第20回
採用リスクを回避するバックグラウンドチェック(経歴調査)とは
株式会社TMR 執筆
1.バックグラウンドチェックの目的と実施企業が増えている背景
2.経歴詐称の実態
3.リファレンスチェックとは
1.バックグラウンドチェックの目的と実施企業が増えている背景
(1)バックグラウンドチェックの目的
バックグラウンドチェックとは、採用選考時に候補者の過去の経歴に虚偽や問題がないかあらかじめ調査をすることで、採用調査や雇用調査と呼ばれることもあります。応募者が選考時に提出した書類に記載されている内容について虚偽が無いか、記載内容を証明できる書類の提出を求めたり、事実を知っている関係者に連絡して直接確認したりします。バックグラウンドチェックは会社に不利益を与える可能性のある人物の採用を未然に防ぐことを目的として行われます。
(2)バックグラウンドチェックを行う企業が増えている背景
海外の企業ではバックグラウンドチェックは一般的でしたが、日本では近年になって実施する企業が増えてきました。日本では、雇用形態が多様化しつつある中、1人あたりの転職回数が増える傾向にあり、過去の経歴を正確に把握した上で採用判断をしたいと考える企業が増えたことが、バックグラウンドチェックを行う企業が増えた背景にあります。
従来も役職者などハイレイヤーな転職者に絞りチェックを実施するケースはみられましたが、最近では一般社員に対しても、採用失敗のリスクを排除するためにバックグラウンドチェックを行う傾向が多くなりつつあります。
(3)バックグラウンドチェックによりネガティブ情報が明らかになる割合
時間をかけて選考して採用した人物が、期待していたほどパフォーマンスが発揮できなかったり、過去の勤務先でのトラブルや経歴詐称が原因で企業に損失を与えたりするケースがしばしば発生しています。ある国内機関によればバックグラウンドチェックを通して、ネガティブ情報がみつかるケースは5パーセントから10パーセントに上ると発表されました。一定の割合で経歴詐称などのトラブルの因子が明らかになっています。
例えば、過去の勤務先でトラブルを起こす可能性のある人物の典型例として挙げられるのは「モンスター社員」です。一般常識や会社の規則から外れた行動を繰り返す従業員のことをモンスター社員と呼びます。このモンスター社員を放っておくと同僚の士気を下げる他、対処方法を誤ると訴訟問題に発展し、企業がダメージを受けることもあります。
2.経歴詐称の実態
経歴詐称の社員を採用することは会社に悪い影響を与える可能性があります。経歴詐称は「採用に有利な経歴を詐称する」「採用に不利な経歴を隠す」というケースです。採用してもらいたいがために、悪意なく誇張してしまったり、隠してしまったりする場合もあるでしょう。例えば、学歴詐称は「高卒なのに大卒である」などと高学歴を詐称するだけでなく、「大卒なのに高卒である」などと偽る、いわゆる「逆学歴詐称」も学歴詐称とされる場合があります。逆学歴詐称は、高卒以下に限定されている求人に応募したいなどの理由によって行ってしまうケースが考えられます。
また、職歴を詐称するケースでは、どのような会社に勤務していたのか、どのような職務に従事していたか、何年勤務したかなどの職歴が、採否を決定するうえで重要な判断基準となります。職歴は、採用後の配属場所や職務内容、役職・職位、賃金などに影響することもあるため、それらの情報を自らの立場に有利になるよう詐称するケースがみられます。
犯罪歴を隠すことは最も重大な詐称にあたります。履歴書に賞罰欄があったり、面接で犯罪歴について質問されたりした際には、求職者は誠実に真実を申告することが必要なのは過去の判例からも明らかです(最高裁平成3年9月19日判決)。さらに犯罪歴以外は履歴書への明示が義務付けられていないことから反社会的勢力とのつながりや特定の宗教団体などとの繋がりを突き止めることは企業にとって大変に困難な課題と言えます。
3.リファレンスチェックとは
バックグラウンドチェックの手法のひとつである、リファレンスチェックとは、「採用候補者の働く姿」について、一緒に働いたことのある採用候補者の元上司や同僚から、書類選考や面接だけではわからない情報を取得することを言います。採用候補者の実績や在籍期間、人物像などの情報を第三者から得ることで、採用判断における判断材料を増やすことが主な目的です。管理職への昇進時や取締役就任などの経営幹部への登用の際、重要な経営判断として行われるケースも多く見られます。
リファレンスチェックを行う相手は、主に採用候補者の前職や現職の上司・同僚・部下です。採用候補者から了承を得た上で、企業もしくは外部の委託業者が、電話やメール、専用ツールなどを用いてヒアリングを行います。実施のタイミングは企業ごとに違いますが、内定の前後に採用判断の最終確認として行われることが多いです。一般的には、より多くの情報を取得するために、採用候補者の働きぶりや人物像をよく知る元上司・元同僚・元部下の2人以上に回答を依頼します。
リファレンスチェックは上記のように自社で独自に行うには知識や経験、体制面からも困難といえます。実施する際は、外部の専門調査会社を活用して実施することが一般的です。
バックグラウンドチェックの専門調査会社である㈱TMRでは独自の調査方法に加え、採用候補者に事前承諾書を手配したうえで、履歴書・職務経歴書などの応募者申告事項について踏み込んだ裏付けを行います。中でも犯罪に関する経歴詐称の調査では実際の犯罪歴に加えて、反社会的勢力や特定の組織とのつながりがないかどうかについて入念なチェックを行います。さらに、勤怠、退職理由等の確認を通して、素行不良、経歴詐称などのネガティブ情報がないかどうかを突き止め、客観的な判断材料を提供することで安心・安全な採用活動の実現が可能です。
取締役など重要なポストへ登用など指定事項について特に綿密なリファレンスチェックを行うサービスも提供しており、反社チェックも踏まえて行う役職者採用など重要な経営判断の材料として利用できます。
※転載元 株式会社TMR お役立ち情報「採用リスクを回避するバックグラウンドチェック(経歴調査)とは 」
プロフィール
株式会社TMRはビジネスにおけるあらゆるリスク対応を支援し、企業価値の向上を全力でサポートします。
・信用を第一に「誠意」「正確」「迅速」をモットーにご納得いただくまで親身にご説明いたします。
・マスコミや弁護士事務所、警察関連組織などへの調査協力も行っており、法令遵守で調査情報の秘密厳守、社会正義に即した調査を行います。
・ISO27001認証を取得しており、調査後の調査資料の廃棄に至るまで厳格に管理しています。
取引先や社員、株主などを対象に「反社会的勢力」との関係をチェックします。情報収集と収集した情報の蓄積を行い、独自でデータベースを構築し、情報利用についても熟知しているため、安心してお任せいただけます。
■信用調査
企業の与信調査(不動産や資産など)から採用時の個人 調査、その他、長年のノウハウを活用したきめの細かい各種信用調査を行います。
与信調査・不動産・資産・債権保全・信用調査・採用 入居者審査・身元調査・市場調査・各種マーケティングリサーチ・テナント調査・身元調査・訴訟関連・債権関連など
ISMS認証のノウハウを活用した情報セキュリティ対策支援やネット風評対策、ハラスメント対策などの企業のリスク対策のほか、盗聴対策などの個人向けの対策を含め、あらゆるリスク対策について対応可能です。
企業リスク対策(情報セキュリティ、情報漏洩等)・ネット風評対策・ハラスメント対策・各種相談窓口開設(コールセンター、内部告発等)・その他 盗聴対策、各種セミナー開催など
Webサイト:株式会社TMR
- 第44回 雇用リスクとは?【第1回 安全配慮義務の対策】
- 第43回 経営者リスクとは?
- 第42回 海外取引のリスク【第2回 海外取引におけるリスクマネジメント】
- 第41回 海外取引のリスク【第1回 海外取引における信用調査の重要性】
- 第40回 営業秘密の保護
- 第39回 業務上横領にはどう対応すべきか
- 第38回 企業のBCP対策【第2回 BCP対策の手順】
- 第37回 企業のBCP対策【第1回 BCP対策の状況】
- 第36回 企業不祥事の要因【第2回 自動車開発の不正認証取得事例から見る改善ポイント】
- 第35回 企業不祥事の要因【第1回 自動車関連企業の不正】
- 第34回 企業が行うべきリスクヘッジ【第4回 盗聴・盗撮から企業を守るためのリスクヘッジ】
- 第33回 企業が行うべきリスクヘッジ【第3回 情報漏えいのリスクヘッジ】
- 第32回 企業が行うべきリスクヘッジ【第2回 リスクヘッジの取り組み方】
- 第31回 企業が行うべきリスクヘッジ【第1回 リスクヘッジ能力の高い人材の確保と育成】
- 第30回 職場の心理的安全性
- 第29回 注意義務となっている反社チェック
- 第28回 投資先、出資先とのトラブル未然防止と発生後の対処
- 第27回 企業が行うべき反社チェックとは
- 第26回 企業におけるハラスメント 【第4回 企業間で発生するカスタマーハラスメント(カスハラ)とその対応】
- 第25回 企業におけるハラスメント【第3回 カスタマーハラスメントへの対応】
- 第24回 企業におけるハラスメント【第2回 パワーハラスメントの分類と事例】
- 第23回 企業におけるハラスメント【第1回パワーハラスメントがもたらす企業リスク】
- 第22回 企業のリスクマネジメントとして行う素行調査の有効性
- 第21回 反社チェックのポイント(採用編)
- 第20回 採用リスクを回避するバックグラウンドチェック(経歴調査)とは
- 第19回 個人情報との向き合い方【第2回 情報が流出する原因とリスクマネジメント】
- 第18回 個人情報との向き合い方【第1回 個人情報の背景と現在】
- 第17回 外部専門会社を活用した前職調査や身元調査で明らかになるネガティブ情報とは
- 第16回 資金調達における反社会的勢力の規制への対応について
- 第15回 倒産リスクのシグナルを読み取る必要性とポイント
- 第14回 顧客満足度を向上させるための相談窓口の設置
- 第13回 信用取引において必要不可欠な与信管理とは
- 第12回 オンライン面接へシフトする採用市場における調査専門会社の活用
- 第11回 採用時にネガティブ情報をつきとめるバックグラウンドチェック
- 第10回 企業の社会的責任として求められる、組織全体で行う反社対策
- 第9回 自社の内部統制は本当に機能していますか? 【第3回 内部統制の効果的な運用】
- 第8回 自社の内部統制は本当に機能していますか? 【第2回 内部統制の体制づくり】
- 第7回 自社の内部統制は本当に機能していますか? 【第1回 内部統制とは?】
- 第6回 不良債権リスクの高まりでより必要不可欠となる与信管理
- 第5回 コロナ禍の資金調達難に付け入る反社や黒社会の融資や買収の危険性
- 第4回 アリバイ会社との取引が懸念される場合の企業調査対策とは
- 第3回 採用調査で重要性が増しているリファレンスチェック
- 第2回 ビジネス取引において実施される信用調査とは
- 第1回 貸し倒れリスクを回避するための債権回収の対策