第10回
「木組み」は「人組み」――宮大工の口伝は最高のマネジメントの知恵
イノベーションズアイ編集局 ジャーナリスト 加賀谷 貢樹
飛鳥時代から伝わる「1000年を見据えた仕事」の凄み
「人を活かす」こととは何か
組織のリーダーの心得
一、木の癖組は工人(こうじん)等の心組(こころぐみ)
――木の「癖を組み」、立派な堂塔に仕上げるには、大工たちの心を組むことが重要だ
棟梁一人だけが、木の癖組みが大切だとわかっているだけではいけない。堂塔はチーム全員で組み上げるものである。だから、「五〇人の大工がおったら五〇人の人に、わたしの考えをわかってもらわないかんちゅうことや。これが工人の心組みですわ」と西岡棟梁は書いている。
「木組み」は「癖組み」。その「癖組み」をきちんと行うためには、まずチームのメンバーの「心組み」を行うことである。「人組み」が何よりも大切だということになるだろう。
「木組み」というと、1つ思い出がある。私がものづくり関連の取材で全国を飛び回っていた頃、建具(たてぐ)職人を養成する訓練校を取材したことがあった。
建具とは、建物の障子や襖(ふすま)、戸などの総称で、和風建築の建具には、細い木片を緻密な文様に組み上げる伝統木工技術の「組子(くみこ)」が用いられていることがある。
その訓練校で、受講生たちが練習用に作成した組子と、職人が作成した組子のサンプルをいただいた=写真。細い木片を、釘を使わずに組み上げているので、1つひとつの木片の寸法が甘いと綺麗な文様にならない。細かい鉋(かんな)捌(さば)きを習得することが必要だと聞いた。
こうした「木組み」の美しさと同様に、「人組み」がうまくいっている組織もまた、素晴らしいものになるのだろう。
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