日本・ASEANだより

第18回

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による海外駐在員の一時帰国措置と個人所得税

朝日税理士法人  執筆

 

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大により、多くの日系企業が海外駐在員や帯同家族の一時帰国措置をとっています。海外駐在員は、一時帰国中(1年未満)も、継続して日本の非居住者として扱われ、原則として、国内源泉所得について日本の所得税の課税を受けることになります。

海外駐在員が支給を受ける給与については、所得税法上、国内勤務期間に係る金額は国内源泉所得として課税されます。具体的には、毎月支払われる給与総額のうち国内勤務期間に対応する部分の金額は、国外払い給与については確定申告、国内払い給与については源泉徴収の対象となり、いずれも20.42%の税率が適用されることになります。このように、支給対象期間がある給与については、給与の支払い場所がどこであるかではなく、勤務場所がどこであるかが大きなポイントです。したがって、海外赴任先の法人の仕事を日本で行っていれば、課税対象となる国内源泉所得が生じてしまいます。

ただし、海外赴任地が租税条約締結国(地域)である場合には、いわゆる短期滞在者免税のすべての要件に該当することを条件に、国外払い給与は、日本では免税となる可能性があります。一方、国内払い給与は、短期滞在者免税の要件には該当しないと考えられるため、結局、日本で課税を受けることになってしまいます。

今回のように新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大のためやむを得なく一時帰国した場合でも、日本の政府があらたに特別な措置を設けない限り、現行の所得税法上、海外駐在員の給与について課税関係が生じてしまうことがあるので留意が必要です。

また、一時帰国中の給与について日本において課税を受けた場合でも、同時に、海外赴任地国でも居住者として課税を受け、日本と海外赴任地国との間で二重課税が生ずることも想定されます。

二重課税排除のための外国税額控除は、通常、海外駐在員の居住地国で受けることになるので、海外赴任地国の税務もあわせて確認することをお勧めします。

以 上

この記事の提供元:朝日税理士法人グループ

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朝日税理士法人(東京)

 

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