第18回
物価高対策は“補填”より“賃上げ”
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストA
日銀は金利を上げない。というか、あげられない。だから借金がしやすい。半面で、米国などとの間で広がる金利差は円安の主たる原因でもある。でも、前述のこともあり、円安是正で金利アップはできない。だから打つ手は物価上昇分の補てん、という構図になる。
それにしても、国の借金積み増しは心配だ。日本のような国の場合、こういう赤字財政は構造上の宿命だという面もある。日本のような民主主義国家では、予算と法律は“主権者である国民の代表者(国会議員)”が国会で決める。代表者は選挙で選ばれるが、主権者(われわれ)は自分都合で代表者を選びがちだ。新幹線や高速道路、各種手当、物価高対策とか(=便益)はできるだけ多くほしい反面、税金とか(負担)はできるだけ少ない方向で…などと思ったりする。加えて、便益はより見えやすいものに集中しやすい。だから国防や治安維持、外交といったものはおざなりになる。
日本はフランスや米国のように市民革命を通じて自由や権利を確立したわけではない。フランスなどのような、市民が血を流して絶対君主を打倒した国では、勝ち取った自由や権利を守るために税金を支払い、自由や権利を守るために予算にも気を配る。終戦で突如米国型の民主主義になった日本には、そうした文化がない。
物価高を乗り切るいい方法はないものか。やはりここは賃金アップがいいとは思う。もっと難しいという説はある。それもわかる。そもそも賃金は一様に上がるはずがない。企業のサラリーマンが多い日本の場合、賃金を出すのは企業だ。そして企業はいろいろだ。業績のいいところはまだしも、業績が悪いところはそうもいかない。
ただ、努力の余地がある。もはや仕方ないのだ。うまくいくかどうかはわからないが、賃金が上がるように、賃金を上げるべく、国も企業も個人もがんばりたい。
経済ジャーナリストA
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