コロナ後の世界

第35回

人口減少による経済縮小に不安

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

人口減少は困ったことである。学校や病院が維持できなくなったり、新たなインフラ整備が難しくなってきた。

近年は、大災害などでローカル鉄道が被災すると復興すべきか否かが議論されることもある。過疎化が進む沿線にとって、鉄道は命綱だ。しかし、復興に莫大な費用がかかるとなると、採算は将来的にも合わないことがネックとなる。

人口が増加し続けた時代には、こういうことをシビアに考えることは少なかった。日本は昭和40年代の後半から赤字国債を発行してきたが、経済規模は年々拡大していたので、そのうち何とかする、みたいなことになってきた。日本の人口は昨年時点で前年より55万6000人減ったというが、これは流入する外国人を含むもの。日本人に限ると75万人の減少だとか。政令指定都市である静岡市の人口は約70万人なので、毎年静岡市が一つずつ消失しているような状況だ。

こうした中でもあり、地方都市でも人口拡大競争が盛んに繰り広げられている。地方では、人口減少が社会機能の維持に深刻な影響を及ぼしかねないだけに、当然ではある。

とはいえ、人口減少を食いとめたり、増加を促す、といった取り組みは地方の努力ではどうにもならない。このため、地方の人口増加策は移住が中核を成していることが多い。例えば静岡市でも、子育て支援を手厚くすることで、子育て世代の流出を防ぎ、他の地域からの流入を促している。

ただ、こうした取り組みは地方都市間の住民の奪い合いにすぎない。競争による生活のしやすさ向上はプラスの効果となるが、日本人の減少抑制にはそう簡単にはつながらない。

米国もそのままだと人口減少だが、移民を受け入れることで増加を維持している。いわば、国内の地方都市間競争みたいな感じのことを世界で展開している格好だ。日本はそうした戦略をとっていないため、人口減少への対処は極めて難しいことだろう。

そこでいつも思うのが、人口減少を前提にしたモデルも考えておく必要があるのではないかということだ。

だれかがどこかで考えてはいるだろう。が、自治体や政府も公式かつ本格的に準備してはどうかと。デジタル化などはその一つといえるが、そうした戦術ではなく、戦略があると安心できるような気がする。

もちろん、人口減少を食い止める努力は必要だが、ダメだったら仕方ない、というのでは困るからだ。同時に、これは実は非常に難しい選択の連続になりかねず、時間をかけた意識の変革も必要になるだろうからだ。

人口増加の局面では、国や地方の予算も基本的には増加していくので、新たに取り組むことを中心に予算を配分していけばいい。半面で、減少局面では“何をやめるか”“何を減らすか”が中心となる。これは、明治以降、特殊な期間を除けば未経験だ。

近年、少しずつそういう判断も出ているが、予算は意味があって配分されているため、やめたり減額すれば大きな反発を生むことになる。場合によっては政権を揺るがしかねないこともあり、政治判断は容易ではない。

しかし、本来予算は優先順位を決め、プライオリティーの高いものから配分していくべきもの。人口増加の局面では赤字国債も活用して増やす一方で済ましてきた。これがいよいよ立ち行かないかも知れない。

実は、民間企業の経営や家計はそのようになっている。どうも国や自治体の話になるとその辺の計算が働かない。

人口減少は確実にしばらくは続く。かつてのように、経済が数字上の拡大を続けられる保証はない。説得力のある“縮小後のあるべき姿”“縮小下でも実現するべき豊かさの目標”が示せれば、人口減少による数値上の経済規模縮小も怖くない。


経済ジャーナリストA


 

プロフィール

イノベーションズアイ編集局

イノベーションズアイ編集局では、経済ジャーナリストや専門家などが、さまざまな角度からビジネス情報を発信しています。

コロナ後の世界

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。