第7回
リスケ後に安穏としてしまったケース
StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ 落藤 伸夫
資金調達をしている全ての企業にとって、借入金返済は経営上の最優先課題です。ですが、景気の低迷や取引先の撤退等の理由で、毎月の弁済を約定通り支払うことが困難になる場合もあり得ます。そのような状況でも金融機関への返済を優先し、取引先への支払いや社員等への給料等を遅らせる経営者がおられますが、これは賢明とは言えません。取引先や社員等に不義理をすると、事業そのものの継続が難しくなるからです。
リスケの勧め
事業継続を第1に考えるなら、それらよりも先に借入金のリスケ(リスケジュール)を金融機関に依頼することができます。支払額を軽減したり、一時停止(元本のみで利息は支払い続ける必要があります)するよう依頼するのです。キープした現金で事業をしっかりと回していきたいと申し出れば、それを金融機関が無下にすることは、最近ではほとんどありません。
「金融機関から厳しい言葉を投げかけられるのではないか」と不安な気持ちだった依頼時から比べると、なんとか了解してもらって返済を軽減・ストップしてもらえると、資金繰りは楽になります。これまで資金調達をあまり計画的ではなく行ってきた企業であればあるほど、その感覚は強くなるでしょう。
多くの企業が倒産してしまうプロセス
しかし、現実には、リスケしてもらった企業のかなり多くの割合が倒産に至っています。信用保証協会が代位弁済せざるを得なくなり、倒産審査マンのもとに請求書が送られるのです。
それら企業が倒産に至ったプロセスは、もちろん画一的ではありませんが、いくつかのパターンはあります。代表的パターンの一つは、1年間のリスケ期間が終了して返済を再開せざるを得なくなった時に資金ショートしてしまうというものです。「もともと返済できなかったからリスケしたんだ。1年経っても状況は変わらなかったのだろう。そこで返済を強要するなんて、金融機関も冷酷だな。」実際は、どうなのでしょうか?
金融機関の考え方
ここで金融機関の立場で考えてみましょう。 「毎月の返済が難しいので支払いを軽減・ストップして欲しい」という依頼には、2つの合理的かつ両極端な対応方法があります。一つは「事業改善して利益を増やした上で返済できるよう、しばらく猶予を与えよう」という考え方、もう一つは「事業改善できるとは思えない。さっさと回収する方が得策だ」という考え方です。金融機関の複数の審査担当者は、前者か後者、いずれかの立場をとっていたでしょう。結果的にリスケに応じてくれたとは、前者の意見が通ったことを意味しています。
それから1年が経ち、返済の再開を約束していた時に「今も返済はできないので、またリスケして欲しい」という要望があったとしましょう。この場合も、金融機関は、企業の事情を調査・分析します。しっかりと業務改善に取り組んだけれど成果が見えてくるまでにもう少し時間がかかることを納得すれば、金融機関は更なるリスケに応じたかもしれません。
一方で、企業が業務改善に本腰を入れて来なかったことが明らかになれば、返済猶予を認めるのは金融機関としての損失を拡大してしまうことにつながりかねません。前者は、もう、自分の意見を通すことができなくなります。後者の意見が主流になり、リスケは認められないと判断されるのです。
StrateCutionsが提案できるソリューション
では、どのようにしたら倒産を避けることができたでしょうか?以下、リスケ直後に支援の要請があった場合に提案できる対策を簡単にまとめてみます。
金融機関にリスケを申し込んだ時、企業は「経営計画書(経営改善計画書)」を作成したでしょう。StrateCutionsは、経営計画書の実行・実現に向けて全力で取り組むよう、ご支援します。まず、経営計画書を毎月の目標値に展開した上で、毎月「経営会議」を開催して進捗をチェックします。目標値だけでなく実現に向けたアクションプランも策定し、その実行も検証します。毎月PDCAサイクルを回すことで、ご支援先企業は、効果的な対策を打つことができ、成果に繋げておられます。
毎月、目標とその実現に真剣に向き合う時間を持つことで、経営者自身が変わっていきます。今までは「目標を立てても実現は無理だ」という気持ちの経営者でも、目標に意識を集中できるようになり、日頃の言動(マネジメント)がより力強くなります。そうなると従業員にも目標達成への熱意が伝わり、全ての歯車が噛み合ってきて実際の成果につながってくるのです。毎月の経営会議は、思った以上の「威力」を発揮します。
本コラムの印刷版を用意しています
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームで、とても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、繁盛企業になるための方法を倒産企業からしっかりと学んでみてください。
プロフィール
StrateCutions
代表 落藤 伸夫
1985年中小企業信用保険公庫(日本政策金融公庫)入庫
約30年間の在職中、中小企業信用保険審査部門(倒産審査マン)、保険業務部門(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定、事業再生案件審査)、総合研究所(企業研究・経済調査)、システム部門(ホストコンピューター運用・活用企画)、事業企画部門(組織改革)等を歴任。その間、2つの信用保証協会に出向し、保証審査業務にも従事(保証審査マン)。
1999年 中小企業診断士登録。企業経営者としっかりと向き合うと共に、現場に入り込んで強みや弱みを見つける眼を養う。 2008年 Bond-BBT MBA-BBT MBA課程修了。企業経営者の経営方針や企業の事業状況について同業他社や事業環境・トレンドなどと対比して適切に評価すると共に、企業にマッチし力強く成果をあげていく経営戦略やマネジメント策を考案・実施するノウハウを会得する。 2014年 約30年勤めた日本政策金融公庫を退職、中小企業診断士として独立する。在職期間中に18,000を超える倒産案件を審査してきた経験から「もう倒産企業はいらない」という強い想いを持ち、 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を中心した企業顧問などの支援を行う。
2016年 資金調達支援事業を開始。当初は「安易な借入は企業倒産の近道」と考えて資金調達支援は敬遠していたが、資金調達する瞬間こそ事業改善へのエネルギーが最大になっていることに気付き、前向きに努力する中小企業の資金調達支援を開始する。日本政策金融公庫で政策研究・制度設計(信用保証・信用保険制度における事業再生支援スキーム策定)にも携わった経験から、政策をうまく活用した事業改善支援を得意とする。既に「事業性評価融資」を金融機関に提案する資金調達支援にも成功している。
Webサイト:StrateCutions
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- 第48回 「褒める」はモチベート策になるか?
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- 第45回 台風19号で被災した中小企業への支援
- 第44回 理解力を高める唯一の方法
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- 第42回 こんな会議になっていませんか?
- 第41回 理解力について職場の「あるある」
- 第40回 上級マネジメント・チェックリスト
- 第39回 吉本興業に必要な上級マネジメント
- 第38回 吉本興業事件の真の原因は何か?
- 第37回 顧客かつ対戦相手として研修生と向き合う
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- 第35回 受講生と足並みを揃える
- 第34回 5次元社会で活躍が期待される人材像
- 第33回 今、存在しない人材の育成
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- 第30回 カルサバ人材開発計画が危険な理由
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- 第25回 孫社長の飛躍の秘密
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- 第23回 カルロス・ゴーンの2つの教訓(1)
- 第22回 人材難を乗り越える人材育成教育
- 第21回 人材難を乗り越える人材育成の方法
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- 第3回 金融機関を渡り歩いて事業改善を怠ったケース
- 第2回 仮説に固執して事業改善のタネを見付けきれなかったケース
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