きな内容を語るのとは読み手の理解度や信頼度が違います。例えるなら、広報は信頼できる第三者(例:婚活コンサルタント)が自分の良さを相手にアピールして(結婚をすすめて)くれるということに似ています。また、「広報として情報発信している」という姿勢自体が社会からの信頼向上にもつながります。つまり無名企業が社会に覚えてもらうチャンスでもあるのです。
広報の成果は、知名度を上げ、リピーターを増やすこと
広報の成果は、会社の知名度を上げることができることです。また広報活動を継続していくことで、ファンを作りリピーターを増やすことができます。多くの企業が、知名度を上げるためにチラシを撒いたり、ウェブサイトを立ち上げてSEO対策をしたりすることは実践済みでしょう。しかし昨今の景気を見据えて、コスト削減したいという悩みも常に頭をよぎっていると思います。そんなときこそ、広報を開始してみることをおすすめします。広報機能を会社内にしっかり持つことで、企業のブランド力を高めることにつながります。つまり、知名度が上がり、リピーター(ファン)が増えるのです。
中小規模の企業・事業だからこそ強みを発揮できる広報活動もあります。簡単に例を御紹介すると次の3つです。
- ニュース(プレス)リリースの作成と発信
- 記者懇談会(発表会)
- メディア向けニュースレター
以下のとおり解説します。
(1)ニュースリリースでは、自社のことを誰でも理解できる明解な表現で、自社のニュースを説明することが必要です。カタカナを使わずに書くことが基本です。日頃、チラシや広告で使っている表現や営業で使っている業界用語なども使わずにリリースを作成することは最初は難しいかもしれません。発信方法は、ニュースリリースの内容や時期によっていくつかのやり方があります。
(2)記者の方を一定の日時に集めて説明をするやり方です。大手企業が広告代理店と一緒に行う大規模なものだけが発表会ではありません。もちろん「ここぞ」というところで大規模にやる必要があり、かつ予算がある場合はやったほうがよいでしょう。記者の方が「行ってみたい」と思ってくれれば少人数でも中身の濃い、広報としての成果につながるものができます。それにはまずきちんとした広報の企画・計画が必要です。
(3)企業活動の内容を分かりやすく、魅力的に、定期的にメディア向けに発信するのがニュースレターです。社内報が社員向けのものだとすると、これはメディア向けの情報発信です。ニュースレターを通じて取材につながることもあります。
これらの活動を年間計画に基づいて実行していくことで、着実に各メディアに企業活動の内容を知ってもらうことにつながり、広報としての成果を上げていくことができます。
広報のための人材をどうするか?
「広報担当がいない場合はどうすればいいのか」というご質問をよく受けます。
その場合は、兼務で設置していただくことをおすすめしています。弊社が毎月開催している広報勉強会「小さな会社の広報術実践会」でも、参加する方はほとんどが営業企画、人事部、販売部門等の担当者で、社長から広報の兼務を指示されている方々です。ただし、広報に割ける時間が半分なのか3割〜2割なのかによって進捗は変わりますので、そこを明確にする必要があるでしょう。
先日、ある企業のマーケティングのご担当者が、業務時間の2割を広報に割けるということでしたので、そのための広報計画を作りました。その担当者の方の現状や社長の意見もヒアリングし、新しく雇用をしないで広報を実践していくことになりました。一定期間様子を見たあとで社長は再度、雇用するべきか兼務のままですすめるべきかを判断するとのことでした。
また、PR会社をパートナーにするという手法もあります。広報をやってみようと考えたとき、広報に関して詳しい社員がいない場合が多いと思います。そのような場合、いわゆるPR会社の方に話しを聞いたことがあるかもしれません。PR会社は広報コンサルティング会社、広報サポート会社等いろいろな呼び方があり、業務内容も広告やセールスプロモーションを含んでいたりとまちまちです。広報業務がそれだけ多岐に渡っていることを示しています。大きく分けると、得意な「業界」を持って専門特化している場合と、「メディア」の得意分野を持っている場合とがあるのではないでしょうか。
業界では、IT、医療・医薬、教育、食品、農業、技術研究、素材等、日経新聞にあるような企業分類のイメージです。当社であれば、環境関連、農業、食品、技術研究ということになります。
メディアでいうと、新聞、業界紙、ビジネス誌、女性誌その他雑誌などの紙メディア、テレビ・ラジオ、ウェブメディア、昨今注目されるSNSなどに強みが分け分けられるのではないでしょうか。また最近では、各種会員誌、地域フリーペーパーなどに特化している会社も出てきているようです。
自社の企業の商品やサービスが、どのメディアに掲載されると効果がありそ うか、というのを一度検討し、専門性を生かしてくれそうなPR会社を選んでみるのは効果的です。一人雇用するよりはPR会社との連携のほうが、コスト面でも効果的であるケースも多いと思います。
プロフィール
株式会社アルゴバース
広報コンサルティング統括 田熊 秀美
【経 歴】
有機野菜宅配企業で社長秘書、会員向け会報誌の編集を経て1996年、広報チームリーダーに。広報として情報発信することの影響力、活用方法を学ぶ。環境関連財団法人での広報兼務後、経営コンサルティング会社を経て、2002年より現職。生産材(BtoB)企業を中心とした広報コンサルティングのほか、セミナー「小さな会社の広報術実践会」「企業広報実務講座」を運営。広報機能を企業に“移植”することを目指し、基礎知識と実践ノウハウを提供している。2017年よりBtoBの技術マーケティング会社である株式会社アルゴマーケティングソリューションズの一部署として活動し、BtoB分野に特化した記者発表および広報実務請負業に従事している。
問い合わせメールアドレス:prc@argo-ms.com
Webサイト:株式会社アルゴバース