知恵の経営

第84回

経営は働く人のためにある

アタックスグループ 2016年9月7日
 
 ロータリークラブ(RC)会長だった筆者は4月、仲間とともに「人を大切にする日本的経営」の模範である伊那食品工業(長野県伊那市)を訪れた。「経営は働く人々の幸せのためにある」という哲学を塚越寛会長からじかに聞くためだ。5月25日付の本コラムで取り上げたが、紹介できなかった大事なことを伝えたい。

 塚越会長に「人を大切にする経営を心掛けたきっかけは」とたずねると「苦しい時代に出光佐三の書いた『働く人の資本主義』を読んで感銘を受け、佐三のような理念を持ち経営したいと思った」と答えた。

 「働く人の資本主義」は1969年発刊。当時出光興産会長だった佐三に数人の学者、ジャーナリストが質疑応答を行い、まとめた。佐三は次のように語っている。

 「今日の世界全体を考える時に、いちばん問題になるのは対立闘争で行き詰まっているということです。(中略)どうしたら解決がつくかということですが、これはすこぶる簡単明瞭なんです。お互いに助けあう、仲良くするということでいいんじゃないかと私は思う。(中略)。みなの『仲よくする力』以外にないということでこの『仲よくする力』の偉大さを改めて自覚したわけです」
 佐三の経営哲学は大家族主義だ。太平洋戦争が終わったとき1000人の社員が外地から引き揚げてきた。「いい者だけを残して、あとは首を切って再建をはかろう」という案を重役室で作って佐三に説明すると「何を言うか。平素、家族主義を唱えておって実際の場合に見捨てるということがあるか。おれは美術品を持っているから、それを売っても、しばらくの間は社員の生活はなんとかできる。そして最後に乞食(こじき)するなら一緒に乞食しよう」と怒った。社員全員が農業・漁業やラジオの修理販売、旧陸海軍の燃料タンクの残油をバケツでくみ出す仕事までした。ベストセラーとなった小説「海賊と呼ばれた男」(百田尚樹著)は佐三がモデルで、苦しい時代をいかに乗り切ったかをリアルに描いている。

 繰り返すが、佐三が主張したのは事業経営の原動力は「社員が『お互いのために』働く『仲よくする力』であり、組織の上に立つ者ほど無私の精神で全体のために働く」ことではなかったか。塚越会長は「忘己利他」を板書されたが、経営者が心すべき言葉ではないか。

 少子高齢化で採用活動がますます厳しくなる中で、入社してくれた社員に戦力となってもらうことは経営上極めて重要であり、「仲良くする力」がキーワードになるのではないか。

 心ある経営者に「働く人の資本主義」の一読を薦めたい。12月には映画「海賊と呼ばれた男」も公開される。
<執筆>
アタックスグループ主席コンサルタント・丸山弘昭
2016年9月7日フジサンケイビジネスアイ掲載



 
 

プロフィール

アタックスグループ

顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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