第5回
優先順位と劣後順位
有限会社 人事・労務 金野 美香
管理職研修や個人の方とのコーチングでインバスケットテストを行なうと、必ず直面するのが「優先順位の付け方」というテーマです。インバスケットテストでは、ドサっと渡された数十枚の未処理案件を限られた時間内に対応していきますので、「何から手をつけるべきか」という優先順位の付け方が試されます。すぐに完了するからと簡単なものから処理していくのはNG。管理職であれば、難解なものほど先に手をつける、という視点が重要です。それは、大きな物事の意思決定をしなければならない時には、さまざまな観点から情報を集め正しい判断をしなければなりませんし、多くの人が関わる案件であれば素早く指示命令を出していかないと後々ややこしい問題に発展しがちだからです。「優先順位は“手をつける順番”」「影響度合いの大きさと時間的猶予とで“何から手をつけるか”を判断する」、言葉で表現すると簡単ですが、優先順位を判断するモノサシは、一朝一夕で身につくものではありません。
そして、実際の日々の仕事においては、優先順位よりも「劣後順位」を判断するモノサシも重要です。劣後順位とは、「やるべきでないことを決めること」。大小さまざまな案件に関し、「自分はやらずに部下に任せる」「今は手をつけないでおく」「やらないことにする」などの判断を行なっていきます。劣後順位を決めるためには、中長期のスパンで未来思考で案件を整理する、ということと、勇気をもって決める、ということが必要であるため、本来の管理職の仕事はこの「劣後順位」の強化が重要であると言えるかもしれません。
そのように考えると、人材アセスメントにおいてインバスケットテストを実施する際は、回答を評価するのみではなく、結果をフィードバックしながらコーチングしたり、回答内容についてディスカッションしたり、自社の管理職としての視点やモノサシを揃えるための教育ツールとして活用していくことをおすすめします。
プロフィール
(有)人事・労務 ヘッドESコンサルタント
厚生労働省認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
日本ES開発協会(JES) 専務理事
グリーン経営者フォーラム 会員
日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、「会社と社員の懸け橋」という信念のもと、クレドを柱としたES向上プログラム“クレボリューション”の実績を重ねる。また、インバスケット等を活用したリーダーコーチングも実施。最近は「はたらく元気は、地域の元気・日本の元気!」をテーマに、ESにSS(社会的満足)の要素を加えた“ESR”の視点からの組織づくり手法を企業で実践し、高い評価を得る。宮城県仙台市出身。
http://www.jinji-roumu.com/inbp.html
Webサイト:有限会社 人事・労務
- 第13回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-2
- 第12回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-1
- 第11回 自社独自のアセスメントプログラムの運用法
- 第10回 自社独自の人材アセスメントプログラムを創り上げるために
- 第8回 面接を通して見極めること
- 第7回 課題抽出力を高めるために
- 第6回 「何が課題なのか」を正しく見極められるか
- 第5回 優先順位と劣後順位
- 第4回 インバスケットテストはリーダーの教育ツール
- 第3回 問題解決力・意思決定力を見極めるインバスケットテスト
- 第2回 人材アセスメント導入の意義
- 第1回 今、多くの中小企業で求められている「リーダー人材の見極め」