コロナ後の世界

第24回

コロナの後遺症? 悩ましい分断の構図

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を、ジフテリアやコレラと同等の2類相当から、季節性インフルエンザと同じ5類に変更することが決まった。新型コロナウイルスには、正確には新型インフルエンザ等に対応するための特別措置法が適用されてきたが、ゴールデンウィーク明けからは5類。冬場に流行るインフルエンザと同じ扱いになる。

だからなんなのか、という話はあるが、これに伴い店舗に対する営業停止や時間制限を含む緊急事態宣言などはできなくなる。ただ、日本の場合はそもそも規制や制限もさほど強力なものではなかった。少なくとも、欧米のように違反すると捕まってしまうわけでもなかったし。

で、これでいよいよコロナ禍は終わるのか。

もちろん、細々とした制度の修正などしばらくは残るが、法制上は一旦そういうことになるのだろう。ただ、最近思う。日本ではそう簡単には終わらないのではないか、と。

日本では、強い規制をしなかったにも拘わらず、欧米と同じように、あるいは、より“きちんと”対策が講じられていたように思う。警察には捕まらないが、マスクをしないで外出すると白い目で見られかねない状況があったり。実際に注意されたという人も多い。そんな世界基準からすると独特な社会風土がある。この風土が、簡単にはコロナ禍を終わりにしないのではないか、と。

このコラムは静岡で書いているが、こちら静岡では5類もなにも関係ない。まだまだコロナだ。マスクは手放せない。感染予防もあるが、それ以上に怪訝に思われかねないからだ。

地方には高齢者が多いという事情もあるだろう。それにしても厳しいのだ。よく行くバーの店主に聞くと「まだまだ客は戻っていません。一時に比べればよくはなっていますが、週末でさえ夜8時になると客は引けてしまう」という。実際に、県内きっての繁華街も静かなものだ。

例外もある。若者が集う店などは、以前の賑わいを取り戻しつつあるようにも見える。が、印象としては特殊なケースだ。若者が少ないからなのか、もっと違うところに若者が集まっているのか。中心街にはそういう店なり場なりは多くない。

このコントラストを見る度に、今後の心配事が脳裏をかすめる。コロナで加速し、コロナ後は大いに心配な“分断”である。

コロナ禍で分断は大きなテーマになったのではないだろうか。分断はいつもあるし、今につながる分断が始まったのは少し前のことだった。トランプ大統領の就任で本格化し、バイデン大統領にも引き継がれている「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」はその代表だが、世界の国々が保護主義的な政策を打ち出している。世界の先行きが不透明感を増す中で、持てる国が自国第一、自国繁栄主義に舵を切るのはある意味当然。しかしこれは、同時にその国と付き合う相手国の反感を生む。損得や優劣のない付き合いでもなければそうなるだろう。

険悪化の一途を辿る米中関係などはその典型だ。ウクライナ戦争もそうだが、ロシアをめぐる世界の動きもそうだ。こうした分断は、周辺で新たな分断を生んでゆく。日韓関係などは、前述のものとは関係ないが、混迷を深めている。

話は静岡に戻るが、繁華型の明暗からなぜ分断を連想するのか。それは、この明暗が高齢者と若者の分断のきっかけになりつつあるからだ。

週末に若者が盛り上がっていても、騒音等迷惑をかけないのなら問題ない。ここに、コロナが加わることで状況は一変する。コロナ対策原理主義者からすると、大勢で盛り上がってはいけないのだ。そうして生まれる無用な摩擦の処理もまた、コロナが難しくする。

コロナは濃密なコミュニケーションを難しくした。正確に言えば、コミュニケーションの形を変えてしまった。このコミュニケーションの変化に、世界や社会や個人はまだ十分に順応できていない。お互いの真意はわかっているようでわかっていない。

自分の時間が長くなったこともあり、自分のことはよりよくわかっただろうが、相手のことは会う機会も行く機会も減っているのだから、当然以前よりわからなくなっている。これから、こうした関係の中で問題や課題を解決していかねばならない。困ったことだ。



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