第23回
「どうしたいかで生きればいい」佐藤みよ子さん
ピーエムグローバル株式会社 木暮 知之
グローバルプロジェクトに特化した企業であるピーエムグローバルの代表を務める木暮知之を聞き手に、国内外で活躍するプロフェッショナルに体験談や仕事を円滑に進める秘訣をうかがう連載コラム「グローバル・コネクター」。今回のゲストは、ニューヨーク旅行をきっかけに現地に進学し、現在はニューヨークでスピリチュアル・カウンセラー/ヒーラーとして活動する佐藤みよ子さんです。
木暮 友人をニューヨークに尋ねたのが現地に住むきっかけになったそうですね。
佐藤 米国には全く興味がなく、旅行気分で遊びに来ただけでした。たっぷり観光を楽しんだところ、ふと「住んでみたい」と感じたのです。現地在住の日本人にも会う中で、自分にも何かできると思うようになりました。一度帰国して、学生ビザを取ってまた空港に降り立った時も現実とは信じられない、何か不思議な感覚だったのを覚えています。ニューヨークにはいろんな人種がいて、「こういうもの、こうあるべき」という考え方がない。空気が軽い感じがしたのが印象的でした。
木暮 日本でお仕事は?
佐藤 広告代理店で数年アシスタントをしていたくらいです。日本だと10年後や20年後といった未来の自分が想像できましたが、何か全く違う経験をしてみたいと思ったのです。
木暮 高校時代、将来が想像できるのが嫌で米国に留学しました。全て自分の責任だったのが身軽に感じました。実現してどうでした?
佐藤 忙しかったですね。学生の身分で労働には制限がある中、職種は選んでいられません。何でもやりました。授業のない夜はウエートレスもしました。未経験でしたが何とかできるものですね。
木暮 アルバイトにとってはチップも重要な収入源。
佐藤 接客態度が気に入らなくても渡さざるを得ない。ニューヨークでは最低限のチップは必須です。
木暮 学校卒業後に現地で就職。
佐藤 不動産関係の企業でグラフィックデザインの仕事をしました。本来はデザインオフィスで働きたかったのですが、労働許可の手続きをしてくれる会社でなければならず、選択肢は限られました。不動産への興味より、デザインができるということが決め手でした。会社には良くしていただき、就労ビザの更新などを経て6年ほど働きました。
木暮 デジタルアートの世界から転身。
佐藤 真面目に努力していたのですが、あまりハッピーではありませんでした。もっと幸せを感じたいという思いに駆られていた時期に、精神世界に触れるきっかけができ、会社員として働く傍ら、勉強しました。途中で労働許可の期限が切れたのですが、帰国は選ばず学生ビザを再取得しました。就労に制限がある中で、精神世界の方で本格的にやっていこうと決めました。
木暮 帰りたくなかった。
佐藤 日本の文化や美しさは大好きで、日本人であることに誇りも感じています。一方で、帰国しても「先が見える」ことに抵抗感があり、いずれ帰るにせよ、もう少しニューヨークにとどまろうと思いました。再度ビザを取得したのはダンススクールでした。芸術学部の大学院への進学も考えましたが、ダンスはもともと好きだったので、せっかくなので好きなことをやろうと思いました。ベリーダンスを始め、ダンスをしながらスピリチュアルについて学びました。
木暮 発想が素敵ですね。どう習得されましたか。
佐藤 精神世界を学ぶための文献などを読んで学び始めましたが、実は子どものころから、他人に見えない物が見えていたようです。当たり前と思っていた世界の見え方が周りと違っていることを成長するまで自覚できませんでした。家族以外には相談できないため、不眠に悩まされたりもしました。ところがニューヨークに来た時に、これまでとは違うエネルギーや活気を感じ、心地よく思えました。ニューヨークは大都会ですが、スピリチュアルなスポットだと思います。
木暮 手法は独学で?
佐藤 『奇跡のコース(ヘレン・シャックマン著・大内博訳)』を読んで、自分のコントロールというか、オンとオフが切り替えられるようになりました。今は快適です。偽善に聞こえるかもしれませんが、ヒーリングは困った人を助けるというより、自分も癒される、浄化される感覚です。みんなで一緒に幸せになっていくということです。
木暮 コンサルタントとして楽しいのは、相手の会社も自分たちも良くなる時です。
佐藤 人と人のふれあいが大事。癒やしてあげる、治してあげる、という構えではだんだん疲れてくるし、気持ちも乱れます。自分が軽やかになった(癒やされた)ときに「相手も大丈夫だな」と確認しています。
木暮 社会貢献もそうですね。自分が良くなっているという事が大切。
佐藤 人種もカルチャーも価値観も超えたところで、みんな幸せになりたいのは一緒です。宗教観の違いも表面的な事とも言えます。その人のもっと奥に触れたら壁はなくなります。
木暮 日本人が海外で長く暮らす上で、気付いたことは?
佐藤 日本の「当たり前」が全く通じないことが前提です。「日本だったらこうなのに」はストレスになるだけ。「自分の期待通りの反応が返ってこなくて当然」という感覚を持つことでしょうか。 当初は失敗もしました。日系の出版社で働いていた時、電話調査を任されたのですが、取材先の担当者までつないでもらえない日が続きました。打開策を考えているうちに、米国の女性は電話で低いトーンで話すことを思い出し、声の調子を意識的に下げてみました。すると途端に成果が出ました。日本流に電話口で高い声を使うのは、米国ではプロらしさが全く感じられないと捉えられていたのです。
木暮 実践した経験は貴重。
佐藤 いまだに分からないことがありますが、ニューヨークでサバイブしながらもっと楽しく生きていきたい。ニューヨークに戻ってくる機中で、こみ上げる緊張感があります。「私はこれを感じながら暮らしているのだ」と実感する瞬間です。
木暮 ニューヨークが「ホーム」になった?
佐藤 独特な感じです。日本人が海外で何をやっても、何年住んでもストレスはあると思います。特にニューヨークは何をするにも自由ですが、つらいときも放っておかれます。まともに受け止めると厳しいかもしれません。自分で助けを求めるすべを知っておくのも必要でしょうね。違いを楽しんだり、笑い飛ばしたりしながらやっていきたいです。日本で育つと「こうじゃなければいけない」と考えがちですが、どうありたいか、どうしたいか、で生きていれば良いのではないでしょうか。(おわり)
プロフィール
グローバルなビジネス環境で今まで以上に高品質なプロジェクトマネジメントを必要とされる全てのお客様のために、プロジェクトを推進し成功させるための環境づくりを総合的にサポートします。また、マネジメントのパートナーとして現場の視点と経営の視点を併せ持った課題の発見、およびその対策としての戦略策定をご提案します。
【サービスメニュー】
プロジェクトのマネジメント支援(PMO)
プロジェクトマネージャーのトレーニング
セミナー「グローバル・コネクター」の開催・運営
グローバル人材の育成
海外拠点の現地社員育成
インドニュースの配信・出版
ニュース配信サイトの運営
海外進出コンサルティング
Webサイト:ピーエムグローバル株式会社
「外国の方とのビジネスやコミュニケーションに悩まれたことはありませんか?
ギクシャクしたり、思ったほど相手との距離が縮まらなかったり。英語だけの問題ではないのでは?
『ガイバナ』では、英会話自体にフォーカスするのではなく、英語が苦手な方でも、一歩踏み出してコミュニケーションの場を明るくする、キラリと光るエッセンスをお届けします。エピソード後半に、覚えてほしいキラリフレーズをご紹介しています。
「ガイバナ」ポッドキャストはこちらから
ガイバナ@Line: @315pjfpo」
- 第77回 「みんなで決めたらやり遂げる」甲斐ラースさん
- 第76回 「ひとつずつクリアする」大渕愛子さん
- 第75回 「国内・海外の共通言語はコミュニケーション力」駒井愼二さん
- 第74回 「相手に合わせたロジックを」福田勝さん
- 第73回 「強みを生かす」亀井貴司さん
- 第72回 「現状に疑問を持つ」アミヤ・サディキさん
- 第71回 「任せたら自由にさせる」竹内新さん
- 第70回 「正しいあうんの呼吸を」村瀬俊朗さん
- 第69回 「ほかにない価値を」金城誠さん
- 第68回 「素早く対応する」柏田剛介さん
- 第67回 「ビジョンを伝える」中村勝裕さん
- 第66回 「歴史を学ぼう」磯部功治さん
- 第65回 「多少の自信と歯切れの良さと」島原智子さん
- 第64回 「情報を体系化する」鈴木隆太郎さん
- 第63回 「メッセージを明確に」岩本修さん
- 第62回 「上司もホウ・レン・ソウ」高橋裕幸さん
- 第61回 「自分を肯定する」前川裕奈さん
- 第60回 「状況を掘り下げて原因を探す」寺島周一さん
- 第59回 「信頼と共感の空気をつくる」蔭山幸司さん
- 第58回 「一緒に楽しむと続けられる」草木佳大さん
- 第57回 「7割の見込みを信じる」吉元大さん
- 第56回 「意見をありがたく聞く」室井麻希さん
- 第55回 「常に学び・成長できる環境に身を置く」門田進一郎さん
- 第54回 「目の前の人との関係を大事に」岡田昇さん
- 第53回 「意見を聞いてから主張を調整する」大橋譲さん
- 第52回 「頼れる存在に任せる」ケビン・クラフトさん
- 第51回 「要望の背景も話す」堀田卓哉さん
- 第50回 「素直に聞く度量を」山田剛さん
- 第49回 「奇妙な日本人を自覚する」村上淳也さん
- 第48回 「信頼にめりはりを」二階堂パサナさん
- 第47回 「俯瞰(ふかん)して眺める」エドワード・ヘイムスさん
- 第46回 「丁寧さが評価される」ブレケル・オスカルさん
- 第45回 「個と向き合う」吉野哲仁さん
- 第44回 「事実に焦点を当てる」中村敏也さん
- 第43回 「現場に顔を出す」深井芽里さん
- 第42回 「状況を楽しむ」飯沼ミチエさん
- 第41回 「人生を楽しむ“絶対的価値観”を」小川貴一郎さん
- 第40回 「少ない言葉でも伝わる」アレン・パーカーさん
- 第39回 「ポジティブは伝染する」川平慈英さん
- 第38回 「自分で考える人に」野田純さん
- 第37回 「常にフェアであれ」忍足謙朗さん
- 第36回 「相手の価値観を包み込む」神原咲子さん
- 第35回 「直接得る情報を大事に」ネルソン水嶋さん
- 第34回 「相手のルールを早く知る」杉窪章匡さん
- 第33回 「意見を受け入れて試してみる」鈴木皓矢さん /「ノーと言われてもあきらめない」林祥太郎さん
- 第32回 「技術を尖(とが)らせる」稲垣裕行さん
- 第31回 「自分でやってみる」佐々木英之さん/「やる気のエネルギーを信じる」白井良さん
- 第30回 「リフレッシュ方法を見つける」大野均さん
- 第29回 「英語はメールから始めよう」岡田陽二さん
- 第28回 「逃げずに向き合う」矢野浩一さん
- 第27回 「相手に合わせた伝え方を」松田励さん
- 第26回 「ゴールを共有する」多島洋如さん
- 第25回 「考え方は変えられる」小森谷朋子さん
- 第24回 「相手が話しやすいテーマで心をつかむ」増山健さん
- 第23回 「どうしたいかで生きればいい」佐藤みよ子さん
- 第22回 「伝わる話題を探す」石井陽介さん
- 第21回 「話をよく聞いて信頼してもらう」我謝京子さん
- 第20回 「ギブアンドテイクの視点で」北尾敬介さん
- 第19回 「組織はファミリー」中沢宏行さん
- 第18回 「1人のスーパーマンよりチームワーク」前澤正利さん
- 第17回 「多様なメンバーが強い組織を生む」竹田綾夏さん
- 第16回 「ビジョンを共有する」マックス市川さん
- 第15回 「同じ人間として対等に話す」浦川明典さん
- 第14回 「会話は敬語、メールは気配り」イムラン・スィディキさん
- 第13回 「思い込みを捨てる」羽田賀恵さん
- 第12回 「うじうじ考えてないでサッサやるだけよ」本多士郎さん
- 第11回 「批判だけでは前に進まない」チャンダー・メヘラさん
- 第10回 「実績を示せば耳を傾けてもらえる」朝野徹さん
- 第9回 「シナジーをいかに引き起こすか」髙谷晃さん
- 第8回 「交渉は役割分担と演出で」新谷誠さん
- 第7回 「相手のプライドを土足で汚さない」佐藤知一さん
- 第6回 「気持ちが入っていないと、いい仕事はできない」 森本容子さん
- 第5回 「知る、理解する、好きになる、の順で」原田幸之介さん
- 第4回 「人に会って信頼できるネットワークをつくる」齊藤整さん
- 第3回 「失敗はだれでもある、やり直せる」平野昌義さん
- 第2回 「『好き』が相手に伝われば何とかなる」林原誠さん
- 第1回 「アドレナリンが出ている時が大事」太田悠介さん