第62回
【PHILIPPINES】フィリピン中央銀行への投資登録について
朝日税理士法人 執筆
フィリピン法人への貸付や投資を実行する際には、将来の回収やイグジット(撤退)を円滑に行うために、事前にフィリピン中央銀行(BSP: Bangko Sentral ng Pilipinas)から中銀登録証書(BSRD:Bangko Sentral Registration Document)を取得することが重要です。
この記事では、非居住外国法人がフィリピン法人に貸付を行う場合や、フィリピン法人の株式を取得するケースを想定して説明します。
貸付の場合
フィリピン法人へ貸付を行う前に、ローン契約書を締結し、金額、期間、返済期日、返済方法、金利などの条件を文書化します。株式取得の場合
フィリピン法人を新たに設立する場合は定款を作成し、追加出資や増資の場合には株式引受契約書を作成し、株主と出資金額を明確にします。次に、上記に基づいてフィリピン法人が保有する銀行口座に送金を行います。送金を実行後、送金先の銀行支店から送金証明書(CIR: Certificate of Inward Remittance)を取得します。このCIRには、送金者、金額、取引日のフィリピンペソへの換算レート、受取人などの情報が記載されています。CIRの発行依頼時には、「BSP提出用CIR」と明確に伝える必要があります。
取引を示す文書や実際の送金を証明するCIR、送金者と受取人の双方の身分証明書などの添付資料と共に、BSPが指定する申請書を提出し、BSRDの発行申請を行います。BSPは内容を確認した後、PDF形式でBSRDを発行します。
以上がBSRD取得までの大まかな流れです。
では、なぜBSRDが必要なのでしょうか。
非居住外国法人にとって、BSRDは実際に貸付や投資を行ったことを証明する有力な書類となります。フィリピン法人にとっては、BSRDは投資元の正当性を証明するものです。そのため、借入金の返済、配当、資本償還時にフィリピン国内の銀行で外貨を購入し、最終的に国外へ送金することができます。貸付や投資を行う際には、当事者間による契約書の締結やフィリピン証券取引委員会(SEC: Securities and Exchange Commission)関連の手続き(追加出資や増資の場合)、またフィリピン国税局(BIR: Bureau of Internal Revenue)への印紙税の納付は適切に行われるものの、上記のBSPの手続きが抜けてしまうケースが散見されます。このような場合、国外に送金が実行できないという問題が後になってから発生しますので、これまでの取引に対応するBSRDを取得しているか、改めてご確認ください。
執筆時点(2023年7月)では、BSPは過去の取引に関するBSRDの申請を受け付けています。
この記事の提供元:朝日税理士法人グループ
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