コロナ後の世界

第14回

ますます広がっているかも知れない情報格差

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 
2022年8月中旬。新型コロナウイルスの感染者は国内も全世界も過去最多で推移している。しかし、今夏は国内でも行動制限なしということで、いつもの夏が戻ってきた感じだ。とはいえ、やはり2年以上にも渡った断続的な行動制限や日常のコロナ対策は染みついていると感じる。

東京近郊にある飲食店でも、コロナ感染者が過去最高を更新したころから客足に変化がみえてきたという。客が話題にするのも“コロナがらみ”の出来事が多い。「〇×が感染したらしい」「勤め先が会食の自粛を求めている」「花火大会の人混みが心配だ」…
コロナが以前ほど重篤ではないとも感じている。それでも、みんなにとってコロナは怖い。感染したり濃厚接触者になることで仕事に支障がでる、という問題もある。

こんな“消費者心理?”は、さまざまな分野に影響している。

例えば観光。コロナで大きな打撃を受けてきた分野だけに、今夏への期待は大きい。実際に、6月以降は夏休みの旅行予約などは好調に推移した。7月に入ると感染者の増加がみられ、7月下旬には東京で1日当たりの感染者が一時4万人に達する。これに伴い、新規の予約は鈍ったとの声もあるが、全国的にはキャンセル等は少ないという。これに対し、地方は少し状況が違う。以前のように壊滅的ということはないものの、「3割ぐらいはキャンセルが出ているのではないか」(長野県の旅行会社関係者)という。

日本では、いまも毎日感染者数や重症者数、死者数の推移をはじめ、テレビのワイドショーなどでは医療ひっ迫の状況や自宅療養の悲惨さが繰り返し報じられている。もちろんこれは大事なことだが、“繰り返し”“過剰”に言われ続けることの弊害は大きい。そうした情報にさらされ続けているという点ではどこも一緒だが、情報に接する頻度や受け取り方は個々で大きく異なる。この差異が行動の違いを生みつつあるようにも思う。

情報へのアクセス環境は、いまや東京と地方に大きな違いはない。これはあくまでインフラ面の話だが、山間部や島しょ部などを除けば、5Gをはじめとする通信環境は整えられつつある。東京と地方に情報格差があるとすれば、そういうインフラやハード面ではないのだろう。

山梨県に住む知人は「例えば街を歩いていても、東京と地方では情報量が違う」と指摘する。東京では店頭にある“新しいもの”が目に入るが、地方はそうもいかないというのだ。どういった情報メディアを活用するのかも違う、という。確かにメディアは難しい。たとえば受動的なメディアであるテレビの場合はつけていれば音声と画像で次々と情報を提供してくる。視聴者は放送局と番組を選ぶだけだ。


対して新聞や雑誌などの印刷物やネット系のメディアは、自分で情報を選んでアクセスして読むといった能動性が求められる。これは大きな違いだ。どんな情報を得るのか。その情報の内容や信憑性は?。情報を得ようという能動性に加え、情報を選別したり選択する必要もある。ここから情報格差が生まれることは大いにありそうだ。


となれば、地方か東京かという問題でもない。そういう話の中でいえば、比率の面で地方は若年層が少なく、高齢者が多く、情報を元手にビジネスをしている人もすくない、ということかも知れない。


じゃあ問題ないのだろうか。


問題というほどではないかも知れないが、もったいないとは思う。ネットを介するさまざまな情報の中には、コロナ後の生活やビジネスの方向性に関するものも多い。ネットの活用で状況を好転、改善した事例やその方策を伝授するものもある。都会の方が情報依存度が高いかどうかはわからないが、そもそも絶対数は多い。ネットを使えばそういう人々にアクセス可能になる。


前述の旅行予約などもそうだが、需要が回復している今夏の場合、楽天トラベルやじゃらん、一休といったOTA(オンライン旅行会社)などでは、キャンセルが少ないこともあり満席・満室状態が続く。一方で、前述の地方にある旅行会社は以前ほどではないもののキャンセルを抱えている。この件などは、マッチングが不完全になっているのではないか、と思える。デジタルはマッチングが得意だ。売り手と買い手のさまざまな条件も加味してマッチングする。今夏は買い手もいる。売り手はしかるべきところに適切な情報を発信しているのだろうか。


今夏はコロナ前の様相だが、われわれにはコロナ習慣が染みついている。この習慣に加え、コロナ禍で便利さを理解したアクティブな層は今後もますますネットを多用するだろう。そういう買い手にどうアクセスするかが今後の焦点だ。極端な例では無料でも実現できるデジタル化。まだのところはぜひ考えてみてはどうかと思う。そうしたススメをオンラインコラムで伝えるのもなんだが…



経済ジャーナリスト A


 

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