第8回
PR会社との付き合い方
PR会社の選び方
広報業務を自社で展開しようとしたとき、広報に関して詳しい社員がいない場合は、いわゆるPR会社に相談したことがあるかもしれません。広報コンサルティング会社、広報サポート会社等、いろいろな呼びかたがあり、業務内容もまちまちですが、ここではPR会社と総称してみます。
さて、業務内容がまちまち、といういのは、広報業務がそれだけ多岐に渡っていることを示しています。大きく分けると、得意な「業界」を持って専門特化している場合と、「メディア」の得意分野を持っている場合とがあります。
「業界」では、IT業界、食品関連、農業関連、素材関連等、日経新聞にあるような企業分類のイメージです。当社であれば、環境関連製品、農業、食、環境技術、ということになります。
「メディア」でいうと、新聞、業界紙、ビジネス誌、女性誌その他雑誌などの紙メディア、webメディア、テレビ・ラジオなどに分けられます。また最近では、各種、会員誌、フリーペーパーなどに特化している会社も出てきているようです。
皆さんの企業の商品やサービスが、どのメディアに掲載されると効果がありそうか、といのを社内で検討してみてください。そのうえで、PR会社の専門性を生かせるようセレクトするとよいでしょう。
たとえば、ウェブや携帯関連のサービスの場合は、紙メディアよりも、webメディアに掲載されたほうが、効果があるといえます。ワンクリックでリンクをたどってきてくれる可能性が高いからです。
ところで、「広報と広告の違い」は3つあります。お金、時間、信頼度。広告は、お金がかかりますが、時間はそれほどかかりません、信頼度は記事に比べたら低くなります。広報は、広告費用などはかかりませんが、記事にしていただくための情報発信をし取材をとりつける時間がかかります。でも信頼度は、広告よりは上です。
ある程度の規模のPR会社には関連会社で広告も扱う会社があります。それなりの予算があれば、広告と広報を両輪で行うことができます。しかし中小規模の企業には、広告の予算が確保できない場合が多く、そこで広報に期待が寄せられるのです。
「(外部の方から)広報をしたほうがよいといわれたので考えてみたくなりました」というF社の社長は、ある大手PR会社に相談をしたそうです。しかし結局「なにが広報なのかわからなくなってしまった」そうです。
広報という業務サポートについて、内容を聞きたいと依頼したにも関わらず、広告のことや、イベント企画などとの連携など予算のかかる提案をされたのだそうです。
広報と広告を一緒に語っているとしたら、広報初心者にとっては、混乱してしまいます。広報とはどういうことをするのか、どんな意味があるのか、という素朴で大事な質問には、回答してくれるPR会社を選ぶべきでしょう。その企業や社長がどのような知識や意識をお持ちであるかによって、表現方法も変ええてくれるPR会社なら、信頼できそうです!
ポイントごとに広報ノウハウを活用
[事例1]
G社は、5名の少数精鋭で営業から顧客サポートまでをこなしている人材サービス会社です。この会社であらたなサービスを開発し、独自の営業活動で売上を伸ばそうとしていますが、認知度をあげるために、関連省庁の補助金を活用して展示会に出展することになりました。
展示会への出展自体がはじめてですので、そこへいかに顧客を誘導するかを検討した結果、広報活動を通じて告知していくことにしました。展示会までの2ヶ月、展示会開催後1ヶ月、計3ヶ月の広報活動をPR会社に依頼し、展示会出展に関する情報をニュースリリースすることにしました。
広報活動のサポート内容は、3回のミーティングを経て決めていきました。予算、広報活動内容、自社が得たい結果をPR会社と相談しました。このようなプロセスはどのPR会社も同様ですが、契約に至るかどうかは、PR会社の特性に合っているかどうかで判断されることが多いようです。
[事例2]
H社は、人材紹介会社で、社員15名、総務部と兼務の広報担当が1名います。
新卒採用のため、パンフレットの制作を行うことになりましたが、どんなパン
フレットを制作するべきか、社内ではなかなかイメージがまとまりませんでした。
社長の提案で外部のPR会社から意見と提案をもらうことになりました。毎週
1回のミーティングを重ね、外部の立場の発想と社内で必須の発想をうまく融
合させたパンフレットが期日までに完成しました。
今回のPR会社の役割は、その企業がやりたいと思うパンフレットの制作は、外部から見て実現可能か、使い勝手はどうか、という視点の提供と、その業界の競合他社情報などを踏まえた提案をする、というものでした。
制作物で表現する内容は、社内だけで検討するとまとまりにくいケースが多いので、外部の視点を活用する場合は、PR会社のノウハウが役立ちます。PR会社は、広報的なメリットを考えてくれるので、デザインやイメージだけに偏ったものにならない、という根本的な安心感があるといえます。それ自体がニュースになるようなしかけやコンセプトづくりにも長けています。
また、中長期で広報サポートを受ける場合は、定期的なミーティングと報告をしていただくようにします。ミーティングの回数や時間は予算や活動内容に応じて変わりますので、最初に確認しましょう。
[事例3]
前出のF社は、PR会社M社と1年契約をすることにしました。
社長がM社と出会ったのは、自社にとって理想的な広報活動を展開している(ように見える)他社の関係者に、「どんなふうに広報活動しているのか」を質問したことがきっかけです。その会社が活用していたのがM社だったのです。面会しお互いの広報活動に関するイメージを確認しました。
2回目の打合せで、自社の事業展開を話しました。3回目の打合せで、年間の広報計画をM社が提案し、その内容と予算が確定し業務委託契約、守秘義務契約を交わしました。活動がスタートしたあとは、F社の広報担当と業務分担します。PR会社と契約するとその分の仕事が減るのではなく、新たにやるべきことが増えるので、広報担当者は、そのことをはじめに認識する必要があります。
[事例4]
環境技術を提供するD社は、北関東の企業ですが、製品自体は、全国の飲食店にがターゲットで、社長と社員1名が、連絡のあった全国各地を飛び歩いています。ニュースリリースを見よう見まねで作ってこれまでに知り合ったメディアの方に送っていましたが、記事になったことはありません。
PR会社との契約は半年です。PR会社に現状報告をしヒアリングしてもらったところ、広報活動内容は、D社そのものではなく、製品を導入した飲食店についての情報発信をしていくやり方を提案されました。PR会社は、その会社の製品を導入した飲食店が取材を受けたときにその記事中に製品のことが少し紹介されたことに目をつけたのです。
その製品は環境に配慮したもので、店長が店のポリシーとしてその製品のことを説明していました。PR会社は他にも同じようにコメントしてくれる飲食店をメディアに紹介していきました。D社の名前は記事に出てきませんが、製品が知られるという成果を出しました。しかし記事が出るまでに4ヶ月かかりました。
このように最初に契約期間を取り決めるとPR会社は計画を持って動きやすくなります。
プロフィール
株式会社アルゴバース
広報コンサルティング統括 田熊 秀美
【経 歴】
有機野菜宅配企業で社長秘書、会員向け会報誌の編集を経て1996年、広報チームリーダーに。広報として情報発信することの影響力、活用方法を学ぶ。環境関連財団法人での広報兼務後、経営コンサルティング会社を経て、2002年より現職。生産材(BtoB)企業を中心とした広報コンサルティングのほか、セミナー「小さな会社の広報術実践会」「企業広報実務講座」を運営。広報機能を企業に“移植”することを目指し、基礎知識と実践ノウハウを提供している。2017年よりBtoBの技術マーケティング会社である株式会社アルゴマーケティングソリューションズの一部署として活動し、BtoB分野に特化した記者発表および広報実務請負業に従事している。
問い合わせメールアドレス:prc@argo-ms.com
Webサイト:株式会社アルゴバース