第9回
社内報の活用
社内報を作ろう
社内報は、社員に会社の動きを知らせたい、社員間のコミュニケーションを促進したり、モチベーションをアップしたい、自分のメッセージを伝えたい、という経営者の願いを叶える手法のひとつです。
社内報作成をするのに、それを外部の専門会社に任せる場合と、社内で作成する場合がありますが、ご存知のとおり、当然前者は費用と会社のことを理解してもらうための時間がかかります。したがって小さな会社には後者をおすすめします。
A社の広報担当者Kさんは、ある日社内報を作るよう、社長から指示されました。何から手を付ければいいか分からなくなり、大企業の社内報を取り寄せてみましたが、それを見てさらに不安になりました。カラーの冊子になっていて、ちょっとしたフリーペーパーのようなものだったからです。
社内報には、定義や決まりはありませんが、経営者の考える目的を明確にしておくことで内容や体裁も決まってくるでしょう。それを踏まえた上で、Kさんは、社内報に関する情報を次の項目で整理しました。<1体裁、2内容、3発信頻度、4配布先>もちろん、広報業務の中でどのくらいの時間を割くかも考慮しました。
社内報の体裁は、紙(配布)、社内イントラネット、メールなどが一般的ですが、読みやすさが大切です。内容は、社長メッセージ、新規事業等の紹介、社員や支店等の仕事風景の紹介、メディアで紹介された記事などのクリッピング、広報からのお知らせ、社内イベントの案内、編集後記などで、構成されているケースが多いようです。
発信頻度は、理想は毎週ですが、月1または隔月くらいのペースで発信することをおすすめします。掲載する内容、例えば社内行事の頻度や新商品等の発表の頻度によって決めていきます。配布先は、社員のほか、主要取引先にも配布するケースがあります。その場合は、使用する言葉遣いを社内用語にしないなどの配慮が必要になります。
社内報の大きな効果のひとつと言えるのは、社員の意見や取り組みを紹介することで、社員のモチベーションをあげることができるという点でしょう。家族に喜ばれたという声もあります。広報が社員を主役にして取材記事を書いてあげるというイメージです。取材されたら誰でも嬉しいですよね!
また、社内報の内容を一部流用しウェブコンテンツとして、会社の公式サイトにアップすることができます。ウェブの更新頻度を高めることに貢献できます。
さらに、自社をとりまく外部の意見を社内に紹介しやすいという点もあります。
このプラス効果を想定して、Kさんは社内報の内容として、「社長対談」を企画しました。社長を誰かと対談させ、その内容を社員、お得意先に紹介していくことで、第三者的な自社への意見、評価、業界動向を把握できることが社員にも役立つと考えたのです。
対談相手は、同じくらいの規模の会社の経営者にしたいと考えました。最初は、同地域で活躍する別業種の経営者を選びました。社長同士が知り合いだったということから、先方の広報担当者に企画提案し、相互協力してすすめることになりました。
また、このような社内報の企画自体を社員にも浸透させるため、社長の対談相手を社内公募することも予定しています。著名人の名前があがることは容易に想像できますが、社員に社内報の認知をひろげ、参加してもらうということの意義に着目しています。
掲示板でも効果あり、読ませるコツ
掲示板と言ってもウェブサイトにあるものではなく、会社の通路や給湯室にあるような紙を貼っておく、あの掲示板です。パソコンを常に使用しない社員がいる会社では、紙で配布するよりも、掲示板に掲示することで情報を伝達することができるのです。古い手法として忘れられがちですが、場所も含めて、一度検討してみてはいかがでしょうか。
新聞社のロビーには、その日の新聞を、すべて広げて掲示している場合があります。その掲示板の横幅は、5メートル以上はあるでしょう!紙をめくることなく、自分が移動しながら新聞を読んでいくのは、ウェブサイトを眺めている感覚ともちょっと似ているかもしれません。
来客の導線上にある場合は、ちょっとした話題提供になります。またゴミとなってしまう紙を配布するよりは、省資源とも言えます。この掲示板作戦は、応用の幅が広く、たとえば、広報として社員に知らせたいような報道内容をクリッピング(※)していれば、それを張り出してあげることもできるわけです。
B社のTさんは、社内報を作成するのが最初は重荷だったそうです。たった2ページの社内報でも、社員が読んでいるのかいないのかもわからなかったためです。しかし、掲示板に張り出すことにしてから、社員から声をかけてもらうことが増えました。そこで、Tさんは、社内報の内容を少し積極的に企画しはじめました。
その内容とは……
・社長メッセージ
・新規事業等の紹介等、会社のトピックス
・社員や支店等の仕事風景の紹介
・広報からのお知らせ
・編集後記
という一般的な内容に加えて、
・社内イベントの案内
・お客様の声
・お取引先様の声
・メディアで紹介された記事情報
なども入れてみました。
社内報の内容において大事なキーワードは、「社長」「社員」「外部」であるといえます。かつて私が広報担当になったばかりのときに、当時の社長からは、広報として社内に何を発信すればよいかを常に提案することを課題にされた時期がありました。
まずはじめにやってみたことは、社内朝礼などで社長がはなしたことを再録という形で紹介すること、そして、広報担当が社長をはじめ社員を取材してそれを記事化するという二つのことでした。
また、社員の反応が見えるコンテンツを作ることも生きた社内報を作ることに不可欠です。社内取材をして紹介することは、もちろん社員間の話題になるでしょう。さらに進化版として、前出のTさんは、新サービスの社内認知度向上に、簡単なクイズ形式での説明を企画しました。正解者へのプレゼントも用意し、社員が参加してくれているという実感を得ました。
そして広報からのお知らせでは、広報ならではの「外部の視点・意見」として、日頃おつきあいしているメディアの方や広報的なネットワークから聞こえてくる情報で会社に役立ちそうなものを伝えます。この機会に社内報作成にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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プロフィール
株式会社アルゴバース
広報コンサルティング統括 田熊 秀美
【経 歴】
有機野菜宅配企業で社長秘書、会員向け会報誌の編集を経て1996年、広報チームリーダーに。広報として情報発信することの影響力、活用方法を学ぶ。環境関連財団法人での広報兼務後、経営コンサルティング会社を経て、2002年より現職。生産材(BtoB)企業を中心とした広報コンサルティングのほか、セミナー「小さな会社の広報術実践会」「企業広報実務講座」を運営。広報機能を企業に“移植”することを目指し、基礎知識と実践ノウハウを提供している。2017年よりBtoBの技術マーケティング会社である株式会社アルゴマーケティングソリューションズの一部署として活動し、BtoB分野に特化した記者発表および広報実務請負業に従事している。
問い合わせメールアドレス:prc@argo-ms.com
Webサイト:株式会社アルゴバース