「先週は、どうもありがとうございました。」
「お役に立てたでしょうか?」
「とても良いお話が聞けたと思っています。でも・・・。」
「でも?」
「ビジネスモデルについて、自分で検討してみたのです。でも、お話にあったような、意思決定に役立つようなビジネスモデルはできませんでした。」
「どうしてでしょう?」
「ビジネスモデルが、たぶん、簡単だからではないかと思っています。」
「簡単ですって?」
「私、これまでの経験を生かしてマーケティング・アドバイザーをやろうと思っています。」
「そうでしたね。」
「するとビジネスモデルには、『私』と「マーケティング力を付けたいお客様』の2つしか、登場人物がいないのです。」
「なるほど。」
「そして、私から『アドバイスの提供』という矢印と、お客様から『フィーのお支払い』という矢印が出ています。それだけなんです。それ以上の要素はありません。」
「そうですか。」
「先週、お話しして頂いた弁当販売業者の場合には、食材の仕入先とか、卸売する店舗、そして小売するお客様など、いろいろな要素があります。そういう、複雑なモデル図なら読み取って示唆を得ることができると思います。」
「あなたのビジネスモデルでは、示唆は得られないのですか?」
「そうではないですか?たった2つの当事者がいるだけで、たった2つの関係しかないのですから。」
「そう思われたのですね。」
示唆が得られるビジネスモデルにブラッシュアップする
「ということで、ビジネスモデルを考えることは、私にとって、あまりメリットがあるとは思えないのです。」
「そうですか、それは残念ですね。」
「なので、他のことを教えてください。」
「いえいえ、あなたにとって示唆が得られるような、そんなビジネスモデルにブラッシュアップしていきましょう。」
「そんなことができるのですか?」
「もちろん、できます。ぜひ、やってみましょう。」
「お願いします。」
<内容を補足する>
「お書きになったビジネスモデルには、あなたからの『アドバイスの提供』という矢印と、お客様から『フィーのお支払い』という矢印が出ていたのですね。」
「そうです。」
「そして、あなたが始めたいビジネスはマーケティング・アドバイザーということでした。」
「そうです。」
「あなたが提供する『アドバイス』は、どのような形で提供されるのですか?」
「と言いますと?」
「口頭で伝えるのですか?文書にして渡すのですか?」
「ポイントを挙げた文書をお渡ししながら、口頭で説明しようと思っています。」
「他のマーケティング・アドバイザーの方も、全て同じように仕事をしておられるのですか?」
「それは違うと思います。私の周囲にいるマーケティング・アドバイザーは、ネット上のマーケティングに特化している人が多いのです。そういう方々は、ネット上の操作を代行するという形で主に仕事をしておられるようですね。」
「あなたは仕事の代行ではなく、経営者へのアドバイスという違ったサービスを提供することで差別化をされたのですね。」
「そうです。」
「今、お話しがあった内容をビジネスモデルに補足することができますね。業務代行型の同業者が多い中の差別化要因として、経営者の良きアドバイザーに徹することでユニークな価値を提供するということです。」
「なるほど。」
<顧客の価値を明確化する>
「価値という言葉が出たところで、これをもう少し掘り下げてみましょう。あなたのビジネスからお客様が得られる価値は、何ですか?」
「えーっと、それは。」
「同業者はお客様の仕事を代行していますね。それには『お客様の負担を軽減する』とか『素人がやるよりもレベルの高い仕事が実現する』という価値があります。一方で、あなたが提供する価値は何でしょうか?」
「お客様そのものが、次にはレベルの高い仕事ができるようになるということです。」
「なるほど、アドバイスを応用することができるということですね。」
「そうです。」
「でも、お客様によっては、応用できない場合がありませんか?そうすると、お客様が十分に満足しない場合も考えられますが。」
「例えば顧客開拓の場合には、お客様と一緒に行動しようと思っています。」
「というと?」
「開拓したい顧客像をペルソナを使って明らかにしたり、そういう顧客をどうやって見付けるかのリサーチ方法を実践したり、面会のアポが取れたら同行するなどです。」
「あなたのノウハウの再現性が高まりますね。」
「そうなんです!」
「このように、あなたが提供するお客様の価値をビジネスモデルに補足できますね。アドバイザーとしての、代行業者さんにはない価値です。」
「なるほど。」
<対価を明らかにする>
「こうやって教えてもらうと、ビジネスモデルをブラッシュアップする方法、いろいろありそうですね。」
「そうなんです。それにお気付きなら、次で最後にして、残りはご自分で考えて頂きましょう。」
「そうします。最後は、何ですか?」
「今度はお客様からあなたに向けられた矢印です。『フィーのお支払い』となっているとのこと。どのような形でフィーをもらうのですか?」
「実は、一つの課題に3ヶ月から6ヶ月の間で取り組んでいくプロジェクト型での契約を考えているのです。」
「その趣旨は?」
「明確な、そして大きめの目標を決めなければ、満足のいく成果を得ることはできません。最初は顧問ビジネスを考えていたのですが、そうすると目標が小さく、私としても『小技(こわざ)』をお伝えするだけになる可能性があります。」
「それでは拙いのですか?」
「顧客満足度が下がって、継続していただけない可能性があります。口コミも広がりません。」
「なので大きめの目標を明確に決めて、それを達成するプロジェクトの達成に向けてアドバイスするのですね。」
「そうなんです。」
「では、成功報酬型のフィーなのですか?」
「いいえ、予め定めた金額です。」
「そのこころは?」
「それを取り戻すように、より大きな儲けが得られるように、お客様のモチベーションを高めるためです。」
「そうなんですね。このようなことも、ビジネスモデルに補足できますね。『フィーのお支払い』も、単なる取引行為ではありません。さまざまな意図が込められていました。それを書き込んでおくのです。」
「確かに!こういうことをビジネスモデルにきちんと書き込んでおくと、次に何か悩んだときにでも、うまく意思決定できそうですね。原点を振り返りながら。」
「そうなんです。ぜひ、そうやって活用してください。」