知恵の経営

第91回

障害者雇用で生産性向上

アタックスグループ 2016年11月2日
 
 栃木県真岡市に「有限会社真京精機」という中小企業がある。主事業はアルミ材の自動車部品や冷却部品の精密加工で、社員数約40人の規模だ。驚くべきは15人が障害のある社員、うち4人は重度障害者である。障害者雇用率は、重度障害者を雇用している場合にはダブルカウントをするため、同社の雇用率はなんと47.5%になる。

 現在わが国の常用雇用50人以上企業に課せられた「障害者法定雇用率」は、2.0%であるのに対し、現実は1.9%にすぎないことを考えると、法的義務のない社員数40人の会社が47.5%というのは傾注に値する。

 同社が障害者雇用を始めたきっかけは、約40年前に前社長が創業した際、知人から採用を依頼された人が、たまたま障害者だったからだ。その後も、依頼されるたび2人、3人、4人と増加していくが、現在のような多数雇用企業になったのは2000年前後である。

 多数雇用をしたのは当時、メインの取引先が、同社に発注していた自動車部品生産を海外に移管してしまったため、仕事量が半分に減少してしまったときである。武田浩之社長(当時専務)は、約50人在籍していた全社員一人一人と雇用の継続などについて相談すると、多くの健常者の社員は「自分たちは他社でも働けるから、他社では働くことが難しい女性や高齢者、そして障害のある社員を継続雇用してあげてください…。自分たちは、再び景気が良くなったら戻ってきますから…」と言ったそうだ。

 武田氏は、その言葉に甘え、残った社員である女性・高齢者・障害者の生産性向上なくして会社の未来はないと思い、そのためには、会社の都合や機械の都合ではなく、これら社員一人一人の都合に合わせ、会社の経営はもとより、仕事の工夫や機械設備の改善・改良をしていったのである。
 先日、同社を訪問し、工場の隅から隅まで案内してもらったが、正直驚いた。というのは、高度な加工ができる工作機械、マシニングセンターをはじめとする数値制御(NC)機械によって、アルミ材の精密部品の機械加工を行っていたのは、大半が障害のある社員だったからである。

 それら機械をよく見ると、障害のある社員が作業をしやすいように、改善・改良が加えられ、しかも万が一の場合でも、大けがをさせないため、独特の安全装置も施されていた。さらに驚かされたのは、これら機械設備の大半は、同社に勤める健常者の社員が、仲間である障害のある社員が作業しやすいように知恵を凝らし改善・改良をするとともに、一人一人に手とり足とりのOJT(職場内訓練)を行い、育てていたのである。

 同社の現実を直視すると、障害者雇用に熱心に取り組まない企業が雇用しない理由は誤解・錯覚・甘えと思えてならない。
<執筆>
法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司
2016年11月2日フジサンケイビジネスアイ掲載


 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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