第7回
インボイス・税理士事務所の今
株式会社フリーウェイジャパン 井上 達也
インボイスが始まって3ヶ月以上が経過しました。当初、想定していた事とは、まるで違う状況になったという税理士事務所も多く聞かれます。フリーウェイジャパンではユーザーの皆さんに税理士事務所の現場から聞き取り調査した結果を最新情報としてレポートいたします。
◯レシート・領収書が要件を満たしていない
当初、国税が発表したインボイスに対応したレシートが市中に広まると考えられていました。しかし実際にはどこか一部が欠けているレシートが多く出回っているようです。これはレジを変えずにソフトだけを入れ替えたためだとは思いますが、国税から「必要要件を満たしていないのでインボイスのレシートとは言えません」と否認される可能性があります。ただ税理士事務所としては適格事業者番号が書かれていればとりあえずインボイス対応のレシートとして処理している場合が多いようです。
特に手書きの領収書の場合、適格事業者番号は書かれているものの、課税価格が書かれていない、消費税率が書かれていない、宛先が書かれていない等が多くこれも国税から否認される可能性があります。
◯適格事業者番号が小さすぎる
レジを変えずにソフトだけを入れ替えたために起こるのですが、今までのレシートの小さな空間に適格事業者番号が書かれることがあります。そのため番号が非常に小さく、ほとんど読み取れないものもあります。また下記のように読み取りが困難なレシートもあります。
◯適格事業者番号を事務所で入力する事務所もあるけれど
適格事業者番号を入力している税理士事務所もあります。ただ100円のレシートデータを入れるのに13桁の数字を入れる事もあり、その苦労は大変なもののようです。金額のミスよりも適格事業者番号の入力ミスのほうが多いという皮肉な結果になっています。もし13桁の数字の方が間違っている場合、違う会社から買ったことになってしまいます。
◯適格事業者番号と連動した仕訳に注意
適格事業者番号から自動的に仕訳の摘要を作成しようとしてる事務所が混乱しています。適格事業者番号というのは会社の名前なので屋号が登録されているわけではありません 。そのため例えば鈴木鉄工所がフランチャイズで経営してるコンビニエンスストアの場合 ABCコンビニ新宿店のようにレシートには記載されるわけですが、摘要欄には鈴木鉄工所と入ってしまいます。この場合、ミスがあったとしてもレシートに店名が記載されていないので後から調べてもわかりません。
◯課税事業者なのにインボイスの発行の仕方を知らない
主に小規模の飲食店に多いのですが、課税業者にも関わらずインボイスが書かれていないレシートや領収書を発行するお店がかなりの数に上ります。こういった飲食店でインボイスを発行してくださいと言っても、歳をとっているのでよくわからないという店主や店長がいないからわからない、事業者番号がわからないといった店員が多く存在します。国は消費税の二重課税を防止したいはずですが、こればかりはどうしようもありません。
◯税理士から教えてもらっていないという顧問先
顧問先にインボイスについて周知徹底していなかったため、今から様々な作業を顧問先にお願いしている事務所もあります。顧問先も後から言われても困ると言うクレームがあるそうです。また未だにインボイスを理解していない顧問先も多いため決算時に消費税で顧問先ともめることがありそうです。特にわかりにくいものの自動販売機でのインボイス、高速道路料金のインボイス、カード明細はインボイスにはならないなど国税のサイトをきちんと確認しなければならないものがありまだまだ混乱は続きそうです。
プロフィール
株式会社フリーウェイジャパン
代表取締役 井上 達也
株式会社フリーウェイジャパン代表取締役。クラウドシステムの会社としてユーザー数は34万社を超える。著書に「小さな会社の社長の戦い方」「起業を考えたら必ず読む本」などがある。
Webサイト:株式会社フリーウェイジャパン