第4回
インバスケットテストはリーダーの教育ツール
有限会社 人事・労務 金野 美香
前回のコラムでは、リーダー人材の見極めツールとして「インバスケットテスト」をご紹介しました。昇格試験の場で用いられることの多いインバスケットテストですが、テストを実施し評価して終わり、ではなく、リーダー向けの教育ツールとして活用すべきであると考えています。なぜなら、インバスケットテストを通して本人が「どのような視点で物事を捉えどのようなモノサシで物事を判断しているか」ということを把握できるからです。
例えば、以前ある会社で管理職研修を行なった時のことです。創業40年にして初めて教育体系を組み立てたということで、ベテランの役職者ですらきちんと研修を受けたことがない状態でしたので、現状レベルを見える化しやすいインバスケットテストを教材に研修を行いました。「納期に間に合わない」「部下が外回り中に事故に巻き込まれた」等の案件に対する対応策などを各自がまとめ、それを持ち寄ってグループで討議しながら自社としてのあるべき答えを導き出す、という内容でしたが、グループ内で個々の意見がバラバラでいくら討議してもまとまらず、中には時間内に終わらないグループも出てくる結果となりました。これは、目先の業務処理のことしか頭に入ってこない人もいれば、半年先の目標も見据えて今やるべきことを考えられる人もいるなど、リーダーとしての視点が揃っていなかったためです。また、緊急対応が必要な時に上司に判断を委ねたり会社の指示を待つのみ、という対応しかできない人もおり、リーダーとしての判断軸を共有できていない、という問題点も明らかになりました。
インバスケットテストは、個々の回答を踏まえて複数名でディスカッションすることで、自社の管理職としての“視点”のばらつきや“モノサシ”のブレを見える化することができます。視点やモノサシは、自社の経営理念や中長期ビジョンを踏まえて導き出されるもので、組織を束ねる管理職が共有できていれば、現場で日々起きている物事に対しても正しく判断し自社の方向性にそくしてスムーズに対応することができるのです。
プロフィール
(有)人事・労務 ヘッドESコンサルタント
厚生労働省認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
日本ES開発協会(JES) 専務理事
グリーン経営者フォーラム 会員
日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、「会社と社員の懸け橋」という信念のもと、クレドを柱としたES向上プログラム“クレボリューション”の実績を重ねる。また、インバスケット等を活用したリーダーコーチングも実施。最近は「はたらく元気は、地域の元気・日本の元気!」をテーマに、ESにSS(社会的満足)の要素を加えた“ESR”の視点からの組織づくり手法を企業で実践し、高い評価を得る。宮城県仙台市出身。
http://www.jinji-roumu.com/inbp.html
Webサイト:有限会社 人事・労務
- 第13回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-2
- 第12回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-1
- 第11回 自社独自のアセスメントプログラムの運用法
- 第10回 自社独自の人材アセスメントプログラムを創り上げるために
- 第8回 面接を通して見極めること
- 第7回 課題抽出力を高めるために
- 第6回 「何が課題なのか」を正しく見極められるか
- 第5回 優先順位と劣後順位
- 第4回 インバスケットテストはリーダーの教育ツール
- 第3回 問題解決力・意思決定力を見極めるインバスケットテスト
- 第2回 人材アセスメント導入の意義
- 第1回 今、多くの中小企業で求められている「リーダー人材の見極め」