第5回
結局、誰とも繋がらないデジタルインボイス「Peppol」
株式会社フリーウェイジャパン 井上 達也
先日、デジタルインボイス「 Peppol」(ペポル)の実際について税理士会に報告を行いました。税理士の先生方の反応は絶句でした。
ペポルはデジタル庁のサイトに「Peppol(Pan European Public Procurement Online)」とは、電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「ネットワーク」「運用ルール」に関するグローバルな標準仕様と記載されています。これを見て多くの人は、請求書のデータは世界標準によって共通化され、送信・受信ができるものと「勘違い」してしまいました。
ペポルというのはプロバイダ間でのデータのやり取りの標準化だったのです。これを使う企業は全く共通化されていないのです。
図を御覧ください。
あくまで例ですが、B社がCDEを使いたい場合には、CDEが契約しているプロバイダでなければならないということになります。つまりソフトを買う場合にはプロバイダとセットという形になります。もしすでにプロバイダと契約し、ペポルを使っていたとしても違うソフトに切り替える場合には、プロバイダも変更する必要があります。
プロバイダは 企業から受け取ったデータを独自の方法でペポルに変換し、請求先のプロバイダへ送ります。それを受け取った プロバイダは自社独自の方法でデータを変換し企業へ渡します。プロバイダ独自の方法ですから、各社様々なデータ形式で契約先の企業に渡します。xml や CSV やJSONなど決まりがあるわけではありませんし、受け渡し方法も各社独自のものとなっています。
プロバイダ数社に確認したところ、プロバイダ同士で、出力データを統一するという事はどこの会社も考えていないそうです。またすでに開発してしまった会社もあり、今更変更はできないとのことでした。
お恥ずかしい話ですが....私も昨年まではそう思っていました。そもそもペポルで届いたxmlをわざわざ変更するなんて考えた事もありませんでした。メーカーは送られてきたxmlを自社用にソフトに取り込むものだと思っていました。
ペポルによって日本のデジタル化、データの共通化はまた一歩後退してしまいました。私自身、技術者としてもっと早く気づくべきだったと猛省しています。
その後わかったことを追記いたします。
1. そもそも欧州では、国境を越えた商取引に関連するVAT(付加価値税)を捕捉することが主目的であり、そのために政府調達を手始めにデジタル化を進めようという事が発端。
2. そもそもユーザーがプロバイダを選ぶということがない
プロバイダはアプリの影に隠れているもの。つまりアプリとプロバイダはセットと考える。ゆえにユーザー自身がプロバイダを選ぶということはない。
という事のようです。
フリーウェイジャパン
代表取締役 井上達也
プロフィール
株式会社フリーウェイジャパン
代表取締役 井上 達也
株式会社フリーウェイジャパン代表取締役。クラウドシステムの会社としてユーザー数は34万社を超える。著書に「小さな会社の社長の戦い方」「起業を考えたら必ず読む本」などがある。
Webサイト:株式会社フリーウェイジャパン