第32回
国や自治体の少子化対策に違和感
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストA
新型コロナウイルス禍でデジタル化は大いに進んだ。地方の市役所でも“書かない窓口”を導入し、各種行政手続きを効率化することで窓口の混雑を解消する試みが行われ、それなりに成果も出ているとか。マイナンバーカードはトラブルが続いているが、これも問題点が解決できれば行政手続きも効率化が進むことだろう。
企業でも福利厚生や勤怠管理、年末調整のような事務などの電子化が進み、人手に頼った作業が日に日に効率化している。
人材確保はますます難しくなっており、人手に頼らない体制を作ることの重要性は高まっている。デジタル化の推進は、この確保が難しい人手に代わるものとして大いに期待されている。
しかし、日本の人手不足はまだ序の口だ。現在の出生率を考えると、中期的には未曾有の高齢化社会になるし、その後は未曾有の人口減少時代に突入する。
ちなみに、厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、2022年の出生数は、前年より2万875人少ない77万747人と初めて80万人を割り込んでいる。これは1899年の統計開始以来の最少だ。 2016年に100万人だった出生数は19年に90万人を割り込みその後も減少が続く。
一方、22年の死亡数は前年より12万9744人(8.9%)増え158万2033人となり、戦後最多となっている。
要は、高齢者を中心に160万人近くが亡くなり、生まれてくる人は80万人を割り込んでいる。差し引き80万人前後の減少だ。帰化したりする人もいるので、実際の人口はこの数字とは少し違うが、それでも統計上は60万近く減少している。
今年6月時点の静岡市の人口は68万人ぐらいだ。政令指定都市である静岡市が毎年一つずつなくなっていくような減少ぶりということだが、人口構成比の高い、換言すれば1学年あたりの人口が200万人を超える年もある団塊世代が平均寿命に差し掛かると、亡くなる人はさらに増えるとみられる。出生数が改善するとは考えにくいので、人口減少は加速すること間違いなしだ。
これは困ったことだ。ということで、政府も少子化対策に躍起だ。学費の無償化だの各種手当だのさまざまな子供関連手当などなどが構想されている。これは、フランスやオランダ、スウェーデンなどで実行されてきた欧州型少子化対策の日本版ともいえるものである。
これらはフランスなどでは一定の効果があったとみられている。ただ、日本で同様の効果が見込めるものなのだろうか。
というのも、欧州と日本ではあまりにも社会や生活のスタイル、慣習が違う。そもそも日本の少子化の根底にあるのは、欧州と同様なのだろうか。
以前も触れたが、日本では婚外子が2%程度と50%を超える国も多い欧州とはずいぶんと違う。半面で、未婚率は欧米ほどではないものの急増している。となれば、婚外子を増やす施策をとるか、結婚する人を増やさなければ、子供は増えそうにないからだ。
しかし、日本で婚外子を増やすためには、変更しなければならないルールが多すぎるような気もする。意識の改革も必要で、長い時間がかかるのではないか。かといって、結婚の支援も大変だ。だが、現実的にはそこかも知れない。
未婚率が低かった1960年代までは、なんとその8割が見合い結婚だったわけでが、いまやそうしたシステムは崩壊している。マッチングサービスは人気だが、かつてのような成果は出ていない。とりあえず、妙案もなにも思い浮かばない。が、盛んになってきた少子化対策に関する議論に、違和感だけは感じる。
経済ジャーナリストA
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