第10回
自社独自の人材アセスメントプログラムを創り上げるために
有限会社 人事・労務 金野 美香
「登用試験に落ちてしまったけれど、何が足りなかったのかフィードバックがないので、これから自分がどのように能力を高めていけば良いのか分からない。」
私はこれまで数千名を超える管理職候補の方たちと面談をしてきましたが、このような言葉がよく聞かれます。管理職登用試験を控えた人たちの多くは、事前に書籍や勉強会に参加し“試験勉強”に励んでいます。また、普段の仕事ぶりや成果にそれなりの自信をもって試験に臨む方もいます。それでも、自社の管理職像にふさわしくない人材の場合は、当然「試験不合格」という結果がやってくる場合もあります。
その時、“自社の管理職像”や自分の現状レベルが分からないと、自分の不足しているところや目指すべき姿が見えず、その後のキャリアへの不安感にもつながります。また。せっかくの登用試験が単なる形式的なものになってしまい、本来の目的である「人材育成」「組織開発」を促すことはできません。試験結果を紙切れ一枚でフィードバックするだけではなく、強化ポイントをコメントで添えたり、評価内容を踏まえて個別面談を行なったり、と“育成の機会”として活用することが重要です。
そして何より、登用試験実施前に自社の人事制度を踏まえた登用基準を明確にしておく、ということが必要です。インバスケットテストやグループ討議などの科目を実施し、評価する際は、必ず評価項目に照らして言動の分析を行ないます。それらの評価項目は、人事制度の等級基準や人材要件、そしてその会社のビジョンと関連してきます。例えば「3年以内に既存の業態に加えて新規事業を立ち上げる」というビジョンがあるならば、経営者と同じスピード感で事業を形にできるイノベーション思考やデザイン思考をもった人材が必要になるでしょう。そのような「人材像」について経営幹部や人事部の中でしっかりと議論し、登用試験を実施すること自体が会社の方向性を示す社員へのメッセージになるよう意識することが大切です。プロフィール
(有)人事・労務 ヘッドESコンサルタント
厚生労働省認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
日本ES開発協会(JES) 専務理事
グリーン経営者フォーラム 会員
日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、「会社と社員の懸け橋」という信念のもと、クレドを柱としたES向上プログラム“クレボリューション”の実績を重ねる。また、インバスケット等を活用したリーダーコーチングも実施。最近は「はたらく元気は、地域の元気・日本の元気!」をテーマに、ESにSS(社会的満足)の要素を加えた“ESR”の視点からの組織づくり手法を企業で実践し、高い評価を得る。宮城県仙台市出身。
http://www.jinji-roumu.com/inbp.html
Webサイト:有限会社 人事・労務
- 第13回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-2
- 第12回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-1
- 第11回 自社独自のアセスメントプログラムの運用法
- 第10回 自社独自の人材アセスメントプログラムを創り上げるために
- 第8回 面接を通して見極めること
- 第7回 課題抽出力を高めるために
- 第6回 「何が課題なのか」を正しく見極められるか
- 第5回 優先順位と劣後順位
- 第4回 インバスケットテストはリーダーの教育ツール
- 第3回 問題解決力・意思決定力を見極めるインバスケットテスト
- 第2回 人材アセスメント導入の意義
- 第1回 今、多くの中小企業で求められている「リーダー人材の見極め」