コロナ後の世界

第37回

求められる中国依存からの脱却

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

中国のバブル崩壊が取りざたされている。以前から景気後退が予想されてはいたし、不動産大手である中国恒大の経営危機は2年前からダラダラ続いた。不動産大手の遠洋集団もデフォルトが懸念されているとの報道がある。日本のバブル崩壊もそうだったが、こういうものはへんにネバると重篤化するだけに、いよいよの時が心配だ。

そんな中国は、いまや日本にとって最大の貿易相手国だ。米国のサブプライム住宅ローン危機をきっかけにリーマン・ショックが起きた2008年以降、日本の最大貿易相手国は年によって米国だったり中国だったりするが、近年は中国が優勢だ。

そんなことからもわかるが、日本経済はいまや中国に大きく依存している。中国から電機製品が届かなければ、たちまち国内は供給不足になる。新型コロナウイルス禍で輸出入が停止し、その後もサプライチェーンに不安定感が残ったため、2020年ごろからIT関連機器や電機製品が品薄になり。価格も上昇した。

日中間の貿易はここまで拡大したにも関わらず、順風満帆ではない。

コロナ禍の前から、中国は欧米との間で経済戦争といえるような摩擦を生み出していたし、尖閣諸島の領有権を主張したことから日本との間でももめ事が絶えない。最近では、福島第一原発の廃炉作業で発生する処理水の海洋放出に抗議する中国は、日本産の海産物などの輸入を全面中止した。一度経済的に大きく依存していたこともあり、その対応策は難航が予想される。なにしろ中国は、多くの漁港で水揚げされる産品の最大の仕向け先である。他の国や地域に輸出先を変えるにしても、そう簡単ではない。

今年は4年ぶりにコロナ関連の制約がなくなった夏休みとなり、地方の観光地には以前の景色が戻った。花火大会や祭りも4年ぶりに盛大に行われた。ただ、集計してみると、元通りとまではいかない。例えば静岡県の場合は2019年比で7~8割というところが多かった。この背景には中国からのインバウンド客が戻っていないという事情がある。

静岡空港に乗り入れる中国の航空会社もまだ路線を再開していない。県は中国側に再開を呼びかけているが、これまたそう簡単にはいかない。

コロナが終わっても、日中間のヒトやモノ、カネはそう簡単に元には戻っていない。米中の摩擦もあるが、今後は中国の大規模な景気後退もあり得る状況だ。もし経済危機のようなことになれば、中国が台頭して以来初めてのことでもある。これでは、そもそも元に戻るのかもあやしい。仮に戻っても、将来的にはこの依存が外交カードに利用され続けることだろう。

中国とどう付き合っていくのか。これはエネルギーや食糧と同様に、経済安全保障上重要な検討事項だろう。日本には自前のエネルギーも食料も少ない。今後はヒトも減る。これに伴って、市場も労働力も減る。

エネルギー安全保障では、ベストミックスという考え方が基本になっている。中東戦争に伴う原油の価格高騰や供給途絶の影響で日本経済は大きく混乱した。その教訓から、原子力や石炭、天然ガス…といったエネルギーの活用を進めた。

不安定な中東への依存度を引き下げることは、一次エネルギーにおける石油依存の引き下げることでもある。石油は中東やロシアなど、産地が限定的だからだ。折しもその代表格だった原子力は十分に稼働していないが、考え方としてはエネルギーの多様化と原産地の分散が今後も強く求められる。

それ以外の産品や観光も、そろそろこうした考え方に基づいた戦略が必要なのかも知れない。もっとも、行政は旗こそ振れるものの、エネルギー政策のようには実施できないので、最終的には事業者の意識次第となる。一挙には変えられないが、多様化、分散化を進めて中国への過度な依存から脱却することが事業の存続や安定化を実現するカギではないかと思う。


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