第43回
20年で1万人の起業家を見て分かった成功の結論
一般財団法人 立志財団 坂本 憲彦
今回は、これまで起業家・経営者の指導をしてきた中でわかった起業後に長く成功し続けるために分かったことをお伝えします。私が銀行員時代を含め、起業家教育のプロとして20年以上にわたって続けてきた現在の結論です。
その1つが変化です。ビジネスを取り巻く環境というのは時代の流れによって大きく変わっていきますから、それに合わせていかに変化していくということですね。
実は、それよりももっと大切なことがあるのですが、まずはそうした時代の流れの変化にどんなものがあるのかをお伝えできればと思います。
先日、SNSで solopreneur という言葉がよく検索されているという発信を見かけました。solo と entrepreneur がくっついた用語です。
新たに仲間を募って起業したり、仲間同士で起業したりという形ではなく、一人で起業するということでしょう。一人起業家とか個人起業家といっていいと思います。
といっても、そうした話は今に始まったわけでははなく、もう10年以上前から言われていると思います。まったく新しい話題というわけではありませんね。
ただ、新型コロナウイルスの影響で世の中がだいぶ変わりましたから、改めてまたそういう流れになっているという読み取り方はできると思います。
マーケティングも変化
また、いわゆる「DRM」というマーケティング手法もここ最近で変わりつつあります。DRMというのは、
Direct Response Marketing
の略で、インターネットがまだなかった通販の時代から続いています。簡単に言うと、 広告を出すなどして商品・サービスに関心のある人を集めたうえで、見込みのある人たちに商品を販売するやり方です。
例えば、無料お試しや無料プレゼントだったり格安で体験だったりをオファーして、それらに反応した人たちに対して商品を紹介していくイメージです。
今は同じDRMという用語でも
Direct Relationship Marketing
という関係性を重視した方法も注目されるようになっています。
自分の商品・サービスに興味のある人を集めて販売することを第一にしたのが従来のDRMだとすると、新しいDRMは売り手と買い手との関係性を重視します。商品・サービスだけでなく、提供する会社や人にも関心をもってもらって関係性を築いたうえで、 販売していくイメージです。
これも前から同じようなことは言われてきましたから、今に始まった話ではありません。ですが、過去から今に至るまでの時代の流れを経たうえで、ここ最近の変化として今、また新たに注目されてきているということです。
サブスクリプションのように昔からあるものが流行り出して定着することも
数年前から「サブスクリプション」という用語を見かけるようになりました。なんでもかんでもサブスクリプションにするような流れもあったように思います。
「サブスクリプション」とはなんでしょうか? 要するに継続購入のことです。ですから、今に始まったビジネスモデルではありません。数十年前からある仕組みなわけで「何を今さら?」という感覚の人もいたかもしれまん。
ただ、大流行といってもいいような広がりを見せて、以前よりもだいぶ定着してきた感があります。
もちろん、流行に乗ったものの頓挫した事業もたくさんあるとは思いますが、サブスクリプションという言葉が出てくる前よりもビジネス環境が変わったことは事実でしょう。
マイクロソフトのOfficeもサブスクリプションのプランが登場し、今や当たり前になっていますし、Spotifyなどの音楽聴き放題やNetflixなどの動画見放題も契約者がどんどん増えています。そうしたソフト・アプリなどに限らず、今や車のタイヤですらサブスクリプションのプランがあります。
本質的には以前と同じではあるんですが、時代の流れが変わったことによってビジネスの環境も変わったということでしょう。
ですから、
「こんなのは前と同じだよ」
などとたかをくくっていると、チャンスや時代に乗り遅れるということもあります。
完成した商品ではなく完成途中のプロセスが売れる時代
時代の流れという点で面白いのが完成品ではなく、閑静途中のプロセスが売れるという話です。
一年ほど前にネット上では「けんすう」という名前で活動されている起業家の古川健介さんがnoteで「プロセスエコノミー」という言葉を使いました。2021年7月には「プロセスエコノミー」というタイトルの本も出版されました。
プロセスエコノミーとは、簡単に言うと、
「商品やサービスを生み出すための『プロセス』そのものに値段がついて売れる」
ということです。
ビジネスで収益を上げようと思ったら商品やサービスを販売することが普通でしょう。例えば、漫画家であれば、描いた漫画に対してお金を払ってもらって収益が発生するわけです。
それが漫画家が漫画を描いている過程を見せて漫画を売る前から収益が発生する、そんな現象が起こっています。有名な漫画家であれば確かに分かるような気がしますが、無名であっても、です。
ビジネスの視点から見れば、商品提供の方法、収益を生み出す選択肢が増えているとも言えますね。実際、今年に入ってから00:00 studio というサービスが立ち上がっていて、プロセスに課金できるような仕組みも生まれています。
もちろん、すべてがプロセスエコノミーのような形になるということはないでしょうし、まだまだ主流でもないと思います。ただ、人々の価値観の変化などを知っているかどうかでとれる事業の選択肢の幅は変わりますから、そうした変化に対応していく起業家はうまくいく可能性があります。
ただ、流行や時代の流れに乗るからうまくいく、というわけではないんです。
流行に乗ってそのまま継続的にうまくいく人もいるんですが、反対に流行に乗ったものの、流行が廃れると同時に事業も……というケースはよくあります。
起業成功の結論
時代の変化や流れに乗ることは事業を成功させるにあたって重要な要素ですが、20年にわたって起業家の成功や失敗を見ているともっと大切なことがあることが分かります。
流れに乗ったつもりが流されていた……。そんなことになってしまっているケースもよく見かけます。そうならないようにするためにはどうしたらいいのか? それは「志」を持つことです。
自分が本当にやりたいと思えることをビジネスとして実現させ、どういう想いなのか、どんなビジョンがあるのか、何を大切にしているのか、そうしたことを明確にしている会社や人は強いです。
時代の流れからしても、そうしたその人や組織に根ざした部分がより問われるようになるでしょうから。今の時代の流れにも合います。この会社・人に頼みたい、この会社・人から買いたいという関係性が生まれやすくなるでしょう。
単に他より安いとか、たまたま近所とか、他では扱っていないからここで買うとか、そういうビジネスとは一線を画した形で強いビジネスができるようになります。業界にたくさん競合がいたとしても自分と全く同じ会社・人間はいませんから競合がいても選ばれやすくなります。
ただ、志を持つことが重要と言われても、自分や自社はどうしたらいいのか……。具体的に何をしたらいいか分からない、志と言えるものが見つからない、そんな会社や起業家の方はも多いものです。
そこで、そうした悩みを持つ方のたみ、何をすればいいのかを15分ほどでまとめた動画を用意しました。
これまで私が銀行員時代を含め、20年以上にわたって起業家や経営者の方々を指導させていただいてきた経験からまとめたものです。
動画は私のLINE公式アカウントから配布していますので、ぜひ見てみてください。動画は無料でご覧いただけます。
プロフィール
一般財団法人 立志財団
理事長、株式会社ナレッジアクション代表取締役 坂本 憲彦
起業家教育の専門家。
1975年、和歌山県生まれ。
一般財団法人 立志財団 理事長、株式会社ナレッジアクション代表取締役。
下関市立大学を卒業後、西日本シティ銀行に入行。6年間、法人・個人向けの融資や営業を担当する。30歳で独立し、ビジネススクール、速読講座、飲食店、貸会議室などを立ち上げ年商5億円まで成長させる。また、10年以上にわたり、1万人以上の起業家の指導を続けている。
自社開催の起業教育セミナーは500回以上開催し、延べ1万人以上が参加。富士ゼロックスやメットライフ生命、商工会議所、倫理法人会などの法人向けにもセミナーを開催しており、パソナ創業者南部靖之氏との講演実績もある。
「すべての人を真に導く」を真の使命として志ある起業家の育成に全力をかけて邁進している。起業家育成の活動の一環として2017年9月、一般財団法人立志財団を設立。2017年12月には実務教育出版より書籍『6つの不安がなくなればあなたの起業は絶対成功する』を出版し、1.1万部のベストセラーとなる。
Webサイト:一般財団法人 立志財団
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