ドラッカーから起業を学ぶ

第4回

ビジネスパートナーとの関係も築いていく

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「ビジネスモデルを作りながら、もう一種類の人々との関係も築かなければならないと気付かれたと、言っておられましたね。」

「そうです。もう一つ構築しなければならないのはビジネスパートナーとの関係です。」

「ビジネスパートナーですか。どういう意味ですか?」

「私は、マーケティングに関するコンサルタントになろうと思っています。マーケティングとは、非常に広範にわたる活動なので、私が対応できるのはごく一部でしかありません。」

「ほう、私の周囲にはマーケティングに関するコンサルタントが何人かおられますが、実際はそうなのですね。」

「コンサルタントとしてマーケティングを専門としようとすると、実は3つの領域で熟達する必要があると思います。1つはマーケティングそのもの、2番目はツールの活用方法、そして3番目はツールを使うための技術です。」

「なかなか、難しそうですね。」

「例えば私のように、Webを中心としたコンサルタントを考えてみると、まず私は、マーケティングの勉強をしなければならないと共に、その知識でもってホームページを作ったり、SNSを活用した記事を書けるようにならなければなりません。」

「そうですね。」

「そして、多くの場合、それだけでは終わりません。ネットワークに関する知識や、コンピューターに関する知識も必要となります。」

「なるほど。確かに。」

「そういう中、私は、ビジネスモデルを作っているうちに、私のビジネスがお客様に、どのように見えているのか、考えるようになったのです。」

「どのようにお考えになったのですか?」


自分のビジネス範囲を「ニッチ過ぎる」と解釈する

「一言でいえば、ニッチ過ぎるということですね。」

「ニッチ過ぎる?」

「大工さんでいえば、屋根瓦を葺くだけの大工のようなものです。」

「そういう大工さん、実際に存在するでしょう。」

「そうだと思います。でも一方で、屋根だけ作って欲しいお客様はいません。屋根だけを修理して欲しいお客様はおられるかもしれませんが、それも多くはありません。」

「確かにそうですね。」

「それと同じように、私はマーケティング、特にWebを使ったマーケティングでお手伝いしたいと思っていますが、それはお客様の求めからすると、とても狭い分野ではないかと思うのです。超ニッチと言って良いほど。」

「お客さまは商品・サービスが売れたり、ブランド価値が高まることを期待していますからね。それはWebだけで実現する訳ではない、店舗やチラシ広告、ひいては社員教育などまで、さまざまな要素が関係しているということでしょうか。」

「そういうことです。」

「それで、何を思いつかれたのですか?」

「屋根を専門にしている大工さんはどうしているかと考えてみました。」

「どうしているのですか?」


ビジネスパートナーの必要性

「仲間との関係を築いていると思います。ビジネスパートナーとの関係です。」

「ビジネスパートナーとの関係?」

「屋根の修理だけして欲しいというお客様がいたら、もちろん、自分一人で対応します。しかしそれよりも、家一軒建てたいというお客様の方が多いでしょう。そういうお客様に対応できるように、土台作りできる大工、壁や床を作る大工、窓を作る大工などと繋がっている訳です。」

「なるほど。」

「このように、顧客から見て超ニッチな範囲で活動する専門家は、ビジネスパートナーとの関係を結んでおくのが大切だと思いついたのです。」

「それはとても良い点に気付かれましたね。自分の仕事が顧客にとって意味のあるものになるように、そして今まで以上に価値のあるものになるように、共に働く人々と関係を築き改善していくという『関係のマネジメント』については、ドラッカーも強調しているところです。」

「そうなんですか?ドラッカーと同じことを気付くことができたとは、嬉しいですね。」

「ドラッカーは、ただ単に周囲で働く専門家と繋がっているだけでなく、顧客が自分たち仕事からより大きな満足を得ることができるようにするには、自分は仲間からどのような情報をもらう必要があるか、そして自分は彼らにどのような情報を与えて貢献できるかを考えるようにアドバイスしています。それが『関係のマネジメント』の本質とも言えます。」

「確かに、ただ単に関係を築くだけではく、お互いが貢献し合うことによって、顧客の満足を高めることができますね。」

「そうなんです。ぜひ、頑張ってみてください。」
 

プロフィール

StrateCutions (ストラテキューションズ)
落藤 伸夫


(StrateCutions代表)ドラッカー学会会員
中小企業診断士を目指していた平成9年にドラッカーに出会って以来、ドラッカーの著書をいつも座右の銘にしてきました。MBAを取得し、コンサルタントとして活動するにあたっても、企業人が考え行動する基本はドラッカーにあると感じています。ドラッカーの教えは、時には哲学的に思えることがありますが、企業が永らく繁榮するとともに、社会にある人々が幸福になることを目指していると思います。お客さま、社会、そして自分自身の「三方良し」の構図を作り上げることにより起業の成功を目指すドラッカーの知恵を、お楽しみ下さい!

<著書>
『ドラッカー「マネジメント」のメッセージを読みとる』


Webサイト:StrateCutions

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