第8回
夢を見て前に進む「未来への意志」を取り戻す――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵②
イノベーションズアイ編集局 ジャーナリスト 加賀谷 貢樹
社員1人ひとりが夢を記した「夢の旗」
「夢は正夢」――夢は描くためにあるのではない。実現するためにある
そのサインボールを十数年ぶりに眺めたら、「夢は正夢」と書いてあった。
私事だが、数年前に大きな病気をして左膝下を失った。
不思議なことに、それほど大きく落ち込むこともなく、トレーニングをして義足で歩けるようになれば、また娘と散歩もできるし、東京・永田町の長い坂を上って取材にも行けると、気持ちを前向きに切り替えることができた。
退院後、その2つの目標を達成し、改めてサインボールを眺め、気づかされた。夢は夢想ではなく、正夢なのだと。
自分自身、夢や将来のビジョンをしっかり持てているかどうかについては、自信がない。だが、どん底の中で辛うじて前を見ることはできたと思う。というより、前を見るしかなかった。
そんな体験から、この連載の第2回で触れた幸之助さんの「日に新た」やマキャベリの「人間の自由意志の炎」という言葉に強く引かれるようになった。
私は、夢を描くことは「人間の自由意志」の最たるもので、「日に新た」な自分を創り上げていくための挑戦だと思う。
それは、未来への意志であり、この連載の第6回記事で紹介した浜松ホトニクスの企業理念風にいえば、自分自身にとっての「未知未踏領域への挑戦」ということになるかもしれない。
自分自身がこれまで積み重ねてきた経験やノウハウに安住することなく、昨日より今日、今日より明日へと変わり続け、夢を正夢にする生き方ができたら、なんと素晴らしいことだろう。
私は経営者こそ、自分自身が夢を描き、それを実現すること。そして、自分の大切な家族や社員、縁ある人たちが夢を持ち、夢を正夢にすることを、物心ともにサポートすることができる素晴らしい職業ではないかと思う。
「未来を知る者は、その未来を創り出す者自身である」
という、私の尊敬する経営者の1人であるアチーブメント(株)の青木仁志社長の言葉を、最後に引用させていただく。
――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵③に続く
ジャーナリスト 加賀谷 貢樹
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- 第27回 名将に学ぶ「上司学」⑦「人の目利き力」なきリーダーは組織戦に勝てない
- 第26回 名将に学ぶ「上司学」⑥リーダーは「人の目利き」になれ
- 第25回 名将に学ぶ「上司学」⑤職場に元気を取り戻す「6つの心得」
- 第24回 名将に学ぶ「上司学」④「人がついてくるリーダー」が大切にしていること
- 第23回 名将に学ぶ「上司学」③名将は「部下のモチベーションを高める達人」だ
- 第22回 名将に学ぶ「上司学」②部下の失敗にどう向き合うか
- 第21回 名将に学ぶ「上司学」①名将は怒らず諭し、悟らせる
- 第20回 名将に学ぶ「心を通わす」リーダーの言葉③――名将は「自分の器」をどう広げたか
- 第19回 名将に学ぶ「心を通わす」リーダーの言葉②――名将たちは部下をどう叱ったか
- 第18回 名将に学ぶ「心を通わす」リーダーの言葉①
- 第17回 お客様を信じられなくなったときに何を考えるか
- 第16回 シリーズ「古典に学ぶ、勝つための知恵」①『呉子』
- 第15回 「自由闊達で愉快なる理想の職場」を作るために
- 第14回 挑戦し創造するマインドを取り戻せ――ソニー「大曽根語録」に今学ぶもの
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- 第12回 ものづくりの「職人ことば」「現場ことば」が教えてくれるもの
- 第11回 「おもてなしの心」をめぐる先人の知恵と近未来
- 第10回 「木組み」は「人組み」――宮大工の口伝は最高のマネジメントの知恵
- 第9回 感謝こそ最大の「心の報酬」だ――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵③
- 第8回 夢を見て前に進む「未来への意志」を取り戻す――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵②
- 第7回 経営者も上司も親も悩む――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵①
- 第6回 企業の理念に込められた知恵【後編】――「未知未踏」への挑戦あるところに道は拓ける
- 第5回 企業の理念に込められた知恵【前編】――あなたの会社の「パーパス」 は何ですか?
- 第4回 ある中小企業で出会った「ダーウィンの言葉」と「青春訓」
- 第3回 市場が厳しいときこそ、「利他の心」で世の中に役立つことをする
- 第2回 幸之助さんの「日に新た」と孔子先生の「川上の嘆」、マキャベリの説く「運命」
- 第1回 デジタル時代の顧客中心主義と「仁」の心