第25回
【続報・インドネシア】景気刺激策のアップデート
朝日税理士法人 執筆
新型コロナウィルスの景気刺激策の1つとして各種税金の減免税制度が財務大臣令(No.44/PMK03/2020 ”PMK44”)として公布されたことはご案内の通りです
(詳細につきましては2020 年 5 月 6日付コラムをご参照ください)。
今般2020年7月16日付けで、財務大臣令(No.86/PMK03/2020”PMK86”)が新たに公布されましたのでお知らせいたします。
基本的な内容はPMK44を踏襲していますが、源泉徴収税の免除等について下記の点が変更となりました。
対象企業の範囲拡大
免除対象期間が3か月間延長され2020年12月まで
実施報告書の報告は月次報告が必要
以下ではPMK86の規定内容(PMK44を踏襲)および改正点を太字で記載しています。
なお税制の概要については2020 年 5 月 6日付コラムも合わせてご覧ください。
景気刺激対策のアップデート
1) PPH21(従業員給与にかかる源泉徴収税)の免除
特定の事業分野および輸入便宜を得ている会社(KITE)等に勤務する年間所得2億ルピア以下の従業員はPPH21が100%免除されます。
(注記:免除されたPP21は、その全額を従業員へ現金で支給することとされています。そのため、PPH21を会社負担(グロスアップ処理)している場合でも免除されたPPH21を従業員の給与に上乗せして支給することが必要となります)
【PPH21の免税対象企業】
PMK86では免税対象業種がさらに拡大されました。
(PMK44では1,062業種 → PMK86では1,189業種)
– 対象業種の確認はPMK86 の付表Lampiran Aにてご確認下さい。なお旧規定のPMK44にて免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。
【PPH21の免税対象期間】
2020年4月から12月までの9ヶ月間に延長されました。
(PMK44では2020年4月から9月までの6か月間)
– 免除は免除申請を行った月から有効です。
【PPH21の免税の恩典を受けるための手続他】
PPH21の免税申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインから申請します。
– 当該免除申請は2020年4月以降の申請月から2020年12月度まで可能
税務上の支店(Cabang)に勤務する従業員の免除申請は本店(Pusat)より申請が可能です。
– PPH21の免除に関する実施報告書の報告期限は実施した翌月20日まで。(PMK44では3ヶ月毎の報告でしたが、2020年7月度より毎月の報告が必要となります。)
2) PPH22(輸入等に関する前払法人税)の輸入時の不徴収
特定の事業分野および輸入便宜を受けている会社(KITE およびKITE IKM)のPPH22について、輸入時に徴収免除を受けることができます。
【PPH22の徴収免除対象企業】
PMK86では免税対象業種がさらに拡大しました。
(PMK44では431業種 → PMK86では721業種)
– 対象業種の確認はPMK86 の付表Lampiran Hにてご確認下さい。なお旧規定のPMK44にて免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。
【PPH22の徴収免税対象期間】
2020年4月から12月までの9ヶ月間に延長されました。
(PMK44では2020年4月から9月までの6か月間)
– 徴収免除は免除申請を行った月から有効です。
3) PPH25(法人税の予納)の減免
特定の事業分野および輸入便宜KITEを受けている会社に対してPPH25の要納税額の30%が減免されます。
【PPH25が減免対象になる企業】
PMK86では減免対象業種がさらに拡大しました。
(PMK44では846業種 → PMK86では1013業種)
– 対象業種の確認はPMK86 の付表Lampiran Mにてご確認下さい。なお旧規定のPMK44にて免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。
【PPH 25の減免対象期間】
2020年4月から12月までの9ヶ月間に延長されました。
(PMK44では2020年4月から9月までの6か月間)
– なお、減免は減免申請を行った月から有効です。
【PPH25の減免の恩典を受けるための手続】
PPH25の減免申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインから申請します。
– 当該減免申請は2020年4月以降の申請月から2020年12月度まで可能です。
PPH25の減免については事後にオンライン報告が必要です
– 報告期限は毎月翌月20日までです。
(PMK44では3ヶ月毎の報告でしたが、2020年7月度より毎月の報告が必要となります。)
4) VAT暫定還付手続きの迅速化
現行制度上VATの還付は、10億ルピアを上限として暫定還付申請が認められています。暫定還付を申請した場合には税務調査を経ず簡易的なチェックのみで暫定的に還付が可能となっていますが、特定の事業分野および輸入便宜を受けている会社(KITE およびKITE IKM)についてはVATの暫定還付額について50億ルピアを上限として受けることが可能です。
【VATの暫定還付の対象企業】
PMK86では暫定還付の対象業種がさらに拡大しました。
(PMK44では431業種 → PMK86では716業種)
– 対象業種の確認はPMK86 の付表Lampiran Pにてご確認下さい。なお旧規定のPMK44にて免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。
【VATの暫定還付対象期間】
– 当該申請は2020年4月度から2020年12月度のVAT申告を対象とし、その適用のための申請期限は2021年1月31日迄となりました。
(PMK44では2020年4月度から9月度迄が対象。)
5)特定中小企業の売上にかかるファイナルタックスの免除
前年度の売上高が48億ルピアを超えない企業等は、原則売上高に対して0.5%の法人税がファイナルタックス(PPH4-2)として課されていますが、特定の期間についてファイナルタックスの免除を受けることができます。
【対象企業】
– 従来から存続している会社で前年度の売上高が48億ルピアを超えない会社
– 2020年度に新規設立した会社
※但し、上記のうち事前にノーマルタックスの選択申請を行っていない会社に限られる。(政令No23/2018、財務大臣規則No99/PMK03/2018)
【対象期間】
2020年4月から12月までの9ヶ月間に延長されました。
(PMK44では2020年4月から9月までの6か月間)
– 徴収免除はファイナルタックスの免除を行った月から有効です。
【ファイナルタックスの免除の恩典を受けるための手続】
税務恩典を受けるためには、事前にSK(免税証明)を入手する必要があります。
– 当該申請はDJPオンラインwww.pajak.go.idより可能。
– 当該申請は申請月から2020年12月度まで有効。(PMK44では2020年9月度まで)
ファイナルタックスの免除に関しては事後にオンライン報告が必要です。
– 月次での報告が必要となり、報告期限は翌月20日まで。
上記の情報は執筆時点(2020年7月22日時点)の最新の情報に基づいて作成していますが、今後更新される可能性があります。また、実際の税務対応については個別にご相談ください。
以 上
この記事の提供元:朝日税理士法人グループ
執筆
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