知恵の経営

第22回

「偉大な教師」に上司を育成

アタックスグループ 2015年6月3日
 

 この4月に採用された新入社員は会社になじんだだろうか。採用した人材をいち早く戦力化する教育システムを持つ企業や、優秀な人材が流出しない社風を持つ企業が存続可能で、今後成長するといっても過言ではない。社員がやる気を持続し、意欲的に働くか否かは配属先の上司によるところが大きい。新人育成のヒントを提案したい。

 1つ目は教育分野の「ピグマリオン効果」。1964年に米国の教育心理学者、ロバート・ローゼンタールが提唱した期待と成果に関する効果のこと。実験を通し「人間は常に相手の期待に対して最も敏感に反応する」と主張した。優秀でも何でもない小学生の名簿を教師に渡し「テスト結果から、名簿の生徒たちは数カ月間に成績が向上する可能性が高い」と説明した。計測の結果、名簿上の「偽の成績向上見込み者」が他の生徒と比較して明らかに成績が向上した。期待をかけた教師側が気付かないうちに辛抱強く教えたり、ヒントを与えたりしたことなどが大きいとされる。

 受け入れ側の先輩社員は、人事が頑張って採用した優秀な新人であり、育てがいがあるというポジティブな期待を込めて指導する姿勢を持ってほしい。

 2つ目は米国の教育学者、ウィリアム・ウォードの「凡庸な教師は話をする。良い教師は説明をする。優れた教師は範を示す。偉大な教師は内なる心に火をつける」という言葉。最低でも「良い教師」として、必要となる知識を正しく教えなければならない。経験を積ませる過程では「優れた教師」となり、範を示す職場内訓練(OJT)による教育を実践してほしい。「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かず」という山本五十六の言葉を思い出してほしい。

 最終的に先輩社員が「偉大な教師」となって新人のやる気にスイッチが入り、早く先輩のようにバリバリ仕事がしたいと思うようになれば申し分がない。先輩社員は、仕事の目的と意義、社会への貢献、自らの会社人生での夢を語ることだ。

 3つ目は経営学者のピーター・ドラッカーが語ったエグゼクティブ(経営管理者)が人事考課で考慮する4つのポイント。「彼がよくやった仕事は何か」「彼が今度よくできそうな仕事は何か」「彼が強みを存分に生かすには、今後は何を知り、何を身に付けなければならないか」「自分に息子か娘がいると仮定した場合、彼の部下として働かせてもよいか」である。最後の評価ポイントは自分の子供の将来を託せる人材が上司として職場にいなければならない、という意味で、こうした上司を育成し、現場に配置するのは経営者の仕事である。

 現在は少子化になり、人材の採用・育成・定着を競争する時代だ。新人を意欲的に育てる上司を養成するのが経営者の仕事。経営者はその仕組みづくり、環境整備とコミュニケーションを欠いてはならない。筆者の長年のコンサルタント経験から、「優れた経営者、偉大な経営者は優れた教師、偉大な教師である」と実感している。

<執筆>

アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭

2015年6月3日「フジサンケイビジネスアイ」掲載


 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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