第15回
会社の仕組みを変えることで人が自然に変わる
仕組み経営株式会社 執筆
今回は「仕組み化の経営術」の内容の補足説明として、特に前半部分を詳しく解説していきます。
会社が停滞する最大の理由は、経営が人に依存していることにあります。社長や特定の社員に依存し、その人がボトルネックになることで会社の成長が阻害されるのです。この人依存には典型的な7つのパターンがあります。
■1つ目は「職人型経営」です。社長が専門的なスキルを持って独立したような場合に陥りやすいパターンで、高品質の仕事ができるのが社長やベテラン社員だけという状態を指します。そのため、社長の時間と体力が会社の成長の限界を決定づけてしまいます。
私自身も以前はコーチングの職人としてスタートしましたが、このままでは自分の時間的制約が売上の限界になることに気づきました。そこで、私の代わりにコーチングができる人材を育成し、時間に縛られない形でサービスを拡大していくことにしたのです。これはお客様、コーチ、そして私自身にとってWin-Winの解決策だと言えます。
2つ目は「ハブ型経営」です。意思決定が社長を経由しないと進まず、社長の頭で考え、社員は手足のように動くだけの状態を指します。社員が20〜100人規模の会社でもよく見られるパターンです。事業承継の際に問題となるのが、社長の代わりができる人材が社内にいないケースです。この状態を脱却するには、意思決定を適切なポジションに委譲し、組織図や意思決定基準を整備する必要があります。
3つ目は「他責型経営」です。ミスや目標未達成の際に人を責める文化を持つ会社で、社員は社長の顔色を伺い、新しいアイデアや意見を言いづらい状況に陥ります。規模の大小に関わらず起こり得るパターンです。
4つ目は「三者三様型経営」です。顧客対応が社員個人のスキルに依存し、バラつきが出るパターンです。前回担当した人が良かったのに今回はダメだったという状況になり、リピート率や固定客率が下がってしまいます。常に新規顧客開拓に追われ、収益性が悪化します。社員個人の個性は尊重すべきですが、顧客に提供する価値は誰がいつ対応しても同じである必要があります。
5つ目は「偽・移譲型経営」です。社長の言うことを聞く幹部・マネージャーに経営の大部分を任せるパターンで、社長の意向と異なる顧客対応などが起きがちです。任せる相手の選定基準を明確にし、採用・育成・評価・報告の仕組みを整備することが重要です。
6つ目は「ハロー・グッバイ型経営」です。新入社員の離職率が高い会社を指します。採用や退職対応に追われ、多大な採用コストや退職コストが発生します。原因は採用ミスとフォローの仕組み不足の2つのパターンが考えられます。業界によっては、高い離職率が当たり前になっているケースもありますが、いかに無駄なコストがかかっているか認識する必要があります。採用とフォローの仕組みを根本的に見直すことが求められます。
7つ目は「烏合の衆型経営」です。社員の自主性を重んじるあまり、会社の一貫性や方向性がなくなってしまうパターンです。表面上はうまくいっているように見えても、実態は何事も成し遂げられていない状態に陥ります。
■以上の7つのパターンに共通しているのは、会社の経営が人に依存していることです。これを脱却するには、人依存から仕組み依存へと経営のあり方を変えていく必要があります。
人依存の会社は、人を変えることで会社が良くなると考えがちです。ミスが起きれば責任者を変えればストレスが緩和されるという発想です。しかし人を変えるのは非常に難しいものです。
一方、仕組み依存の会社は、会社の仕組みを変えることで人が自然に変わることを目指します。仕組みを変え、それによって人が変わり、結果的に会社が良くなるという考え方です。
よく「人こそが我が社の資産」という経営者がいますが、私はこの考えには疑問を感じます。なぜなら人はコントロール不能だからです。いくら給料を払っていても、社員がいつ会社を去るかは彼ら次第です。コントロールできないものを資産とは呼べません。
一方、仕組みは一度作れば独占的な資産となり、100年経っても残り続けるものになります。
■ここで留意すべきは、仕組み化とは単なる再現性の確保ではないということです。自社独自の強みある仕事のやり方を構築し、それを再現可能にすることに価値があるのです。平凡な仕事を再現しても意味がありません。
仕組み化の全体像-は下図のようになります。中心にあるのは経営者の人生観で、その周りに会社の理念体系が位置づけられます。理念を実現するために組織・戦略・目標が定められ、さらにその外側に価値提供プロセス・サポートプロセス・マネジメントプロセスという3つの仕組みが存在します。これらを作り上げることで、経営者の意図した会社が形作られていくのです。
人に依存した経営から脱却し、仕組みに依存した経営へとシフトすることが、会社を持続的に成長させる鍵だと言えます。ぜひ参考にしていただき、自社の仕組み化を進めていただければと思います。
プロフィール
世界中で実証されているノウハウを基に、中小・成長企業を「仕組み」で成長する会社づくりをご支援しています。
□ 自分が現場で働き続けないと会社が運営できない。
□ 社員に仕事を任せられない。
□ 家業から事業へ成長させたい。
□ 成長の壁を乗り越えたい。
□ 熟練社員にしか出来ないブラックボックス業務がある。
□ 社長が代わっても大丈夫なようにして事業承継を成功させたい。
□ 自分の会社を高値で売却したい。
このような課題を抱えている経営者/経営陣の方向け専門のコーチングプログラムをご提供しています。
Webサイト:仕組み経営株式会社
- 第15回 会社の仕組みを変えることで人が自然に変わる
- 第14回 「仕組み化の経営術」 - 社長が頑張らなくても成長する会社
- 第13回 社内で一番厄介な仕組みとは?
- 第12回 差別化を生み出す仕組み化の手順
- 第11回 「おもてなし」も仕組み化できる
- 第10回 組織のととのえタイム
- 第9回 マニュアル化率98%を目指そう
- 第8回 「企業は人なり」はウソ?
- 第7回 成功裏に社長をリタイアするには?
- 第6回 三位一体の計画を作ろう
- 第5回 会社の仕組み化とは一体何か?
- 第4回 あなたはいつまで経営し続けますか?
- 第3回 ジェンガテスト:社長が抜けても大丈夫か?
- 第2回 会社の取扱説明書ありますか?
- 第1回 人依存で起こる5大症状とは?