第7回
経営者も上司も親も悩む――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵①
イノベーションズアイ編集局 ジャーナリスト 加賀谷 貢樹
「モチベーションを向上させる」というのはたやすいが――
押して駄目なら引いてみる――面と向かって褒めるのが難しいなら、「陰褒め」が効く
「任せる」こと、「未来を描かせる」こと
一方、前回「人類未知未踏領域への挑戦」という浜松ホトニクスの企業理念を紹介したが、同社では若手技術者に、光技術の未来を描かせる「次世代プロジェクト」を進めていると晝間(ひるま)明社長に聞いた。
同社の「次世代プロジェクト」では、社内の中央研究所に所属する40歳未満の若手社員の希望者12人が参加。今後10~20年を見据え、自社の技術で将来的にどんなことが可能になるか、これから何をすることが必要かを彼らは検討し、30件以上の次世代プロジェクト案を提出した。
その中から選ばれたのが、「赤外光の応用」と「空間光制御」の2つ。
可視光よりも波長が長く、目に見えない赤外光の応用として、若手が興味を抱いていたのが、これから産業、通信、医療やヘルスケア分野などで広く応用が期待される「中赤外(ちゅうせきがい)光」だった。「分子の赤い糸をほどいて、生命をつむぐ」をキャッチワードに掲げ、中赤外光関連技術の研究開発を進めている。
「空間光制御」では、2026年を目標に三次元空間に「イ」の文字を立体表示させる技術を確立すると、晝間社長から聞いた。
浜松市は光技術の街としても知られ、日本の「テレビの父」として有名な旧制浜松高等工業学校(現・静岡大学工学部)の高柳健次郎博士が、1926年に電子式テレビジョンのブラウン管で「イ」の字を表示させる実験に成功している。同社の「空間光制御」プロジェクトは、このエピソードに基づいている。
浜松の地で、1926年に平面のブラウン管に「イ」の字を表示させることに成功したその100年後に、3次元の立体空間に「イ」の字を表示させるという。
そんな「人類未知未踏領域」の夢の技術に挑戦するプロジェクトが、若手に任せ、未来を描かせることから始まったのである。
――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵②に続く
ジャーナリスト 加賀谷 貢樹
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- 第7回 経営者も上司も親も悩む――「やる気」を高め、「心に火をつける」マネジメントの知恵①
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