日本・ASEANだより

第53回

非居住者への支払に関する源泉徴収と非居住者であることの確認義務

朝日税理士法人  執筆

 

日本の所得税法上、非居住者への報酬料金等の支払については,それが特定の国内源泉所得に該当すると認められる場合には,支払者は、その支払いの際、その国内源泉所得に一定の割合を乗じた計算した金額を源泉徴収して国に納付しなければなりません。なお、支払者がこの源泉徴収義務を怠った場合には、その支払者に対して不納付加算税や延滞税が課されることになります。


ここで重要なのは、支払者は、原則として,自己の源泉徴収義務について判断しなければならないということです。


実務的には、支払者にとって、その支払先が外国法人又は非居住者に該当するのか判断が困難なケースが少なくありません。支払先が法人の場合は比較的容易に判断できますが、個人の場合は特に問題です。


支払先が個人の場合、その個人の「生活の本拠」がどこにあるのかが非居住者の判定において重要な要素となります。税法上、「生活の本拠」については、その者の職業,国籍,生計を一にする配偶者その他の親族の所在、その者の資産の所在地等に基づき総合的な判断が必要です。契約書に記載された住所や住民票などの公的書類のみで居住者・非居住者の判断をすると非常に危険です。支払者は税務当局のように調査権限がないため、支払先の個人情報を正確に把握できないといえます。しかしながら、現行の源泉徴収制度のもとでは、支払者は、その支払先に対して、居住者・非居住者の判定のために必要な情報提供を求める義務はあるものと解されています。


なお、国内法である所得税法の規定に基づき源泉徴収が必要とされる場合であっても,租税条約を適用することにより,その源泉徴収税率が軽減又は免除されることがあります。租税条約による減免の適用を受ける場合には、報酬料金等の支払先が、その支払者を通じて支払者の所轄税務署に「租税条約に関する届出書」その他一定の書類の提出をしなければなりません。ただし、租税条約の適用を受けることができるのは、日本の非居住者であり、かつ、租税条約の相手国の居住者である場合に限られるため、支払者は、支払先が租税条約の適用を受ける際に、その支払先に対して居住者証明書などの書類の提示を求める必要があります。


以 上


この記事の提供元:朝日税理士法人グループ


執筆

朝日税理士法人(東京)

 

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