コロナ後の世界

第41回

デジタル化進み、危険もいっぱい

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

いよいよ年末だ。来年の予定もちらほら入り始めている。そこで来年の手帳が必要なのだが、いまのところない。

以前はこの時期になると企業からカレンダーや手帳をたくさん頂戴したが、最近はそういった企業も少なくなった。そこで、書店を覗いたところ、店頭に大きなスペースが用意され、多種多様なものが並んでいた。聞けば、手帳は好調だとも。確かに、買うしかないなら買う。

ただ、手帳市場はいろいろ難しいようだ。

県民手帳というものがある。都道府県の統計センターなどが発行しており、県の施設やサービス、観光資源の紹介などが付いた便利なものだ。某県の担当者にこの県民手帳について聞いたところ、コロナ禍前の2017年頃がピークだったという。

それ以降は徐々に減少しているようで、発行部数を単純に比較すると、某県の場合、今年作ったもの(来年版)はピーク時のだいたい3分の2程度となっている。担当者は「デジタル化が進み、スマホのスケジュールアプリなどに置き換えられているのではないか」とみている。

確かにそうした動きはあるだろう。自分も手帳を探しておきながら、普段はスケジュールアプリを使っている。

じゃあなぜ手帳が要るのか。スマホが故障したり、なくしたらどうにもならない、と思うからだ。最近はデータをクラウド上で管理しているため、IDやパスワードがわかれば大した問題にはならないのだが、やはり感覚的には不安だ。そこで、紙の手帳とアプリの両方に予定を書き込んでいる。手帳とアプリを手作業で“同期”させているのだ。




はっきり言ってムダな作業である。

しかし、そういう人は多いようだ。いまやスマホを持たない人は少ないが、手帳というかスケジュール帳全体となると市場は決して縮小傾向にはないようだ。この状況は過渡期だとみられているようだが、アプリ一辺倒には不安もある。

会計の世界では、すでにそうした不安が課題として顕在化している。企業の会計はコンピューター上で処理されるようになって久しい。確定申告などの際の書類作成も、個人レベルならアプリが便利だ。が、機能が強化される傍らで有料化されることもある。無料だから使っていたのに、途中から有料化されるのは困りもんだ。そこで、他社の無料アプリに切り替えようとすると、データが移行できなかったりする。これはスケジュールもアドレス帳もコミュニケーションツールも同じだ。

もっとたちの悪い問題もある。

無料有料に関わらないが、アプリやサイトを介するデジタルサービスは、登録したり契約するのは容易だが、解約はかなり難しい。というか、解約の方法がわからないものも多い。

かつて契約したインターネットプロバイターの解約にはずいぶん苦労した。安いからと契約したが、使わなくなってからも少しづつ料金を取られ続けてきた。メールアドレスが使えなくなるといったデメリットを避けようと契約を残してきたが、いよいよ不要だと考えて解約することに。ところが、会社は統廃合しており契約書にある名称でもなくなっており、電話番号も変わっていた。もはやどこと何を契約しているのかわからない状態だった。

無料のサービスも含めると、デジタルサービスにはこういうのが多すぎる。この解約が難しいというのは世界的な傾向で、あの世界的なエンターテインメント企業や世界を席巻するネット通販会社などもこうした問題で揉めた。実際に、一度でも何らかの関りを持ったサイトからいまでも多くのメール等が届いている。真面な企業はしっかりと配信停止の意向を示せるようになってはいるが、作業は面倒他ならない。

ネット上のサービスなどによくあるこの種の問題を“ダークパターン”などというが、コロナ禍でデジタル化が進み、これからますます大きな問題になるとみられている。

仕事上の都合で年老いた両親と離れて住む身としては、親にスマホを持ってもらいたいと思う。その半面で、“ダークパターン”に嵌るのは困る。かといって、誰からの電話でも着信拒否できない固定電話頼みだとオレオレ詐欺とかも心配だ。個人的にはデジタル化の進展で便利にはなったと思うが、より危険にさらされる人が増えている。



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