第3回
問題解決力・意思決定力を見極めるインバスケットテスト
有限会社 人事・労務 金野 美香
世の中の管理職の皆さんの多くが直面しているであろう「時間が足りない」という悩み。「リーダーは“明日の仕事(中長期のスパンで取り組み未来の価値を生み出す仕事)”に注力せよ」というのがセオリーではありますが、「とは言っても現実はそううまくはいかないよ」という声が聞こえてくることもしばしばです。
仕事を「①重要度(影響度)も緊急度も高い案件」「②緊急度は低いが重要度が高いもの」「③重要度は低いが緊急度が高いもの」「④重要度も緊急度も低いもの」という4つの分け方をした時に、管理職であれば①②に自身の時間や思考を費やし、③④は部下たちに権限移譲して対応させることが理想です。しかし、①や③に追われ②(明日の仕事)が後回しになりがち、というのが現実ではないでしょうか。
目の前に連なる数々の未処理案件を限られた時間・状況の中でいかに対応していけば良いのか?その対応力を試すアセスメントツールとして「インバスケットテスト」があります。
弊社では10年前に社員数約150名のメーカーでインバスケットテストを実施しました。新人事制度のもと理念・ビジョンにあったリーダーを育成しよう、ということで管理職登用制度を設け、その試験科目の一つとして導入したのです。「部下から届いた相談メール」「お客様からのクレーム対応」など大量の未処理案件資料を渡され、90分という時間の中で処理を進めます。部下に指示を伝えられず自分だけで対応しようとする人、周りに割り振りし過ぎて肝心の意思決定ができない人などさまざまな傾向がみられ、結果的に2名の若手社員が抜擢されました。
以来、弊社では数十社の中小企業でインバスケット試験を導入し、個人の研修受講者も含めると約5000名の方々のアセスメントをしてきましたが、ここ最近感じるのは「中長期のビジョンを描き仕事を組み立てて未来志向で取り組める人材」こそがこれからの企業に必要なリーダー人材である、ということです。
プロフィール
(有)人事・労務 ヘッドESコンサルタント
厚生労働省認定CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
日本ES開発協会(JES) 専務理事
グリーン経営者フォーラム 会員
日本初のES(従業員満足)コンサルタントとして、「会社と社員の懸け橋」という信念のもと、クレドを柱としたES向上プログラム“クレボリューション”の実績を重ねる。また、インバスケット等を活用したリーダーコーチングも実施。最近は「はたらく元気は、地域の元気・日本の元気!」をテーマに、ESにSS(社会的満足)の要素を加えた“ESR”の視点からの組織づくり手法を企業で実践し、高い評価を得る。宮城県仙台市出身。
http://www.jinji-roumu.com/inbp.html
Webサイト:有限会社 人事・労務
- 第13回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-2
- 第12回 これからのアセスメントプログラムに必要な視点-1
- 第11回 自社独自のアセスメントプログラムの運用法
- 第10回 自社独自の人材アセスメントプログラムを創り上げるために
- 第8回 面接を通して見極めること
- 第7回 課題抽出力を高めるために
- 第6回 「何が課題なのか」を正しく見極められるか
- 第5回 優先順位と劣後順位
- 第4回 インバスケットテストはリーダーの教育ツール
- 第3回 問題解決力・意思決定力を見極めるインバスケットテスト
- 第2回 人材アセスメント導入の意義
- 第1回 今、多くの中小企業で求められている「リーダー人材の見極め」