日本・ASEANだより

第38回

【フィリピン】 租税条約適用申請手続の変更(RMO No.14-2021)

朝日税理士法人  執筆

 

フィリピン非居住者がフィリピン源泉所得を受け取る場合、当該所得はフィリピンで課税対象となり源泉徴収が行われます。源泉徴収される税額については租税条約の適用により、軽減・免除が可能となりますが、租税条約の適用にあたっては租税条約適用申請手続(Tax Treaty Relief Application:TTRA)が必要となります。こちらに関して、2021年3月31日付けのBIR通達(RMO No14-2021)において、TTRAの変更が発表されましたので、そのポイントについてお伝えいたします。

経緯

TTRAは以前からその手続の煩雑さが議論になっていましたが、2017年に公表されたBIR通達(RMO No.8-2017)において、フィリピン源泉所得のうち配当、利息、ロイヤリティにおける手続の簡素化が図られていました。フィリピン源泉所得には事業利益、配当、利息、ロイヤリティ、キャピタルゲイン、報酬等がありますが、RMO No.8-2017により、配当、利息、ロイヤリティについてはCORTTフォームという所定のフォームを提出すれば租税条約の軽減税率を適用できており、従来のTTRAと比べて大きく工数が削減されていました。

このため、今回のRMO No.14-2021が公表されるまで、配当、利息、ロイヤリティについては簡素化されたCORTTフォームによる手続、それ以外の所得については従来の通りのTTRAが必要ということで、フィリピン源泉所得の種類に応じて異なる手続が求められる形となっていました。

このような状況の中で今回公表されたRMO No.14-2021ですが、その目的は以下のように記載されており、納税者の負担軽減の期待をもたせるものとなっております。

「租税条約適用申請に関するすべての問題を一度に解決し、事業容易化法に準拠して納税者に効率的なサービスを適用すること」


「To settle at once all issues related to the availment of treaty benefits and to deliver efficient service to the taxpayers in compliance with the Ease of Doing Business Act, this Order」


しかしながら、実際に要求されるTTRAの必要書類や手続をみると、その内容はより複雑になっているように見受けられます。特にCORTTフォームによる簡素化された手続が認められていた配当、利息、ロイヤリティについてはその手続が変更となり、工程が増加することが予想されます。


TTRAの流れ

TTRAの必要書類や手続内容の詳細については本ページ末尾にあるリンクより直接RMO No.14-2021をご確認いただければと思いますが、TTRAの大まかな流れは以下のとおりとなります。

Step1:租税条約適用申請を行う非居住者は、フィリピン源泉所得が支払われる前にTTRAの必要書類を源泉徴収義務者へ提出する。

 Step2:源泉徴収義務者は、源泉税の納税後、各課税年度の終了後4ヶ月目の最終日までにTTRAの必要書類をBIR国際税務課(ITAD)へ提出する。

Step3: ITADはTTRAの必要書類提出から4ヶ月以内に租税条約適用の可否を判断し、否定する場合はBIR Ruling(個別裁定書)、適用を認める場合はCertificate(証明書)を発行する。


利息、配当、ロイヤリティの留意点

上記の通り配当、利息、ロイヤリティについては手続が煩雑になることが予想されますが、TTRAの必要書類が増えることに加え、租税条約の適用可否および手続期間が以下のように変更となります。特に租税条約の適用可否については、ITADが否定した場合、不足分の税金とペナルティの支払いを求められることとなるため、留意が必要となります。


(リンクRMO No.14-2021)


この記事の提供元:朝日税理士法人グループ

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