第10回
求められる本質を読み取るリテラシー
イノベーションズアイ編集局 経済ジャーナリストA
だがしかし、そうなのだろうか。
わたくしこと経済ジャーナリストAは、そうは思っていない。
ホンダ発の意見交換スタイルである“わいがや”や稲盛さんが実践したコミュニケーションスタイル“コンパ経営”、オムロンで実践される“大部屋方式”などは、コロナ禍もあってそのままではやりにくいかもしれない。だからといって、時代が変わったからといって切り捨てるような類のものでもない、と思うのだ。
先達の功績をそのままやり続けるべきだとは思わない。ただ、先達がどういったところに腐心し何のために具体的な施策が考案されたのか、を考えることは重要だと思う。それこそが歴史を学ぶ意義だからだ。理論や具体的な施策は、文明や新たなツールの登場などに影響され時代とともに変化する。いまはその変化がことさら大きい時期だろう。
半面で、多くの人が参加して運営される会社などの場合、構成する人に関する部分はどうだろう。パワハラやセクハラの禁止みたいな話はあるが、みんなで何かをやり遂げよう!ってな話になると普遍的な部分が大きい。
例えがいいかどうかわからないが、恋愛を題材にした本の場合、新しいとか古いとかで選んだり、感動度合いが変わったりするのだろうか?
時代によっては汽車だったり自動車だったり携帯電話があったりと舞台は違うが、本質はそこではないからだ。
近代日本経済の大プロデューサー的存在だった渋沢栄一は、明治初期に未知の人たち(欧米人)と接触するに際し「論語」の教えにある考え方を基本にしていた。それは、論語が2000年以上ともいわれる長きにわたって読み続けられてきた理念の塊だったからだ。論語はだれもがそうだと思える人類共通の考え方だ、と見込んだのだ。
古いからダメ。これはビジネス書や経営者の発言であっても当てはまらない。もしダメだとしたら、それは単にその時点の断面の情報しか論じていないか、そもそもダメな情報なのだ。
情報や理論と理念は違う。一過性の情報に振り回されず、普遍的な理念に触れたい。そのためにも本を含めた多くの情報に触れ、リテラシーを高めたい。そうした読解力などがなければ、価値のある部分は見つけられず、“昔のものはダメ”みたいな低レベルな話に終始することになる。
経済ジャーナリスト A
- 第46回 経済合理性に合致しない社会の声
- 第45回 街の衰退と地方都市の挑戦
- 第44回 東証史上最高値更新も乏しい実感
- 第43回 減少を想定した“縮小戦略”という選択
- 第42回 どうする“伝わらない重要な情報”
- 第41回 デジタル化進み、危険もいっぱい
- 第40回 とにかくなんとかすべきは人手不足
- 第39回 「フィルターバブル」に埋もれたくない
- 第38回 AIのカスタマイズで歪むネット情報
- 第37回 求められる中国依存からの脱却
- 第36回 言行に責任者不在、しかも制御不能のSNS
- 第35回 人口減少による経済縮小に不安
- 第34回 どうする?増え続けるIDとパスワード
- 第33回 これまでとは違う潮流を見つけて伸ばす時!
- 第32回 国や自治体の少子化対策に違和感
- 第31回 人流戻るもグローバル化の変質は加速
- 第30回 コロナ禍終焉で人出は増えても人手は増えず
- 第29回 投票率低迷でみえる日本の〝薄まる参加意欲〟
- 第28回 賃上げは必要だが、他の魅力も重要
- 第27回 ネット時代だからこそのリアル店舗とは
- 第26回 「各自の判断」ができない日本人
- 第25回 景気は戻っても、経済は元のカタチには戻らない
- 第24回 コロナの後遺症? 悩ましい分断の構図
- 第23回 地方への人口分散で個人消費の拡大も
- 第22回 “人手”が事業の先行きを左右する時代
- 第21回 「灯台下暗し」とよくいうが…
- 第20回 増える借金 これ返済とかするの?
- 第19回 経済の原動力の一つ“欲望”の行方
- 第18回 物価高対策は“補填”より“賃上げ”
- 第17回 全地域、全業種が一様だった時代の終焉
- 第16回 高成長に向けた変革、個々は自分の身を守れ?
- 第15回 今こそ求められる〝稲盛さんの教え〟
- 第14回 ますます広がっているかも知れない情報格差
- 第13回 世界はアフターコロナに移行 日本はどうする
- 第12回 事業再構築補助金が創出する市場や需要
- 第11回 複雑化する経済社会、“情報は疑う”を基本に
- 第10回 求められる本質を読み取るリテラシー
- 第9回 国内回帰の機運高める世界の分断
- 第8回 DXより前に求められる自らの将来像
- 第7回 “ロシア制裁”は原油高との闘い
- 第6回 雇用の喪失は心配だが、人出不足も心配
- 第5回 わからないからこそ挑戦! でも知らないはダメ
- 第4回 ハラスメントの深刻化と信頼関係の希薄化
- 第3回 ソーシャルディスタンスの定着って…
- 第2回 分化を分裂や分断にしないための想像力
- 第1回 デジタルで変わるコミュニケーションの功罪