コロナ後の世界

第29回

投票率低迷でみえる日本の〝薄まる参加意欲〟

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

都道府県の知事や議員、市町村の首長や議員を選ぶ統一地方選挙が終わった。統一選は4年に一度だが、いろいろな事情で選挙の時期がズレることも多い。とはいえ、今回も全国で約1000もの選挙が実施された。

が、残念なことに投票率が多くの選挙で過去最低を更新している。それどころか、立候補者が少ないために無投票となる選挙区も驚くほど多かった。議員選では、立候補者が足りず定数割れとなるケースも見られた。

政治への無関心は近年一貫して進んできた傾向だ。投票率の低下なども同様に進んできた。しかし、この傾向は当然のことながら好ましくない。

地方で選挙報道の現場に出て思うのは、若者の不参加だ。というか、こういう言い方は適切ではないが、支援者も街頭演説の聴衆も立候補者も、圧倒的に高齢者が多い。年代別投票率の推移などのデータでも、投票率が低いのは若者である。成人年齢が引き下げられ、18歳から選挙権はあるものの、これでは若者の声は国や自治体の運営には反映されにくい。

政治や選挙に対する興味が薄れている。これは、主権者としてはどうかとは思う。国や地方の選挙管理委員会が、主権者教育に力をいれはじめて久しいが、なかなかいい方向には向かっていない。困った話だ。

ただ、政治や選挙への興味が薄いという状態は、平和で特に大きな課題がない、と考えることもできる。少なくとも、バブル期前後からはそんな傾向か続いた。では今はどうなのだろう。収束に向かっているとはいえ、新型コロナウイルス禍は経済社会に多大な影響と損失を及ぼした。人口減少の進行で、企業や組織などはこれまで通りの運用が立ち行かなくなりつつある。国際競争力や国力も低下し、半面で国際情勢は大きく変わった。問題は山積しているように思う。

もちろん、われわれ主権者が選挙でだれかを選べばいい方向に向かう、とは限らない。むしろ、そうもいかないことのほうが多いかも知れない。

だからどうでもいいのだ。そういう“あきらめ”の声もある。そういう人に話を聞いたこともある。

そういう人も、国や自治体に対する問題意識はあった。意見もある。たまたま聞いた人は、民主主義のメカニズムを知らない、という大きな問題はあったが、説明したところ理解もした。それでも、選挙にはいかないし、そもそもいったことがないという。印象としてはそういう人が増えている。


日本の場合、この選挙に似たように感じになっているコトは多い。

例えば企業もそうだ。近年、法やガイドラインも整備されてきたコーポレートガバナンスは、形式から実質への変化が問われている。株式会社の場合、取締役会が政府なら株主総会が国会にあたる。株式会社における“株主”は主権者であり、最も重要なステークホルダー(利害関係者)のひとつだ。その株主が、日本の場合はモノを言わない。このため、取締役も利害関係者の意向ではなく、経営者の意向に沿いがちだ。

そうじゃない株式会社もある。取締役の過半数を社外から招き、業績や成長戦略を議論する。経営者の人選や報酬を決める委員会のメンバーはすべて社外取締役で構成し、内輪の論理を排除。ステークホルダーのための企業運営とともに“稼ぐ力”を高めることができる経営者の選出を実践している。そうした会社は、そうじゃない会社よりも業績やプレゼンスが総じて高い。

そういうことを実践している組織を“ガバナンスが効いている”などという。それは、利害関係者の“願い”を実現することに全力を挙げる組織だということでもある。この組織は誰のものなのか。この組織は誰のために何をするのか。そういうことが明確な組織なのだ。組織もいろいろあるが、株式会社、特に不特定の人々から投資を募るような上場企業では、そうした意識、実践のための体制などが強く求められる。

われわれの社会も同様だ。国や自治体はその最たるものである。統一地方選を終え、この国や社会の将来に大きな不安を感じた。

社員や株主がきちんと参加していない、参加する意欲も薄れつつある会社。日本はそんな会社みたいになりつつある。



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