第11回
「おもてなし」も仕組み化できる
仕組み経営株式会社 執筆
会社を大きくしていくために欠かせないステップのひとつが、
「顧客を任せる」
ということだと思います。
創業当時は社長や創業メンバーが直接対応していた顧客を、別の営業やサービス担当者に任せていく、ということです。
これはBtoBでも、BtoCでも重要なステップと言えます。
社長や創業メンバーがいつまでも顧客対応していたのでは、成長のために時間を使うことが出来ないからです。
また、顧客を任せることで、任せられた本人が成長していくことにも繋がります。
社員に「あとは任せる」と言えますか?
私が会社員で営業をしていたころの話。
当時の役員の個人的なつながりで、ある大手企業との商談に同行しました。
日本人なら誰でも知っている大手企業だったので、私は当然、その役員が直接担当するのだろうなと、軽い気持ちで同行しました。
しかし、最初の商談が終わった後、
”清水、あとは頼んだ”
と言われたのです。
当時の私はまだ入社したばかりだったので、あまりの無茶ぶりにビックリした記憶があります。
でも任せられたから仕方ありません。
すぐに帰社し、夜通し提案書作成に取り掛かり、最終的には、役員の助けもあり、社内で最も大きい案件を受注することが出来ました。
さらにその後、その案件を成功させるために半年間位、苦労しながらあらゆることを自分で対応しました。
今振り返ると、そのように大手顧客を任せてもらったことが、社会人としての初期の成長に大きく役立ったな、と思います。
秀逸なホテルの事例
というわけで、顧客を任せるということは、社員を育てる意味でも、上司の時間をより重要なことに使う意味でも大切と言えます。
では、顧客を任せるにはどうすればいいのでしょうか。
今日は「ホテルベネチアの事例」をご紹介したいと思います。
ホテルベネチアとは、マイケルE.ガーバー著「はじめの一歩を踏み出そう」の中で紹介されているホテルです。
このホテルの事例では、顧客を満足させるために、いかに仕組みが大切かが紹介されています。
読んでない方に事例を引用させていただきます。
以下の話は、マイケルE.ガーバー氏がホテルベネチアで体験したストーリーです。
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ロビーに入った瞬間に、このホテルが特別な場所であるということに気づいた。 内装には杉材がふんだんに使われており、それが温かい色の照明に映えて、ぬくもりのある雰囲気に包まれていた。
(中略)
(ホテルの)レストランから部屋に戻る道には、もう冷たい夜気が満ちていた。
「暖炉の火を起こして、寝る前にもう一杯ブランデーを飲もう」
こんなことを考えながら、杉林の小径を歩いていた。
しかし、部屋に戻った私は、またもやホテルのサービスに驚かされた。
暖炉の火は赤々と燃え、枕元にはミントが置かれていたのである。
そして、ベッド脇のナイトテーブルには、一杯のブランデーと手書きのカードが置かれていた。
カードには次のようなことが書かれていた。
“ベネチアにお越しいただきありがとうございます。初めのベネチアの夜をお楽しみいただけたことかと思います。御用がございましたら、いつでもお申し付けください。”
私はホテル側の十分な心遣いに満足して、眠りについた。
翌朝、私は奇妙な音で目を覚ました。泡立つような音が聞こえる。
何の音だろうかと確かめてみると、キッチンにおいてあったコーヒーメーカーのタイマーがセットされ、コーヒーを淹れ始めていた。
そこに立てかけてあったカードにはこう書かれていた。
“あなたのお好きなブランドのコーヒーです。どうぞお楽しみください。”
驚いたことに、そのコーヒーのブランドは、私がいつも飲むものだった。
どうやって彼らは、私の好みのコーヒーを知ることが出来たのだろうか?
そういえば心当たりがあった。
昨夜のレストランで、どのブランドのコーヒーが好きかと聞かれたのである。
そのコーヒーがちゃんとここにあるのだ!
レストランでの会話の意味を理解した時、ドアをそっとノックする音が聞こえた。
私はドアのところに行き、開けてみたが、人影はなかった。しかし、絨毯の上には新聞が置いてあった。いつも読んでいるニューヨークタイムズである。
どうして私が普段読んでいる新聞を知ることが出来たのだろうか?
思い出せば、チェックインの時に、受付の女性に新聞のことを聞かれていた。
ここでもきっちりと私の好みに合ったサービスをしてくれたのである。
その後、私の泊まるたびに、素晴らしいサービスが繰り返された。
(中略)
私はマネージャーに会わせてほしいと頼んでみることにした。
どうして、常に同じサービスが提供されるのかを知りたかったからである。
マネージャーは29歳の若い男性だった。
「若いのにしっかりしている。彼がいるから、このホテルの経営は上手くいっているのだろう」
私はこんな第一印象をもった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
と、こんな感じのストーリーです。
”おもてなし”も仕組みで成り立つ
その後、実はマネージャーは5か月前に入ったばかりで、業務マニュアルを基に仕事をしているだけです、と答えるのです。
素晴らしい顧客サービスを体験したり、聞いたりすると、多くの社長は、
”うちにも、あんな社員がいたらいいな~”
と思うものです。
しかし、ホテルベネチアの話からわかることは、本当の素晴らしい顧客サービスは、属人的なものではなく、仕組みによって行われるものだということです。
社内に人当たりのいい人がいる、気の利く人がいる、というのはもちろん良いことです。
ただ、それではその人が辞めてしまったらサービスの質は下がりますし、他の人が対応した時には質が下がり、お客さんはギャップを感じてしまいます。
”おもてなし”も仕組み化できる
ホテルベネチアの例では、
• ブランデーが用意されている、
• コーヒーが用意されている、
• 新聞が用意されている、
という優れた”おもてなし”が行われていました。
ただし、これらの”おもてなし”は、社員の属人的な能力とか性格によって行われているものではありません。
ホテルのオーナーが作った”仕組み”によって行われています。
その仕組みが書かれている業務マニュアルがあることで、入社したてのマネージャーも活躍できていた、というわけです。
”仕組み”を整えることによって、安心して顧客を任せられるようになります。
ぜひどんな仕組みがあれば、顧客を任せることが出来るのかを考えてみてください。
プロフィール
世界中で実証されているノウハウを基に、中小・成長企業を「仕組み」で成長する会社づくりをご支援しています。
□ 自分が現場で働き続けないと会社が運営できない。
□ 社員に仕事を任せられない。
□ 家業から事業へ成長させたい。
□ 成長の壁を乗り越えたい。
□ 熟練社員にしか出来ないブラックボックス業務がある。
□ 社長が代わっても大丈夫なようにして事業承継を成功させたい。
□ 自分の会社を高値で売却したい。
このような課題を抱えている経営者/経営陣の方向け専門のコーチングプログラムをご提供しています。
Webサイト:仕組み経営株式会社
- 第15回 会社の仕組みを変えることで人が自然に変わる
- 第14回 「仕組み化の経営術」 - 社長が頑張らなくても成長する会社
- 第13回 社内で一番厄介な仕組みとは?
- 第12回 差別化を生み出す仕組み化の手順
- 第11回 「おもてなし」も仕組み化できる
- 第10回 組織のととのえタイム
- 第9回 マニュアル化率98%を目指そう
- 第8回 「企業は人なり」はウソ?
- 第7回 成功裏に社長をリタイアするには?
- 第6回 三位一体の計画を作ろう
- 第5回 会社の仕組み化とは一体何か?
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