知恵の経営

第96回

地域を救う新商品開発

アタックスグループ 2016年12月14日
 
 今回は段ボール類をはじめ紙器加工品、包装資材や有田焼万華鏡の製造販売を行う「有限会社佐賀ダンボール商会」(佐賀県有田町)を取り上げる。先日、石川慶蔵社長を取材し、同社の有田焼万華鏡ショールームを視察した。

 1957年の創業以来、有田焼を入れる段ボール箱を中心に製造販売してきた。しかし安価な輸入食器の増加やライフスタイルの変化などで、有田焼の売上高は90年の158億円のピーク時から7分の1となっている。有田焼が低迷すれば、段ボールの需要も減り続ける。会社存続の危機に直面する中、石川社長は2004年当時、社員22人を雇用し続けるための新商品開発の道を探った。

 まず、有田焼の需要回復を考えた。有田町は150の窯元があり、町民約2万1000人の6割が何らかの形で陶磁器にかかわっている。有田焼の不振は窯業界にとどまらず、町全体の将来を左右する重大な問題だったからだ。

 そこで思いついたのが、有田焼の万華鏡だ。なぜ万華鏡なのか-。それは大病を患った石川社長が入院先の病室に持ち込んだ万華鏡を通して、周囲の患者が元気になる姿を見たからだ。

 石川社長は万華鏡を「子供のおもちゃ」程度にしかみていなかった。しかし、病院での体験を通じて万華鏡には、人の気持ちを安らかにする力があるのではないかと、その可能性を見つめ直し、製作を試みた。

 有田焼の万華鏡作りには、技術や需要などクリアすべき課題は山積だった。それを一つ一つ解決しながら、ようやく2004年に円筒部に有田焼を用いた「有田焼万華鏡」が完成。1年間で約3500本、1億3000万円を売り上げる人気商品となった。

 さらに「有田焼万年筆」も国内外で約1800本を販売。評判を呼び、08年の北海道洞爺湖サミットでは、参加国首脳への贈呈品にも採用された。

 石川社長の「陶磁器産地有田の町を元気にしたい」「有田焼を通して世界中の人に喜んで頂きたい」という思いがかなうと同時に、社員を誰一人リストラすることなく、難局を乗り越えた瞬間だった。

 石川社長は「成功に導くことができたのは、自分に3つのモノがなかったから」という。1つは焼き物の常識がなく、有田焼の万華鏡という非常識な発想ができたこと。2つ目は、全く資金がなく、早い段階であきらめられなかったこと。そして3つ目は、地元の有田の町が不況にあえいで元気がなく、何とかしたいという強い思いがあったからこそ、がんばれた。

 新商品開発に必要不可欠な条件がそろわなかったからこそ、不可能と思われた難題を乗り越えられた、貴重な事例だ。
<執筆>
アタックス研究員・坂本洋介
2016年12月14日フジサンケイビジネスアイ掲載

 
 

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アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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