第11回
自社独自のアセスメントプログラムの運用法
有限会社 人事・労務 金野 美香
「また次回も自分はチャレンジできるのでしょうか?」
ある会社で、今年度の管理職登用試験に残念ながら落ちてしまった社員から、このようなことを尋ねられました。「チャレンジして良いならば、また来年も受けたいです。そのために何を勉強していけば良いのでしょうか。」試験に落ちたのは仕方ない、と本人は納得しているようです。けれどももっと上の立場を目指していきたいので、そのための道筋を教えてほしい、という問いかけでした。
前回お伝えしたように、アセスメントプログラムにおいて大切なのは単に試験を実施して終わりではなく、受験者に個別に適切なフィードバックを行なうことです。どこが良くてどこが悪かったのか、強み弱みを明確にすることで、人材育成の意味合いも持たせることができます。
そして、いくつかのルールを決めることも重要です。例えば“再チャレンジ”ができるのかどうか。「登用試験は3回まで受けられる」「一年おきに試験を受けられる」「不合格の翌年から再受験できる」等々。「いつでも希望する限り受験できる」というルールよりは、ある程度制限を設け、アセスメントプログラムを経験すること自体に意味があるというメッセージを伝えると良いでしょう。
そのためには、アセスメントプログラムの受験資格を予め設定しておくことも必要です。ある会社では、勤務年数や等級に加え、「上司の推薦」「直近2回の評価がA以上」という要件を設けました。また、「クレドを理解し実践している」「職場で対話の場を自ら創っている」等の理念浸透のための取り組み実践度合いを要件に盛り込んでいる会社もあります。
管理職には、経営的視点で組織全体を統括し意思決定できるレベルが求められます。そのことをコンセプチュアルスキルと言います。アセスメントプログラムを受けるにあたり、コンセプチュアルスキルを支えるだけの“土台”ができていることが必要で、それを“受験資格”等で提示することが求められるのです。
プロフィール
(有)人事・労務 ヘッドESコンサルタント
厚生労働省認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
日本ES開発協会(JES) 専務理事
グリーン経営者フォーラム 会員
日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、「会社と社員の懸け橋」という信念のもと、クレドを柱としたES向上プログラム“クレボリューション”の実績を重ねる。また、インバスケット等を活用したリーダーコーチングも実施。最近は「はたらく元気は、地域の元気・日本の元気!」をテーマに、ESにSS(社会的満足)の要素を加えた“ESR”の視点からの組織づくり手法を企業で実践し、高い評価を得る。宮城県仙台市出身。
http://www.jinji-roumu.com/inbp.html
Webサイト:有限会社 人事・労務
- 第13回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-2
- 第12回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-1
- 第11回 自社独自のアセスメントプログラムの運用法
- 第10回 自社独自の人材アセスメントプログラムを創り上げるために
- 第8回 面接を通して見極めること
- 第7回 課題抽出力を高めるために
- 第6回 「何が課題なのか」を正しく見極められるか
- 第5回 優先順位と劣後順位
- 第4回 インバスケットテストはリーダーの教育ツール
- 第3回 問題解決力・意思決定力を見極めるインバスケットテスト
- 第2回 人材アセスメント導入の意義
- 第1回 今、多くの中小企業で求められている「リーダー人材の見極め」