日本・ASEANだより

第20回

【規則改定・インドネシア】景気刺激策第二弾の税務上の取り扱いについて

朝日税理士法人  執筆

 

新型コロナウィルスの景気刺激策として財務大臣令(No.23/PMK03/2020 “PMK23”)が公表されたことは弊社から2020 年 4月 2日付けのコラムにてお知らせの通りです。

今回、財務大臣令(No.44/PMK03/2020”PMK44”)が新たに公表されPMK23は無効となりました。しかしながら基本的な内容はPMK23を踏襲しています。


PMK44で変更になった点は以下の通りです。

源泉徴収税の免除等の対象企業の拡大 

特定中小企業の売上にかかるファイナルタックス免除の追加


 以下ではPMK23から踏襲されている内容をベースにPMK44で追加となった箇所を太字で記載しています。

 なお下記情報は執筆時点(2020年5月5日時点)の最新の情報に基づいて作成していますが、今後更新される可能性があります。

また、実際の税務対応については個別にご相談ください。

景気刺激対策第二弾について

1) PPH21(従業員給与にかかる源泉徴収税)の免除

一部の製造業者および輸入便宜を得ている会社(KITE)等で年間所得2億ルピア以下の従業員を対象に2020年4月から9月までの6ヶ月間のPPH21について100%免除とされました。

(注記:本財務大臣令においてPPH21の免除対象は月給(固定給)とされておりますのでTHR(レバラン手当)などのボーナスは含まれないことが明示されていますので、ご留意ください。

【PPH21の免税対象企業】

(a) PMK23 Lampiran Aに明示されているDGTの事業区分コード(KLU)企業、または輸入便宜KITEを得ている会社。なおKLUは各社の税務番号登録証(SKT)に記載されています。

→PMK44では免税対象業種が大幅に拡大しました

対象業種はPMK44 の付表Lampiran A、輸入便宜KITEを得ている会社および保税工場(PDKB)とされています。(PMK23では440業種 → PMK44では1,062業種)

なおPMK23で免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。

(b) 免税対象になる従業員がNPWP(納税番号)を有していること。

(c) 月給(固定給)を年度換算した年間給与額が2億ルピアを超えないこと。

(注記:免除されたPP21は、その全額を従業員へ現金で支給することとされています。そのため、PPH21を会社負担(グロスアップ処理)している場合でも免除されたPPH21を従業員の給与に上乗せして支給することが必要となります)

【PPH21の免税の恩典を受けるための手続】


★PPH21の免税申請フォームへ必要事項を記載し所轄税務署宛てに申請を行う★

● 当該申請は2020年4月以降の申請月から2020年9月度まで有効。

→ 以下全ての申請は原則租税総局www.pajak.go.idのオンラインからアクセスし申請することになります。

なお、2020年4月度の免税適用は2020年5月20日までに申請が必要です (SE-29/PJ/2020)

● 申請フォームはPMK44フォームC参照 。

● 申請内容は税務当局にて審査され、要件を満たさない申請については否認の旨の通知書(PMK44フォームD)が発行される。

● PPH21の具体的な免除対象者や不徴収給与額の報告はPMK44フォームEにてオンラインで実施

● 上記報告フォームには”PPh PASAL 21 DITANGGUNG PEMERINTAH EKS PMK NOMOR XXX*/PMK.03/2020” と記載した SSP(納税確証)またはTax ID Billingを添付する。

  (* 注記: 23ないしは44を入れると思われるが規則には記載がない)

● 報告期限は2020年4月度から6月度分までは2020年7月20日迄、2020年7月度から9月度分までは2020年10月20日迄。

→ PMK44では3ヶ月毎の報告ではなく、月次での報告が必要で、報告期限は毎月翌月20日までとなりました。

2) PPH22(輸入等に関する前払法人税)の輸入時の不徴収

特定の事業分野および輸入便宜を受けている会社(KITE およびKITE IKM)のPPH22について、2020年4月から9月の6ヶ月間は輸入時に徴収免除とするとされています。

(注記: PPH22は輸入時に発生する年度の法人税の前払い税です。そのため輸入時にPPH22が徴収免除となっても、結果的に会社の年次法人税が発生する場合にはその段階で法人税が発生することにご留意下さい)

【PPH22の徴収免除対象企業】

★PMK23 Lampiran Fに明示されているDGTの事業区分コード(KLU)企業、または輸入便宜KITEを得ている会社。★

→ 免税対象企業が拡大され、PMK44 Lampiran I に明示されている企業、または輸入便宜KITEを得ている会社および保税工場(PDKB)とされています。

※ PMK23の対象 102業種 → PMK44 の対象431業種

なおPMK23で免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。

【PPH22の徴収免除対象の恩典を受けるための手続】

★PPH22の徴収免除証明の申請書に必要事項を記載し所轄税務署宛てに申請を行う★

● 当該申請は申請日から2020年9月度まで有効。

● 申請はPMK44フォームJを使用。

● 申請内容は税務当局にて審査され、要件を満たす場合はPPH22の徴収免除証明(PMK44フォームK)が発行される。なお要件を満たさない場合には否認の旨の通知書(PMK44フォームL)が発行される。


★PPH22の具体的な輸入時徴収免除対象についてはオンラインで報告 ★

● 報告期限は2020年4月度から6月度分までは2020年7月20日迄、2020年7月度から9月度分までは2020年10月20日迄。

● 徴収免除にした輸入実績報告についてはPMK44フォームMにて実施


3) PPH25(法人税の予納)の減免

2020年4月から9月の6ヶ月間、特定の事業分野および輸入便宜KITEを受けている会社に対してPPH25の要納税額の30%が減免されます。

(作成者注記: PPH25は年度の法人税の予納です。PPH25の源泉税が30%減免となった場合でも、結果的に会社の年次法人税との比較で要納税額が不足する場合はその段階で納税が必要となることにご留意ください)

【PPH25の減免対象の対象企業】

● PMK23 Lampiran Bに明示されているDGTの事業区分コード(KLU)企業、または輸入便宜KITEを得ている会社。

● 免税対象企業が拡大され、PMK44 Lampiran N に明示されている企業、または輸入便宜KITEを得ている会社および保税工場(PDKB)とされています。

● PMK23の対象 102業種 → PMK44の対象 846業種

● なおPMK23で免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。 

【PPH25の減免の恩典を受けるための手続】

★PPH25の免税申請フォームに必要事項を記載し所轄税務署宛てに申請を行う。★

● 当該申請は申請月から2020年9月度まで有効。

→ 2020年4月度の減免適用は2020年5月15日までに申請が必要です。(SE-29/PJ/2020)

● 申請フォームはPMK44フォームC参照(PPH21の免税申請フォームと同一)。

● 申請内容は税務当局にて審査され要件を満たさない申請については否認の旨の通知書(PMK44フォームD)が発行される。


★PPH25の具体的な減免内容について、オンライン報告 ★

● 報告フォームはPMK44 フォームP

● 報告期限は2020年4月度から6月度分までは2020年7月20日迄、2020年7月度から9月度分までは2020年10月20日迄。


4) VAT暫定還付手続きの迅速化

 現行制度上VATの還付は、10億ルピアを上限として暫定還付申請が認められています。暫定還付を申請した場合には税務調査を経ず簡易的なチェックのみで暫定的に還付が可能となっています。

 2020年4月から9月までの6ヶ月間については、輸入便宜を受けている会社(KITE およびKITE IKM)はVATの暫定還付申請が可能となりました。また、それ以外の会社については還付額が50億ルピアを上限として申請が可能となりました。

【VATの暫定還付対象の対象企業】

● PMK23 Lampiran Fに明示されているDGTの事業区分コード(KLU)企業および輸入便宜KITEを得ている会社で還付額が50億ルピアを上限とした暫定還付が可能。

● 免税対象企業が拡大され、PMK44 Lampiran I に明示されている企業、または輸入便宜KITEを得ている会社および保税工場(PDKB)とされています。

● PMK23の対象 102業種 → PMK44の対象431業種

● なおPMK23で免除申請が完了している場合、再度の申請は不要です。


- 当該申請は2020年4月度から2020年9月度のVAT申告を対象とし、その適用のための申請期限は2020年10月31日迄。

 ★PMK44にて新設
5)特定中小企業の売上にかかるファイナルタックスの免除

 前年度の売上高が48億ルピアを超えない企業は、原則売上高に対して0.5%の法人税がファイナルタックス(PPH4-2)として課されていますが、2020年4月から9月の6ヶ月間はファイナルタックスが免除されます。

【特定中小企業の売上にかかるファイナルタックスの対象企業】

● 従来から存続している会社で前年度の売上高が48億ルピアを超えない会社

● 2020年度に新規設立した会社

但し、上記のうち事前にノーマルタックスの選択申請を行っていない会社に限られる。

(政令No23/2018、財務大臣規則No99/PMK03/2018)

【特定中小企業の売上にかかるファイナルタックスの免除の恩典を受けるための手続】

★税務恩典を受けるためには、事前にSK(免税証明、PMK44フォーム G)を入手する。★

● 当該申請はDJPオンラインwww.pajak.go.idより可能。(申請の詳細はSP-19/2020参照)

● 当該申請は申請月から2020年9月度まで有効。

なお2020年4月度に免税を受けたい場合には、遅くとも2020年5月20日までに申請が必要とされました。(SE-29/PJ/2020)

(作成者注記:SKを取得した企業は、別の課税(例えば国内サービスに対する源泉税(PPH23))についても源泉徴収が免除されます。(政令No23/2018、財務大臣規則No99/PMK03/2018)


★特定中小企業の売上にかかるファイナルタックス等の免除に関する報告についてはDJPオンラインwww.pajak.go.id (PMK44フォームH)にて報告 ★

● 報告に際しては、”PPh FINAL DITANGGUNG PEMERINTAH EKS PMK NOMOR … /PMK.03/2020″と記載した SSP(納税確証)またはTax ID Billingを添付する。

● 月次での報告が必要となり、報告期限は翌月20日まで。


 以 上


この記事の提供元:朝日税理士法人グループ

執筆

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