第41回
成功する人の時間管理10選
一般財団法人 立志財団 坂本 憲彦
質の高い時間管理は、仕事をする人、特に経営者にとって非常に大きな課題です。能力や環境に差があっても時間は誰にとっても平等で、これは絶対に覆されない事実です。
時間をいかに上手に使えるかは、これからのビジネス、人生を成功に導けるかを大きく左右します。ところが時間を無駄にしないように気を付けていても、どこか意図しないことに振り回されたり、予定していない行動をとってしまったりしますよね。
今回は、成功者が実践している時間管理について意識の持ち方・実践方法を10に分けて紹介します。
さらに時間をうまく使いたい方、時間を無駄にしてしまっていると改善したい方はぜひご覧ください。
時間管理=命の管理
時間管理とは、つまり自分の命の管理と同じ意味です。「重すぎでは?」と思った方も考えてみてください。自分の時間とは生まれてきてから死ぬまでの時間ですから、人生の長さとイコールですよね。
シンプルに考えてみれば、時間を管理するのは命、自分の人生を管理しているのと同じなのです。時間を無駄にしてしまうのは、そのまま命を無駄に削っていると言えます。
「時間に対する意識を高く持つ」、と良く簡単に言われますが、成功している方はそれよりもずっと深い意味を捉えて時間と向き合っています。
時間管理のテクニックも大切ですが、まずは時間に対する重みから見直してみましょう。時間に対する価値観を重くすることで行動も変わってきますので、前提として抑えておきましょう。
時間を使った分だけ進歩がある
トレードオフという言葉の通り、何かを得ようとすれば何かを犠牲にしなければならないのは事実です。時間も同じで、ものごとの成果や進捗を得ようとすれば、それだけの時間を投資する必要があります。これは当たり前のようで、なかなか実践できていないように思います。
あなたにも、やるべきことは決まっているはずなのに「時間が確保できたら」とか、「今日はこっちの気分だから」とか先延ばしにしてしまうことがありませんか?人間は、実際に物事にぶつかってみることで上達したり、慣れていったりするものです。後からちゃんと時間を確保したとしても、使わなかった時間は戻ってきません。
子どもの頃、夏休みの宿題をギリギリになって始めたのと同じように、せっぱつまって集中してもいい仕事ができるわけではありません。日頃から何に時間を投資すべきかを判断して、費やす時間を積み上げていくことで仕事は進み、スキルは上達します。
もちろん効率化を考えることは大事ですが、それは時間を使う中での方法の話であって、まずは時間を充てなければ始まりません。耳にタコのような話ですが、コツコツと時間を積み上げるのが、成功への確かな王道と言えるのです。
もう一度優先事項を洗い出して1日、1週間、1ヶ月にどれだけの時間を充てられているのかを確認してみましょう。もしかすると億劫な気持ちになるかもしれませんが、時間を積み重ねる重要性はあの名著でも示唆されています。次の章で解説していますので、ぜひご覧ください。
緊急ではないが重要なことの時間を確保する
「7つの習慣」の時間管理のマトリックス
「7つの習慣」登場する「時間管理のマトリックス」をご存知でしょうか?時間とは重要度と緊急度を軸に次の4つの領域に分けられます。
・第一領域(問題解決の領域):緊急度が高く重要度も高い事項
・第二領域(質の高い領域):緊急度が低く重要度が高い事項
・第三領域(見せかけの領域):緊急度が高く重要度は低い事項
・第四領域(無駄な領域):緊急度が低く重要度も低い事項
もちろん最も優先すべきは緊急度も重要度も高い第一領域の事項ですが、ここで振り返って欲しいのは第二領域=「緊急ではないが重要な事項」です。
これは、学習や人間関係づくり、運動や健康、自己啓発に向けた投資を指します。今すぐ成果があるわけではありませんが、質を高め将来的に価値を発揮するものです。日頃から研鑽や関係づくりを心がけていれば、長期的に成功できるということです。
前の章で、「時間を使った分だけ進歩がある」と解説しました。あなたが軸足を置くビジネスや価値観を伸ばしていくためには、それについての時間確保をしなくてはなりません。
しかし、ビジネスでもプライベートでも予期せぬ問題が起こり、緊急に対処しなければならない状況が発生します。
目の前の問題対応に追われ、ついつい将来への投資が後回しになってしまうのです。なので、第二領域の事項の時間管理を強化することをオススメします。
インプットや自己啓発もスケジュールに入れる
難しい問題ではなく、あらかじめスケジュールに組み込んでおけば良いのです。「この日のこの時間は勉強に充てる」「○月×日 19:00 〜の読書」と言った具合です。それだけでも意識は向上し投資する時間も増えていくでしょう。
本当にやりたいことの将来的投資を後回しにしていては、いつまで経っても目先の問題に振り回されて本当にやりたいことが実現しません。「空いた時間にやろう」という気持ちだけでは、目先の仕事を終えた疲れや満足感に流されてしまいがちです。
自分のやりたいことで成功している人は、緊急度は高くなくても自分にとって重要度の高い第二領域に対する時間を計画的に確保しています。
もしあなたが、長期的に成功したい、自分のやりたいことを伸ばしたいを悩んでいるのであれば、第二領域に充てる時間を先にスケジューリングする習慣を始めてみましょう。
時間管理アプリで一元化する
様々なツール、アプリで時間管理ができる今、何を活用したら良いのでしょうか?オススメはGoogleカレンダーです。
手帳に手書きする方が馴染んでいる方もいらっしゃると思いますし、手帳が悪いとは言いません。自分が使いやすいものを見つけるのが一番ですが、ツール選びの基準にするポイントがあります。それは、「一元化」できるものです。
すべてのアポイント、タスクを一つのツールに集約するのに一番使いやすいものを選ぶのがポイントです。仕事のアポイントはこっち、プライベートの予定はこっちという具合では、見落としがあったりダブルブッキングをしたりしかねません。
ではなぜ、Googleカレンダー、スマホアプリの方が良いのでしょう。それは多くの人にとってスマホを見ている時間が長いからです。自然と接点を持ってしまうものに予定を入れている方が、簡単に書き込んだり確認したりする習慣が作れますよね。
手帳に書き込むのが既に習慣になっているのであればそれでも構いません。生活動線の上でより触れる機会が多いものに、アポイントも勉強の時間もすべて入れて管理しましょう。
そうすれば、緊急の予定も見落とすことなく、重要度の高い自分の時間も捻出できるようになります。
タイムブロッキングで隙間時間をなくす
予定を組む上でのキーワードの一つに「タイムブロッキング」があります。タイムブロッキングとは、他の予定が入らないようにスケジュールを組むことです。
先程ご説明した、第二領域(勉強や運動などの自己啓発)の予定も書き込んでしまうのもタイムブロッキングの一つです。タイムブロッキングが重要なのは単に時間の確保のためだけではありません。「意識を持続させる役割」があるためです。
例えば、アポイントが2件入っていたとします。1件目は朝の10時からですが、2軒目はお昼の15時からです。どうでしょうか、微妙に時間が空いています。オフィスに戻るにしても中途半端ですし、時間と作業場を確保するのにもカフェやファミレス、コワーキングスペースを探す手間が発生します。
場所探しや移動に時間が費やされるのもそうですが、中途半端に時間が空いてしまうと集中の意識が途切れてしまいます。1件目のアポイントでかかった商談のエンジンが薄れないうちに次のアポイントに向かう方が勢いに乗れますよね。もちろんカツカツで遅刻しそうになっては落ち着いて話せませんし、何よりお客様に迷惑になってしまいます。
間が空きすぎないようにタイムブロッキングして意識を持続させるよう注意してアポイントを入れましょう。オススメは、アポイントは1日アポイントの予定だけにしてしまうことです。その方が、1日を通して商談のテンションのまま過ごすことができます。
コロナ禍の影響で、商談にリモートを活用するシーンが増えていますが、移動がなくても意識を持続する意味を考えれば、リモートでも「アポの日」として作ってしまう方が良いでしょう。
タイムブロッキングを心がけて無駄な空き時間のない、意識を高く保てるスケジュールを工夫しましょう。
全体最適で根本的な問題解決にあたる
優先順位をつけて時間管理をするためには「全体最適」で考えるのが有効です。「全体最適」とは何かご存知でしょうか?
全体最適は場当たり的に問題を解決するのではなく、プロジェクト全体において生産性・効率性が向上させる問題対処を言います。
以下のサイトにわかりやすく解説されています。
↓↓↓
https://bizhint.jp/keyword/117006
あなたが時間を割こうとしていることの多くは、かかわっているビジネス全体に大きな影響を持つ、中心的なものでしょうか。
もしそうではない外側の問題に時間を費やしているのであれば、優先順位を見直すことが必要かもしれません。
全体最適で根本的な問題処理を見つけていくことが大切ですが、かと言って発生した仕事をすべて放っておいて良いわけでもありませんよね。
そんな時の対処方法を次の章で解説していきます。
自分でやるべき仕事に特化する
苦手なことは人に任せる
前の章で「全体最適」の考え方をご紹介しましたが、重要な問題に注力して時間を使うためには、苦手なことは人に任せてしまうマインドを持ちましょう。
あらゆることを自分で解決する必要はありません。それこそ、いくら時間があっても足りない状態になってしまいます。
特に経営者の人であれば、お金の管理や事務処理が苦手であるのに無理に経理業務を自分でする必要はありません。
経理を雇うか、会計士に委託して空いた時間を自分にしかできない仕事に充てるべきです。
人件費や委託費がかかるとしても、全体最適となる重要な問題に時間を充て、結果的にビジネスの生産性があがれば投資以上の価値があるはずです。
つまり、「自分でする必要のない仕事をしない」ことが全体最適の一つの考え方とも言えますね。
いかに予定が入っていない時間を作るか
自分のやるべき仕事に特化するためには「予定が入っていない時間を作る」マインドが大切です。
会社やチーム、プロジェクトの意思決定をするのに雑務に振り回されていては全体を冷静に見て判断する時間がなくなってしまいます。
タイムブロッキングでスキマを埋めるお話をしましたが、とにかく忙しくアポイントやタスクを入れれば良いわけではないのです。その前に、それが必要な仕事がどうかの判断が入るということです。
無駄にスキマを埋めようとするのではなく、ビジネスの意思決定のために必要な状況整理や、計画づくりの時間を意図してスケジューリングしましょう。
自分がやらなくて良い予定を削り、全体最適でビジネスを回していくため、「予定が入っていない時間」にも着目するのが成功のポイントです。
ツールや仕事場への投資を惜しまない
「使いやすさ」が大きな時間の差を生む
あなたは普段使っているツールにどれだけ気を使っていますか?例えばパソコンやペン、オフィスでのデスク周りの棚でもいいでしょう。
ツールや場所への投資が時間管理と関係があるのか、と思うかもしれませんが、非常に重要なポイントです。
あなたが腰を据えて作業をしている時の環境が、使い勝手の悪い状態であればどうでしょう。パソコンの動作やペンやノートの使いやすさの影響は一回の作業で数秒、数分の違いかもしれません。しかし、日常的に使うツールであるからこそ、その数秒、数分の積み重ねが膨大な時間の無駄になります。
デスクや椅子といったハード面も重要です。姿勢がなんとなく悪いとかしっくりこないと思ったら今すぐ改善しましょう。
小さなストレスに敏感になる
昨今、コロナ禍によってリモートワークのシーンが増えたことを考えれば、自宅での作業場の工夫は仕事の生産性に大きく関わると言えます。
大きな仕事に直接関係ないちょっとしたことと思うかもしれませんが、成功者は自分の使うものに大きなこだわりを持って選びます。
書きやすいボールペン、とりやすいノート、スペックの高いパソコン、勝手のいいアプリ、座りやすい椅子といった身近なものは想像以上に時間管理と結びついています。
これを機に、「使いにくい」「居心地が悪い」というような「小さなストレス」に敏感になって、ツール選びや場所作りにこだわりを持つことをオススメします。
あなたの作業場やそれに伴うツールは徹底して使いやすいものに変えていきましょう。
PCスキルはあなどれない
ツールや場所による時間の効率化と同じ理由で、パソコンのスキルは高めておいた方がいいと言えます。
今の時代、ビジネスのデータはパソコンで管理するのが当たり前になっています。電子化が進み、これまで紙で管理されてきた契約書類などもサーバーで管理して紛失防止や探す時間の短縮が謳われています。
IT化、ドキュメント管理の電子化が主流ということは、それに伴うPCスキルのスピードも求められるのが必然なのです。
細かいことですが、ショートカットキーの知識ひとつをとっても使えるかどうかで作業効率は結果的に大きく差が開くのは言うまでもありません。
電子化に伴って次々と新しいソフトが登場し、慣れないものに困惑する気持ちもわかります。ですが、組織やプロジェクト全体の成功を考えたときに、それを使いこなせるかどうかは時間の効率化の面で大きく影響します。
使い慣れたものを大切にするのもひとつの方法ではありますが、ビジネスやプロジェクト全体の生産性や成果を上げるのを目的に考えましょう。
タイピングスピードを始め、エクセルやワード、パワーポイントの知識を上げること。さらに新しく導入した管理ソフトを覚える労力をいとわない方が、結果的に時間を生み出すことにつながります。
重要な仕事以外は優先事項を下げる、苦手なことは人に任せるとお伝えしましたが、PCスキルはあらゆるタスクにおいて付いて回る問題です。
ぜひ、自主学習や組織での勉強会を面倒くさがらずに行っていきましょう。
家族との時間はスケジュールする
最後にお伝えしたい時間管理のポイントは「家族との時間もスケジュールに入れる」ことです。家庭環境が上手くいっていないと、ビジネスも上手く回らない悪循環に陥ってしまいます。
ですから、家族との関係性を大切にするため、重要な予定としてカレンダーに仕事と同じように記入しておくようにしましょう。「時間管理のマトリックス」でお話しした第二領域と同じ理由ですね。
「時間ができたら家族との時間に使おう」では、忙しさと疲れに負けて家族との時間は満足にやってきません。もちろん、疲れているから休日はゆっくりしたい気持ちもわかります。
それでも、この日は「家族と出かける」「旅行に行く」といった計画を定期的にとってコミュニケーションをとるようにした方が、結果的に幸せになります。ビジネスだけを頑張っても、家庭が楽しい場所でないのなら休まる場所がありませんよね。
家族との時間を作ることも重要事項であり、成功するための時間管理の一環です。ぜひ、取り入れてみてください。
まとめ
以上、成功する人の時間管理を10個にわけてご紹介しました。時間を割くべきものを選ぶポイントとしては、
①根本的な問題解決につながる仕事の優先(全体最適)
②将来的な成功のための時間の確保(緊急ではないが重要なこと)
③日常的に接するツールや場所への投資(道具選びやPCスキル)
にわけられます。成功する人は、目先の問題だけに振り回されるような時間管理をしていません。とにかく無駄なく予定を詰め込むことに意識が剥きがちですが、本当の時間管理は、先のことも見通した無駄のない割当てを言います。
もし、今の時間管理に課題を感じていることがあるのなら、今回ご紹介した内容でピンときたものから心がけて実践してみてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
あなたにとって、ビジネス成功の一助となれば幸いです。
プロフィール
一般財団法人 立志財団
理事長、株式会社ナレッジアクション代表取締役 坂本 憲彦
起業家教育の専門家。
1975年、和歌山県生まれ。
一般財団法人 立志財団 理事長、株式会社ナレッジアクション代表取締役。
下関市立大学を卒業後、西日本シティ銀行に入行。6年間、法人・個人向けの融資や営業を担当する。30歳で独立し、ビジネススクール、速読講座、飲食店、貸会議室などを立ち上げ年商5億円まで成長させる。また、10年以上にわたり、1万人以上の起業家の指導を続けている。
自社開催の起業教育セミナーは500回以上開催し、延べ1万人以上が参加。富士ゼロックスやメットライフ生命、商工会議所、倫理法人会などの法人向けにもセミナーを開催しており、パソナ創業者南部靖之氏との講演実績もある。
「すべての人を真に導く」を真の使命として志ある起業家の育成に全力をかけて邁進している。起業家育成の活動の一環として2017年9月、一般財団法人立志財団を設立。2017年12月には実務教育出版より書籍『6つの不安がなくなればあなたの起業は絶対成功する』を出版し、1.1万部のベストセラーとなる。
Webサイト:一般財団法人 立志財団
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