知恵の経営

第89回

「出るくぎは伸ばす」

アタックスグループ 2016年10月19日
 
 人を大切にする経営学会の第3回全国大会(8月26、27日)の前日、模範企業を視察した。今回は筆者も同行した武蔵境自動車教習所(東京都武蔵野市)を紹介する。東京指定自動車教習所協会によると都下のJR中央線・西武新宿線沿線で年間利用者数が18年連続ナンバーワンと評価が高く、利用者数は近隣3校の教習所の合計を上回る。

 教習所は、18歳人口の激減と若者の車離れの拡大で利用者が激減、今後、自動運転車の普及次第では存在すら危ぶまれる構造的不況業種といわれる。しかし、同社の顧客からの支持率は極めて高く、全国入学者ランキングは過去10年以上、常にベスト3に入る。驚かされるのは年間の入学者約7000人のうち、60%が卒業生からの口コミによる紹介客であることだ。

 当初、顧客満足度は高くなかった。高橋勇会長が社長に就いて数年間は、労働争議に明け暮れ労務倒産の可能性すらあった。しかし、トップが誰よりも一生懸命仕事に取り組み、経営のガラス張り化をはじめ、社員側に立った経営を実践し、全社員の信頼を勝ち取った。

 こうした姿勢は高橋明希社長にも引き継がれ、「社員良し、顧客良し、地域良し」の三方良しの経営を貫く。教育業ではなくサービス産業であるべきだと考え、トータル・カーライフ・サポートが使命と新車・中古車販売、レンタカー、卒業生への無料車両貸し出しサービス、企業向けの安全運転講習会、高齢者向け講習会などさまざま事業も行う。所内では「サカイパラダイス」という教習生限定サービスや無料託児室を設け、英語教室や手話教室と快適に楽しく教習所に通える。
 こうしたことが自然にできるのも、社員の採用と育成に多くの時間とコストを投下し、人柄の良い、感性の高い社員が多数育ったからだ。「出るくぎは伸ばす」と個性を伸ばし、仕事を任された社員が喜びを感じ、アイデアを出し合って顧客サービスを形にする好循環がある。10年以上前から希望者は全員正社員として採用している。一部の正社員と過半数の契約社員で運営するのが一般的な業界にあって、正社員の多さは極めて異例だ。

 高橋社長は「社員を守れば、社員は会社を守ってくれる。会社で働くことが最大の満足となり、その思いをお客さま・地域社会に自然と向ける。当然、評価は高まる」と熱く語った。
<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2016年10月19日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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