第5回
ビジネスを失敗させない「お客様像」の考え方
一般財団法人 立志財団 坂本 憲彦
※本コラムは、立志財団の森川応樹氏によるインタビュー形式にて掲載しております。
森川:本日は前回に引き続きまして、第2章のコアコンセプトの所についてまた詳しくお尋ねしたいと思います。
前回はコアコンセプトの概論的なものをお話しいただきましたので、今回はそのコアコンセプトの中身について詳しく教えていただきたいと思います。
コアコンセプトは、「誰に」と「何を」と「USP」の3つの要素で構成されているということですが、今回はその中の構成要素の一つ「誰に」ということについて教えてください。
商品を売る上で、誰をターゲットにするのかは非常に大事
森川:まず、コアコンセプトにおける「誰に」というのは一体どういうことなのか、ということについて教えていただけますか。
坂本:「誰に」というのは「誰に売るのか」ということなので、ターゲットになります。ビジネス考える上で、誰向けに売っていくのかというのは、非常に大事なところなんですよね。ターゲットが変わると、同じ商品であっても売り行きが変わったり、反応が変わったりするので、この「誰に」をちゃんと定めるというのは、ビジネスを作っていく上では、本当に非常に大事な要素になります。
森川:そういう話をすると、「いや、そんなことわかってるよ」とか、「ちゃんと自分の中でもターゲットを見定めていて、こういう市場に売りたいっていうのはわかってるんだよ」みたいな感じのことを思う人が多そうなイメージがありますが、実際いかがでしょうか。
坂本:営業やマーケティングなどをやられている方は、そこが非常に見えているかなと思いますが、これから起業したいという方は、特に営業経験などがないと、誰に売りたいというと、究極言ってしまうと「みんなに売りたい」のようになってしまい、全然定まりません。それから「ターゲット定めてます」と言っても、なんとなくこの商品を欲しい人とか、なんとなく60代高齢者とかという形で、具体的にどういう人なのかがイメージできていないという場合がすごく多いんですね。
具体的にイメージできるターゲットを設定する
坂本:マーケティングでは、よくペルソナとか言ったりします。
本当に理想のお客さんを一人ターゲットを定めて、それは自分の知ってる人でもいいし、知ってるお客さんの融合みたいなものでもいいです 自分にとって一番理想的なお客様がどういう人なのか、どういう趣味嗜好を持っているのか、家族構成、性別、職業、年収、それに対してどう悩んでるのか、を具体的に設定して、その人向けに販売する戦略を考えていくということが非常に大事です。
森川:お客様をまんべんなく集めるのではなくて、「誰か」と絞るのは非常に大事だということはわかりましたが、その絞り方のコツとか絞る時に大切な気を付けるポイントなどはありますか。
坂本:一般的には、市場軸から考えたらどこが一番売上を取れるか、というところから考えるのもひとつです。
しかし、起業したい方の話をいろいろ聞いていると、そうやって市場軸だけで考えてると絞り切れない人も多いな、というのが実状ですね。。
理想のお客様像① 過去の自分
坂本:僕はよく、この「誰に」を絞っていく上で、理想のお客さんが2ついるなと思うんですけれど、1人はやっぱり過去の自分ですね。
自分がそのビジネスをやってるということは、過去の自分がそこで悩んだり困ったり苦しんだりしたので、それを解消したいからその商品を選択しているということがすごく多いんです。
私の場合だと起業塾をやっていますけれども、私自身がずっと起業のやり方がわからなかった、起業したいなと思ってもどこに行って勉強したらいいかもわからないし、誰が教えてくれるかもわからない、という経験があったので、そういう人が自分のやりたいことを見つけて、やっていける起業塾を作りたいと思って始めました。
ですから、やっぱり過去の自分が大きなテーマになるかなと思います。
理想のお客様像② 両親
坂本:さらに過去の自分を掘り下げていくと、理想の「誰に」が自分の両親に行きつくというパターンもけっこうあります。
森川:両親ですか。
坂本:はい。要するに誰を助けたいですかということです。助けるのが表面的な助けたいじゃなくて、ビジネスで本当に力が入るとやっぱり、魂レベルでこの人を助けたいなって思うかどうかがすごく大事なんですね。
そうなったときに、過去の自分を助けたいというのももちろんありますし、それをより掘り下げていくと、自分の両親が出てくる場合もすごくあります。
自分の親が昔苦しんでいたとか、困っていたからそれを助けてあげたいとか、そういった子供の頃の思いみたいなものもありますね。
私の生徒さんで料理教室やってる方は、お母さんが病気をしていて、子供のころから体調が悪かったんです。お母さんがいつかいなくなっちゃうんじゃないか、という不安があって、お母さん助けたいという思いがずっとあったそうです。大人になって、お母さんがまた病気したときに、「ああ自分は料理という食でお母さんを助けたいという思いで料理教室やってる」気づく先生もいらっしゃいます。
なので、過去の自分や自分の両親が、抽象度を上げて考えていくと自分の本当の魂の顧客というものになってくるのかなと思います。
自分軸と市場軸とが交わるところがビジネスたるべき
森川:先生の本の第1章で、起業家がこれから目指すべきビジネスは、自分軸と市場軸が交わるところがビジネスたるべきだ、というようなことが書かれていました。一般的にビジネスだからお金や利益が絶対大事で、それはなければいけないものですが、そこに使命感というか、あたかも弁護士先生やお医者様が熱い志を持って苦しくても戦うみたいな、そういうものがどのビジネスパーソンにも必要だと思います。今の料理教室の方も、それに近い使命感みたいなものでビジネスをされているのではないでしょうか。
コアコンセプトの「誰に」一つとっても、自分軸と市場軸が交わってないと、利益と使命感が車の両輪のようにはなかなかならないのかなと思いました。
坂本:はい、そうですね。やっぱりそこがかみ合ってるかどうかってすごく大事です。
市場軸だけで進める方はそれでいいと思います。いかに儲かるかというところだけで動くとなると、特に起業して自分で動く場合はなかなかしんどかったりする場合もあるので、もしそこがしんどい場合は自分軸から考えるっていうのも非常に大事かなと思いますね。
森川:両方がそろうと熱く幸せになれるビジネスができるのかな、と思いました。
坂本:そうですね。
森川:今回はコアコンセプトを構成する3つの要素の中の一つ「誰に」について詳しく教えていただきました。
本日はありがとうございました。
坂本:はい、ありがとうございました。
Podcastの音声はこちらよりご視聴ください
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プロフィール
一般財団法人 立志財団
理事長、株式会社ナレッジアクション代表取締役 坂本 憲彦
起業家教育の専門家。
1975年、和歌山県生まれ。
一般財団法人 立志財団 理事長、株式会社ナレッジアクション代表取締役。
下関市立大学を卒業後、西日本シティ銀行に入行。6年間、法人・個人向けの融資や営業を担当する。30歳で独立し、ビジネススクール、速読講座、飲食店、貸会議室などを立ち上げ年商5億円まで成長させる。また、10年以上にわたり、1万人以上の起業家の指導を続けている。
自社開催の起業教育セミナーは500回以上開催し、延べ1万人以上が参加。富士ゼロックスやメットライフ生命、商工会議所、倫理法人会などの法人向けにもセミナーを開催しており、パソナ創業者南部靖之氏との講演実績もある。
「すべての人を真に導く」を真の使命として志ある起業家の育成に全力をかけて邁進している。起業家育成の活動の一環として2017年9月、一般財団法人立志財団を設立。2017年12月には実務教育出版より書籍『6つの不安がなくなればあなたの起業は絶対成功する』を出版し、1.1万部のベストセラーとなる。
Webサイト:一般財団法人 立志財団
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