コロナ後の世界

第20回

増える借金 これ返済とかするの?

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

財務省によると、国債と借入金、政府短期証券を合計した国の借金は2022年の9月末時点で1251兆3796億円だったという。これは、1年前より36兆2264億円の増加で、9月末として過去最大である。

増加の理由は、社会保障や新型コロナウイルス関連の歳出が拡大したためだ。歳出が増えても歳入は簡単には増えないので、足りない分を借金でまなかったらこうなった、と。ちなみに、人口推計を基に単純計算すると、国民1人当たりの借金は1000万円を超える。びっくりするような額だが、これをどう思うかは人によっていろいろだろう。日本ではなぜだか国の借金に限って“いくら借りてもOK”みたいな考え方がある。

ただ、国以外のこうした借金を良しとする人はいないだろう。自分の家計や経営する企業、勤め先がそういう感じだと危険だ。というか、成立しない。それこそ、年収680万円の人が1億2510万円の借金をし、その借金が年々増えている、といった状態だからだ。もっとも、国とか企業などの法人は、われわれのような自然人とは違う。寿命がない。なので、借金を1000年かけて返済する、というのも存続さえするなら可能ではある。問題は“存続するのか”である。

『岸田首相、日本の税収「過去最高68兆円超」でも増税目指す…SNSでは怒りの声「なんで還元しない?」「国民の敵としか思えない」』

今月初頭、とある週刊誌にこんな記事が掲載されていた。記事の内容は、円安やエネルギー高騰による物価高で国民の生活が苦しいのに、政府は雇用保険料を値上げし、年金の納付期限延長や道路利用税、金融所得課税の見直しなども検討しているのはけしからん、といったものだ。

われわれは政府とかに締め上げられている、という感覚。これも日本ならではとまではいわないが、日本が先進国の中ではこの感覚がひときわ強い気がする。先進国の多くは市民革命を経て自由や権利を勝ち取ったが、日本にはその経験がない。われわれの意識は、年貢を徴収されていた江戸時代とかわらない。しかし、今われわれはこの国の主権者なのである。

とはいえ、“借金が増えている”という事態は世界的な傾向だ。もちろん新型コロナウイルス禍の影響は大きいのだが、コロナがなくても基調としては増加しただろう。

国際金融協会(IIF)が今年2月に発表したリポート「グローバル債務モニター」によると、2021年の世界の債務残高は303兆ドルと過去最高になった。300兆ドルを超えるのは初めてのことだ。これは、円安で少し大げさな数字にはなるが、約4京3000兆円だ。

単位は京。あのスーパーコンピュータの名前にもなった単位。兆の1000倍だ。この借金は、各国の政府債務に加え、家計や企業、金融機関などを総合計したものである。日本の政府債務もすごいが、世界もすごいのだ。

しかしコレ、なんとかなるのだろうか。なんだか、これまでの経済学とか、経済のルール上はどうにもならないような気がしてならない。それでも借金は着実に増加を続けている。

借金は返すもの。返さねばならない。が、貨幣価値の変化、例えばインフレ―ションなどで帳消しになるといった“現象”はある。今のところこれを使って帳消しにする“技術”はないが、そういう技術を模索するのだろうか。している気もする。

ただ、少なくとも自分の家計などではそうしたことにロマンを感じる状態になってはいけない。そんなこと言われなくてもわかってるぞ。こんな声も聞こえそうだが。



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