第6回
取材の申し込みがあったとき守らなければならないこと
最初に確認しておきたいこと
ニュースリリースを発信した後に、メディアから「取材をさせてください」という連絡があると嬉しいですね!しかし、場当たり的に臨むと、「あのことも話したかったのに話せなかった」「ちゃんと伝わったか不安」「意外な質問をされてびっくりした」などと嘆く結果になります。
そうならないために、取材の申し込みがあったきに、確認しておくことを整理してみます。これは、広報担当者がいる場合はその方がやるべきことですし、広報担当者がいない場合は、取材を受ける方(たいてい経営者)が確認しましょう。
取材の申し込みは、新聞の場合、電話で受けることが多いです。もちろんメールでくることもあります。どの媒体(メディア)からの取材でも、確認することは次のようになります。
1)取材側の情報
(メディア名、会社名、氏名、電話、ファックス、メール)
2)取材概要
(取材のテーマ、取材希望日、掲載日、撮影の有無、準備しておく資料の有無)
3)質問内容
(できれば簡単な箇条書きの文章で、ファックスかメールでもらう)
失敗例の多くは、取材申込みの電話をもらったら、そのまま相手のお話しを承って電話を切ってしまうことです。取材申込みを受けたら、相手が情報や連絡をくれるのを待つのではなく、こちらから情報を確認しましょう。
でも、記者さんとのやりとりに不慣れな場合は、上記のようにしっかりと質問を切り出せるか心配ですよね。そんなときには、こんな切り出し方がおすすめです。
記者さんが一連の話しをされたら、まずお礼を述べます。
その後、なぜ当社に連絡をくださったかを確認します。一連の話しの中で出てきていることも多いですが、あえて、それをしてみます。そのあたりから2)が見え隠れしてきます。以下を参考にしてみてください。
「このたびは、取材のご依頼をいただきありがとうございます。ところで弊社の連絡先はどこでお知りになりましたか」
(記者さん回答)
「ありがとうございます。いくつか取材について確認させていただきたいのですがよろしいですか。(1)から3)を確認する)」
いかがでしょうか。
こんなに簡単と思われることでも取材の申し込みがきた!というだけで舞い上がってしまって忘れがちです。
ここで覚えておきたいことは、2)の取材のテーマが、適切でない場合に、取材を受けないという判断をすることです。取材はいつでも自社のイメージを良くしてくれるものばかりとはかぎりません。例えば、自社が関連する業界の大手企業が世間を騒がすような不祥事を起こしたときに、もし取材の依頼がきたら、それはその不祥事と関連しているかもしれません。それでも取材を受けますか?取材を受けるか否かは、自社で判断してもよいのです。できるだけ早めに判断するためにも正確な確認をしましょう。
また3)では、『「取材依頼書」のようなものがあればください』と頼めば、たいていは通じます。
Q&Aを作っておきましょう!
記者さんからの質問事項をもらったら、取材を受ける前までに、質問事項に回答をつけていくようにして情報を整理することができます。質問事項は、だいたい3~4項目程度であることが多いですが、その質問事項だけにとどまるわけではなく、周辺の情報も聞かれます。
回答を準備しているとだんだん気づいてくることがあるはずです。たとえば「○
○について説明しようとすると、まずはその成り立ちを説明しなければ……」というように、説明したいと思うことが意外に多そうだ、ということです。
すでにお分かりのように、そのために、日頃から情報を整理しておくものが必要
なのです。項目は、次のようなものを基本としてまとめてみましょう。
1)主力サービス(今回の取材の内容等)についての基本情報(いくつもでよい)
いつからはじまったか、現状は、今年度の見込み等
2)上記サービスをとりまく市場の一般的な情報
自社のシェア、競合他社情報、日本の市場、世界の市場等
3)企業としての経営について
理念、経営状況、事業目標、売上目標、課題、行政や他社との連携の有無、
環境関連への取組み、CSR活動等
4)専門的に使っている用語の解説
5)直近のトピックス、イベント等
これを整理することで、これだけは記者さんに伝えたい、という自発的な思いも明確になってきます。取材時は、このシートを暗記する必要はなく、手元に置いてもかまいません。自社の情報を正確に伝えるための誠実な準備ですから、堂々とそれをみながら話してよいと思います。ただ、配布するのはおやめになったほうがよいです(念のため)。
このほか、特にテレビなど「あとから編集が入る」という場合にも安心せず、上記のようなQ&A資料で、特に4)については、配布用にアレンジしたものを制作スタッフの方にお配りすることで「あんなふうに言ってほしくなかった!」という後悔をしないですむでしょう。
言ったつもりが伝わっていないというのはよくあることかもしれませんが、広報では必ず避けたいことです。記事や映像として誤った情報が出てしまわないようにするのは広報としての責任です。企業として取材対応する際には、とんでもない誤解を招くかもしれないという緊張感をもって対応しましょう。
最後に、もし広報担当以外のスタッフが取材依頼の電話を受けたら、と想像してみましょう。ニュースリリースを発信した直後だけでなく、思わぬタイミングでメディアからの問合せを受けることがあります。そんなときこそ、即対応、行動することはとても大事です。しかし準備なく対応してしまうと、後々の痛手は計り知れません。
広報に入ってくるメディアからの問合せの電話やメールは、とても貴重なものです。しかし、そのことは、広報担当者以外にはなかなか分かりません。広報担当者がいない場合には、どのように受け答えをしてほしいかという社内スタッフ向けのマニュアルを用意しておくことは大切なことです。
特に取りこぼしやすい電話は、「電話受付票」というものを作り、それを運用することを社内にお願いしましょう。電話受付時に、相手の氏名、媒体名(番組や新聞、雑誌の名称)、電話連絡先、ファックス番号を必ず確認し、「広報担当の○○という者からすぐに折り返しご連絡させます」と言っていただくことです。
そして、そのことをメモではなく口頭で広報担当者へいち早く伝えていただくことを徹底的に社内にお願いしてください。それができないと、貴重な取材を受ける機会を逃すこともあることを社内共有しましょう。
プロフィール
株式会社アルゴバース
広報コンサルティング統括 田熊 秀美
【経 歴】
有機野菜宅配企業で社長秘書、会員向け会報誌の編集を経て1996年、広報チームリーダーに。広報として情報発信することの影響力、活用方法を学ぶ。環境関連財団法人での広報兼務後、経営コンサルティング会社を経て、2002年より現職。生産材(BtoB)企業を中心とした広報コンサルティングのほか、セミナー「小さな会社の広報術実践会」「企業広報実務講座」を運営。広報機能を企業に“移植”することを目指し、基礎知識と実践ノウハウを提供している。2017年よりBtoBの技術マーケティング会社である株式会社アルゴマーケティングソリューションズの一部署として活動し、BtoB分野に特化した記者発表および広報実務請負業に従事している。
問い合わせメールアドレス:prc@argo-ms.com
Webサイト:株式会社アルゴバース
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