第45回
台風19号で被災した中小企業への支援
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫
令和元年9月から10月にわたり日本に上陸・接近した台風を原因として関東を中心にした日本の広い地域で大規模かつ深刻な災害が発生しました。被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
被災された皆さんは、今、復興に向けて店舗や工場の整備等に尽力されていると思います。お体を大切にしながら、頑張ってください。一方で、資金繰りにも気を配って下さい。政府の支援策を頭に入れておくか否かで、資金調達のタイミング等に違いが出る可能性があります。見当違いの窓口を叩いても、もちろん正しい窓口を教えてくれますが、その分、時間を浪費してしまいます。
今回は、台風第19号で被災した中小企業等の皆さんへの支援として政府が発表した策(「災害救助法」による支援)についてお知らせします。今回は中小企業庁からの発表をメインにお伝えし、次回以降、各内容について筆者が得た詳細情報をご説明します。なお、ここに記載したURLもできるだけ参照して、政府の発表内容に一度は目を通すようお勧めします(以下に示す中小企業庁サイトURLは10/30時点のものです)。
なお本号は、10月20日に発行したホワイトペパー号外資料のリバイス版となります。この時との最も大きな違いは災害救助法適用地域に千葉県が追加されたことで、その他、中小企業庁サイトURLがアップデートされています。
令和元年台風第19号に伴う災害に関して被災中小企業・小規模事業者対策を行います
https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010.html
災害救助法適用地域一覧
岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県(被災地域)。なお、災害救助法の適用地域は市町村単位で指定されているので、ご自身の事業所の指定については以下でチェックして下さい。
https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010-11.pdf
特別相談窓口の設置
被災地域の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会及びよろず支援拠点、並びに全国商店街振興組合連合会、中小企業基盤整備機構東北本部・関東本部及び東北経済産業局・関東経済産業局に特別相談窓口を設置
https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191029010-12.pdf
災害復旧貸付の実施
今般の災害により被害を受けた中小企業・小規模事業者を対象に、被災地域の日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫が災害復旧貸付を実施
https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010-2.pdf
セーフティネット保証4号の適用
被災地域の災害救助法が適用された各市区町村において、今般の災害の影響により売上高等が減少している中小企業・小規模事業者を対象に、信用保証協会が一般保証とは別枠の限度額で融資額の100%を保証するセーフティネット保証4号を適用
地域の指定は近日中に官報にて告示予定。信用保証協会においてセーフティネット保証4号の事前相談を開始
https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010-3.pdf
既往債務の返済条件緩和等の対応
被災地域の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫及び信用保証協会に対して、返済猶予等の既往債務の条件変更、貸出手続きの迅速化及び担保徴求の弾力化などについて、今般の災害により被害を受けた中小企業・小規模事業者の実情に応じて対応するよう要請
小規模企業共済災害時貸付の適用
被災地域の災害救助法が適用された各市区町村において被害を受けた小規模企業共済契約者に対し、中小企業基盤整備機構が原則として即日で低利で融資を行う災害時貸付を適用
https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015010/20191015010-4.pdf
支援措置には直接被害だけでなく売上減少などの間接被害を対象とするものもありますから、何らかの被害を受けた方は早めに特別相談窓口に相談をして下さい。
激甚災害指定による「災害関係保証」利用に必要となる「罹災証明書」の入手では、被害状況を的確に表す写真がポイントとなるようです。常葉大学の社会災害研究センターから「建物被害調査のトリセツ-かたづける前に記録を残そう-」が提供されているので活用してください。
http://sdrc.sz.tokoha-u.ac.jp/torisetsu/
<本コラムの印刷版を用意しています>
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。
なお、冒頭の写真は写真ACからカメラ兄さんのご提供によるものです。カメラ兄さん、どうもありがとうございました。
プロフィール
StrateCutions
代表 落藤 伸夫
1985年中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
約30年間の在職中、中小企業信用保険審査部門(倒産審査マン)、保険業務部門(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定、事業再生案件審査)、総合研究所(企業研究・経済調査)、システム部門(ホストコンピューター運用・活用企画)、事業企画部門(組織改革)等を歴任。その間、2つの信用保証協会に出向し、保証審査業務にも従事(保証審査マン)。
1999年 中小企業診断士登録。企業経営者としっかりと向き合うと共に、現場に入り込んで強みや弱みを見つける眼を養う。 2008年 Bond-BBT MBA-BBT MBA課程修了。企業経営者の経営方針や企業の事業状況について同業他社や事業環境・トレンドなどと対比して適切に評価すると共に、企業にマッチし力強く成果をあげていく経営戦略やマネジメント策を考案・実施するノウハウを会得する。 2014年 約30年勤めた日本政策金融公庫を退職、中小企業診断士として独立する。在職期間中に18,000を超える倒産案件を審査してきた経験から「もう倒産企業はいらない」という強い想いを持ち、 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を中心した企業顧問などの支援を行う。
2016年 資金調達支援事業を開始。当初は「安易な借入は企業倒産の近道」と考えて資金調達支援は敬遠していたが、資金調達する瞬間こそ事業改善へのエネルギーが最大になっていることに気付き、前向きに努力する中小企業の資金調達支援を開始する。日本政策金融公庫で政策研究・制度設計(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定)にも携わった経験から、政策をうまく活用した事業改善支援を得意とする。既に「事業性評価融資」を金融機関に提案する資金調達支援にも成功している。
Webサイト:StrateCutions
- 第49回 期待によるモチベート
- 第48回 「褒める」はモチベート策になるか?
- 第47回 モチベーション策を考える
- 第46回 年末にモチベーションを維持する
- 第45回 台風19号で被災した中小企業への支援
- 第44回 理解力を高める唯一の方法
- 第43回 理解力低下の破壊力
- 第42回 こんな会議になっていませんか?
- 第41回 理解力について職場の「あるある」
- 第40回 上級マネジメント・チェックリスト
- 第39回 吉本興業に必要な上級マネジメント
- 第38回 吉本興業事件の真の原因は何か?
- 第37回 顧客かつ対戦相手として研修生と向き合う
- 第36回 研修の前からスタートする
- 第35回 受講生と足並みを揃える
- 第34回 5次元社会で活躍が期待される人材像
- 第33回 今、存在しない人材の育成
- 第32回 どんな人材を育てようとしているか
- 第31回 新人研修でカルサバから脱皮する
- 第30回 カルサバ人材開発計画が危険な理由
- 第29回 カルサバ人材開発が企業をダメにする
- 第28回 最も困難な人材開発から学べること
- 第27回 最も困難な人材開発から学ぶ
- 第26回 飛躍できる企業を育てる
- 第25回 孫社長の飛躍の秘密
- 第24回 カルロス・ゴーンの2つの教訓(2)
- 第23回 カルロス・ゴーンの2つの教訓(1)
- 第22回 人材難を乗り越える人材育成教育
- 第21回 人材難を乗り越える人材育成の方法
- 第20回 人材難を乗り越える人材育成
- 第19回 目指せ!新ビジネスモデル
- 第18回 人手不足にどう対応するか
- 第17回 起業家が犯しやすい間違い
- 第16回 挨拶できてもダメなお店・企業
- 第15回 コラム名変更に込めた想い
- 第14回 従業員を軽視した工場のケース
- 第13回 準備で忙しかった先生のケース
- 第12回 経理の疎さが危機を招いたケース
- 第11回 周囲を蹴落としたら自分の所在もなくなってしまったケース
- 第10回 お金の使い方でサラリーマンから卒業できなかったケース
- 第9回 事業承継への消極性が企業の持続力を奪ってしまったケース
- 第8回 二代目の多店舗戦略が裏目に出たケース
- 第7回 リスケ後に安穏としてしまったケース
- 第6回 消極投資で自分を窮地に追い込んでしまったケース
- 第5回 自信を持った二代目社長のケース
- 第4回 経営改善に踏み込めなかったケース
- 第3回 金融機関を渡り歩いて事業改善を怠ったケース
- 第2回 仮説に固執して事業改善のタネを見付けきれなかったケース
- 第1回 事業改善して繁盛企業になれる方法を倒産企業から学ぶ